ツイード・アンプ (Tweed Amps)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/08 16:26 UTC 版)
「フェンダー・アンプ」の記事における「ツイード・アンプ (Tweed Amps)」の解説
1952年頃から1960年頃までの仕様である。当時の旅行カバンにもよく使われた丈夫なツイードでカヴァリングされた、アンプ群である。Champion 600の後継機であるいちばん小さい「Champ」という出力管に6V6を一本、スピーカーは8インチが一基(1x6V6、108と表記される)のモデルから、2x6L6、410という構成の最大機種、「Bassman」であった。このモデルは以降のアンプ・シーンの原点となったモデルであり、マーシャル・アンプはこのモデルのフルコピーからはじまっている。Bassmanという名称から察せられるとおり、じつはベース・アンプとして当初は開発されたのだが、ギタリストに好評を得、いつのまにかギター・アンプということになってしまった。Bassmanを最高のギター・アンプとするギタリストは数多い。現在はフェンダー社で復刻されているために入手が容易である。なお、2x6L6、212仕様であったTwinは、ツイード末期に4x6L6仕様にパワー・アップされ、最終的には最もハイパワーのツイード・アンプとなった。 フェンダー・アンプというとクリーン・サウンドという誤解が生じているが、それは後年のシルヴァーフェイス期のイメージ、あるいはそのひとつ前のブラックフェイス期でも相当な大音量でなければ歪みを得られないツイン・リヴァーブのイメージからくるものである。ツイード期のフェンダー・アンプはびっくりするほどのディストーション・サウンドが得られる。歪みを得るにはヴォリュームを上げるわけだが、出力が小さいアンプのほうが爆音にならずに済むため、歪み重視のプレイヤーには小出力アンプが好まれる傾向がある。例えばエリック・クラプトンはデレク・アンド・ザ・ドミノスのアルバム『いとしのレイラ』のレコーディングにおいて「Champ」を用いている。 ツイード時代初期は黎明期から受け継がれた仕様として、プリアンプ管にはUS 8ピンメタル管の双三極管6SC7、同五極管の6SJ7などが使われたが、徐々に現在の主流であるより小型化されたMT9ピン双三極管、12AX7、12AY7などに置き換えられていった。これらの変更は、特にマイクロフォニックノイズの低減に効果を発揮した。また、TVフロントと呼ばれる最初期のツイードアンプの回路の特徴として、初段にゼロ・バイアス(グリッドリーク・バイアス)方式、プッシュプルアンプの位相反転回路にPG反転を利用した回路が採用されており、電力増幅段のバイアス方式もカソードバイアス方式であった。これら最初期の回路は、ソリッドエレクトリックギターが世に出る前の設計であり、同社からも発売されていた、スチールギター用の増幅器ととらえたほうが正しい。ただし、回路が原始的という意味ではなく、現在でもこれらの回路を採用しているアンプも存在するが、大きな出力を得ようとした場合にはやや不利な回路である。ツイード時代もワイドパネルと呼ばれる中期、ナローパネルと呼ばれる後期になると、ロックンロールの台頭と共に、いよいよエレクトリックギターに特化された比較的パワーの得やすい回路に変わり、プリアンプ部もより洗練され、位相反転回路はマラード型、電力増幅段のバイアス方式も固定バイアス方式が主流となり、これらの採用の頂点に立つのが、Tweed Twin 5E8-A、Tweed Bassman 5F6-A などである。(5E8-AはP−K分割回路)これらクラスAB級 固定バイアス方式によるプッシュプルアンプは、最終的にはパラレルプッシュプル方式のBig Box Twin 5F8-Aとなり、最大出力80〜100Wまでに達した。これら後期のTweed Ampは、後のギターアンプの模範となり、真空管式ギターアンプの回路としては、この時点でほぼ完成の域に達したと言える。このようにTweed Amp時代に回路は劇的に進化を遂げ、その進化の歴史はそのままエレクトリックギターアンプの進化の歴史と言っても過言ではない。ブラックフェイス時代になると、プリアンプ部分は更に改良され、ビブラートやトレモロ効果をもたらす回路と、真空管ドライブのスプリング式リヴァーブを追加し、フェンダーアンプの黄金期を迎える事になる。現在、市場に出回っている多くのギターアンプは、何らかの形でTWEED期やブラックフェイス期のFENDERアンプの影響を受けているものがほとんどである。
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