フィクションにおける老人語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 00:08 UTC 版)
「老人語」の記事における「フィクションにおける老人語」の解説
漫画やアニメ、SF小説等の作品内では、高齢であることがストーリー上、重要な意味を持つ登場人物の言葉づかいに、一人称「わし」や語尾「じゃ」、打消し「ぬ(ん)」といった特定の言い回しが、しばしば用いられる。金水敏によれば、このような「老人語」は、江戸時代の上方語が起源で、18世紀後半以降、セリフの約束事として、老人や知識人を表現するための役割語として芝居や戯作等の世界で使われだし、それが明治時代以降、小説や漫画などにも広まり、定着したものである。 江戸時代初期、江戸の町では各地の方言が混在して使われていたが、その中で上方の言葉は相対的に威信を持っていた。江戸時代中頃より、東国的な表現を基本とする江戸語が新しい共通語として形成されていったが、若年層がこれを自分達のことばとしたのに対し、高齢者層、特に知識人層には、依然として上方風の保守的な言葉を使う人々が多かった。このような高齢者の話し方は、歌舞伎や戯作、落語、講談等の中で誇張して描かれ、「老人語」として定着していった。その伝統は近代以降、少年雑誌や漫画に受け継がれ、特に『少年倶楽部』や手塚治虫の強い影響によって、高齢の博士等の台詞に老人語が多用されるようになった。このような役割語は文化的ステレオタイプの一つであり、役割語における老人語は、物語の中で主人公を導く助言者、主人公を苦しめる悪玉(影)、高齢であることに起因する行動によって人物間の関係を調整する役(トリックスター)の3類型の登場人物に特に顕著に認められる。 時代劇などでは、このような話し方を、高齢でなくとも大名や代官などの貴人、学者、医師、僧侶、あるいは欲深な富裕層などが用いることが少なくないが、これも昔の知識人の言葉遣いというイメージと関係すると思われる。明治時代になってから、「維新の元勲」や政治家、軍人に西日本出身者が多かったこと(薩長土肥)も影響しているとされる[要出典]。
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