ビデオ・ディスプレイのべき乗
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 18:41 UTC 版)
「ガンマ補正」の記事における「ビデオ・ディスプレイのべき乗」の解説
「ガンマ特性」は、テレビシステムで符号化されたルーマ(輝度)と、実際に所望の画像の明るさとの関係を近似する、べき乗則の関係である。 この非線形の関係では、符号化された輝度の等間隔のステップは、主観的に等しい明るさのステップにほぼ対応している。エブナーとフェアチャイルドは、指数として0.43を使用して線形の光強度を、ニュートラルな明るさ(ルーマ)へと変換し、その逆数(約2.33、一般的なディスプレイ・システムで使用されている値2.2に非常に近い)がグレーのほぼ最適な近く符号化を提供することがわかった。 以下の図は、線形に増加する符号化された輝度信号を使用するスケール(線形ガンマ圧縮輝度入力)と、線形に増加する光強度を使用するスケール(線形輝度出力)の違いを示している。 Linear encoding VS = 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 Linear intensity I = 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 ほとんどのディスプレイ(ガンマが約2.2のもの)では、線形強度スケールでは強度値0.0と0.1の間で知覚される明るさが大きくジャンプするが、スケールの上限側ではほとんど知覚できない。非線形に強度が増加するガンマ符号化スケールでは、知覚される明るさのステップがはるかに均一になる。 例えば、ブラウン管(CRT)では、印加されたビデオ電圧に対する電子銃の強度(明るさ)が非線形な関数となっているため、ビデオ信号を非線形に光に変換する。 光強度 I と、供給された電圧 Vsの関係は I ∝ V s γ , {\displaystyle I\propto V_{\text{s}}^{\gamma },} となる。ここで、γ はギリシア文字のガンマである。CRTの場合、明るさと電圧の関連を示すガンマは、通常2.35~2.55の範囲であり、コンピューターのビデオ・ルックアップ・テーブルは通常はシステム・ガンマを1.8~2.2範囲に調子するが、これはこのセクション上部の図が示すように、均一な符号の変化が、ほぼ均一な明るさに対する知覚の変化をもたらす領域にある。 単純のために白黒のCRTを例にとる。この場合、0.5のビデオ信号(中間のグレイを表す)がディスプレイに供給されると、強度(明るさ)は0.22(中間のグレイで、白の22%の強度)となる。純粋な黒(0.0)と純粋な白(1.0)はガンマの影響を受けないただ二つの色となる。 この影響を補償するために、逆伝達関数(ガンマ補正)がビデオ信号に適用される場合があり、この場合はエンド・ツー・エンド(光入力から光出力まで)の応答は線形になる。言い換えれば、送信される信号は所定の形で歪まされているので、表示装置で再び歪まされることによって視聴者は正しい明るさで見ることができる。上記の関数の逆関数は V c ∝ V s 1 / γ , {\displaystyle V_{\text{c}}\propto V_{\text{s}}^{1/\gamma },} であり、ここで Vc は補正された電圧、Vs は、例えば光電荷を線形に電圧に変換する撮像素子から供給された電圧である。CRTの例では 1/γ は 1/2.2 ≈ 0.45 となる。 カラーCRTは3系統のビデオ信号(赤、緑、青)を受け入れ、一般には各色ごとのガンマ値 γR、γG、γBを有している。しかしながら、単純なディスプレイ・システムでは3色に同一の γ の値が使用される。 他の表示装置のガンマ値は異なっており、例えばゲームボーイアドバンスのディスプレイは照明状態によって変化する3~4のガンマ値を有している。ノートPCなどの液晶ディスプレイでは、信号電圧 Vs と、強度 I の関係は非常に非線形であり、ガンマ値では説明することができない。しかしながら、このようなディスプレイ装置では、標準的な γ = 2.5 として動作するために、信号電圧を補正している。NTSCのテレビ録画では、 γ = 2.2 となっている。 べき乗則関数は(逆関数も)0で傾き無限大となる。これはガンマ色空間への変換および逆変換において問題を引き起こす。このことから、sRGBのようなほとんどの正式に定義された色空間では0の近傍で線形部分を定義し、 x + K (K は定数)をべき乗して曲線の傾きを連続にしている。この直線部分はCRTの動作を表すものではないが、曲線の残りの部分をCRTへの周辺光の影響によってより厳密に一致させる。このような式では、指数はガンマとはならず、例えば、sRGBの関数は2.4乗を使用しているが、直線部分がない指数2.2のべき乗則関数に近いものとなっている。
※この「ビデオ・ディスプレイのべき乗」の解説は、「ガンマ補正」の解説の一部です。
「ビデオ・ディスプレイのべき乗」を含む「ガンマ補正」の記事については、「ガンマ補正」の概要を参照ください。
- ビデオ・ディスプレイのべき乗のページへのリンク