ヘッジファンドの不透明さ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/13 01:52 UTC 版)
「ヘッジファンド」の記事における「ヘッジファンドの不透明さ」の解説
ファンド・マネージャーが規制を受ける一方、一般的なヘッジファンドの構造は直接な規制を免れるよう仕組まれており、一般投資家以上に投資活動を開示する必要はない。これは規制を受けて開示をする必要のあるミューチュアル・ファンドや上場投資信託と違う。ヘッジファンドに投資している投資家は小口投資ファンドの投資家と違い、ファンド・マネージャーに直接連絡でき、具体的な報告を受けることができる。しかし、投資家以外が同程度の報告を受けることは不可能であり、これがヘッジファンドは秘密的という評判に繋がっている。なお、ヘッジファンドの一部は投資家に対してすら不透明になっている。 ヘッジファンドは投資を募集するために情報を公開することがある。しかし、情報を統合したデータベースでの情報は自己申告に基づくものであり、検算されていない。ヘッジファンドのデータを記録している主要な2データベースを調査、比較した結果、どちらにも含まれているヘッジファンド465社の申告内容(利益、開始日、純資産価額、運用手数料、運用報酬、投資戦略など)が両データベースの間で違い、特に465社のうち5パーセントは利益と純資産価額が両データベースの間で大きく違う。このように公開されているデータが限定的なので、投資家は自分で調査しなければならず、小さいヘッジファンドに対する調査コストは5万米ドルに上る可能性がある。 投資家や独立監査人による検証が行われていないため、結果的に詐欺行為を助長してしまうこともあった。2000年代、インターナショナル・マネージメント・アソシエイツ社(International Management Associates)のカーク・ライト(Kirk Wright)はメール詐欺などの不正を疑われ、1億8千万米ドル近く騙し取ったとされた。2008年12月、バーナード・L・マドフが500億米ドル規模のポンジ・スキームを行ったとして逮捕された。マドフのスキームはヘッジファンドと似ているが違うものであり、これを混同して記述されたものもあった。いくつかのフィーダー・ファンド(英語版)はマドフに騙されて「投資」していたが、中でも最大なのがフェアフィールド・グリニッジ・グループ(英語版)の運営するフェアフィールド・セントリー・ファンド(Fairfield Sentry Fund)であった。マドフの詐欺が発覚すると、米国証券取引委員会は2009年12月に改革を実施し、登録投資顧問(英語版)が運営するヘッジファンドは資産をカストディアンの管理下に置かなければならず、監査を受けなければならないことを規定した。 ヘッジファンドと投資家のマッチングは伝統的に不透明であり、投資が個人的な関係やポートフォリオ・マネージャーによる推薦に基づくことが多い。ヘッジファンドの多くは所持証券、投資戦略、過去の業績とマーケット指数との比較を開示し、投資家にヘッジファンドの投資についてある程度情報を提供しているが、所持証券の詳細は開始されないことが多い。投資家はヘッジファンドの利益率の高さにつれられて投資するか、市場のボラティリティをヘッジするためにヘッジファンドに投資することが多い。一方、ヘッジファンドの複雑さと手数料の高さにより一部の投資家はヘッジファンド投資から撤退している。例えば、アメリカ最大の年金基金であるカリフォルニア州職員退職年金基金は2014年にヘッジファンド投資からの撤退計画を発表した。またヘッジファンドと投資家のマッチングを改善する動きもあり、例えばHedgeZ社はヘッジファンドを検索とソートできるシステムを提供しており、iMatchative社は投資家の目標と行動プロファイルに基づくアルゴリズムでマッチングを行い、ヘッジファンドと投資家の両方にそれぞれの見方と目標が投資にどう影響するかわからせようとしている。
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