テーマと評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/16 13:43 UTC 版)
「エドガー・ウォーレス」の記事における「テーマと評価」の解説
ウォーレスのキャラクターは「自治区委員サンダーズ」のように、アフリカ植民地での白人至上主義を表しており、現代の眼からは根深い差別主義者でパターナリズムである。アフリカ人のこの観点のため、忠実な労働者を求める非常識人として攻撃を受けた。例えばサンダーズは、50万人の人食い人種に「文明」をもたらすと約束する。ジョージ・オーウェルはウォーレスを暴力礼賛者、ファシストの原型と呼んだが、多くの批評家は、当時のマーケットに迎合したポピュリスト作家とみなしている。 170冊の長編を含み5000万部以上を売り上げた、ウォーレスはまったくの大衆迎合作家であり、忘れ去られた。Q.D.リービス、アーノルド・ベネット、ドロシー・L・セイヤーズは、ウォーレスが社会批判も破壊的な提案もまったくしていないこと示し、読書界の善良なものと区別し、ウォーレスへの攻撃を導いた。トロツキーは1935年に病床での回復時にウォーレスの小説を読み、「凡庸、下劣、粗野。認識の影も才能も想像力もない」とみなした。批評家のステインブルーナーとペンズラーは、「ぞんざい、決まり文句、平面的な人物造型、ありきたりな状況だらけ、直感と偶然に頼り、切れが鈍く、紛らわしい行動。ヒーローと悪人が色分けされていて、ユーモラスな召使い、まごつく警察官、生気の無いヒロインといった血の通わない人物は、作品間で取り替えても違和感がない。」と述べている。粗雑な文体から、バーナード・ショーからは"Cheap Literature"(三文文学)、共産党の新聞からは"Shocker"(俗悪文学)といった悪評も受け、アメリカの俗語を多用するのも特徴だった。しかし『The Oxford Companion to the Theatre』では、「彼の作品で(ウォーレスの)犯罪記者としての修行のもたらした、尋常でなく正確なディテール、物語る技術、警察の手法の内部情報、犯罪心理学を示している」と主張されている。 だがウォーレスは、他の多くのスリラー作家と違ってプロット表を使わず、口述方法を好んでいた。批評家ディクソンは、ウォーレスは広く多様な視点と描写を持ち、フェミニズムにおける自己決定権(Barbara on her Own 1926、The Girl from Scotland Yard 1926)、貴族ヒエラルキーの転覆(Chick 1923)、SF(The Day of Uniting 1926)、精神分裂症(The Man who Knew 1919)、自伝(People, 1926)といった様々なテーマを手がけたと述べている。
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