テレジア法における拷問のマニュアル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 06:07 UTC 版)
「拷問」の記事における「テレジア法における拷問のマニュアル」の解説
ヨーロッパ諸国の刑法の中では、カロリナ法は文言の恣意的解釈による拷問官の独自の拷問が行われる余地があった。それを受けバイエルン法では規定を具体化し、恣意性を排除し、一定の拷問が行われるよう対策が講じられた。1768年マリア・テレジアによって公布されたテレジア法では、さらにそれを推し進めイラストによる図解が付記され、拷問官や裁判官によって恣意的な解釈がなされないよう拷問をマニュアル化したことに特徴がある。その中での代表的拷問手法を以下に記述する。 親指詰め 2枚の鉄製の板に対称に突起が与えられ、間に親指を差し込み圧迫することによって使用する。突起は上下15個ずつ計30個、サイコロの5の目に並んだ突起が3つ横に並ぶように配置されている。鉄製のネジを専用のハンドルで絞めていくため、場合によっては指先が潰れてしまう事もありえた。 紐絞め 6 mから10 mほどの麻縄の一端に輪を作り、もう一方の先端をその輪に通しながら被告の水平に伸ばした両腕を手首から肘まで等間隔に食い込むよう合計14回縛り上げる。 なお、オーストリア地方では椅子に座らせた被告の両手首を後ろ手に3回縛るという簡易的手法がとられたが、それだけでも血行が阻害され長時間耐えることは困難であった。 梯子吊るしと蝋燭責め まず後ろ手に縛った両手首を梯子の上方に固定する。次いで仰向けに梯子に寝かされた被告の足首を紐で縛り、これを梯子の下部に固定されたハンドルに結びつけ、ハンドルを廻し下に引っ張る。通常3時間半は引っ張られた状態のまま放置された。すると人間の体は30 cmほど伸びるという。さらにはこれに40 g(グラム)の蝋燭8本を束ねたものを2つ用意し、それを両脇腹にあてることによって苦痛を与える。 スペインやドイツの場合では被告が水平に寝かされているが、テレジア法の場合では梯子が45度に傾けられている点に特徴があり、引っ張る力に体重が加わるため苦痛が増した。 スペインのブーツ責め スペインの異端審問の際に用いられたことからこのような名前が与えられた。親指責めの要領で2本の下肢を、それぞれ30個の突起がついた鉄製の金属板で締め上げる。15分も行えば苦痛のあまり気絶することが多く、60歳過ぎの老女が12時間にわたるこの拷問の結果、死に至った例も存在する。 天井吊るし 被告は後ろ手に縛られ、大掛かりな車輪に結び繋がれたロープでもって天井の定滑車を通し、縛り上げられた両手首から吊り上げることによって苦痛を与える。さらに過酷な場合には10 kg(キログラム)から20 kgの重りを脚に付けることによって荷重を増す手法もとられた。 また、特に残酷な方法として吊り上げた状態から急激に床へ叩きつけるなどの行為が行われることあったが、テレジア法では禁止されていた。これの拷問では腕を脱臼し、釈放されても職人は仕事に就けないことが多かった。
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