チベット仏教の灌頂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 15:41 UTC 版)
四灌頂 チベットでは、無上瑜伽に分類されるほとんどのタントラで以下の四種の灌頂を行う。ゲルク派では、四種の灌頂の授与に先立ち、菩薩戒・三摩耶戒を授ける。 瓶灌頂(びょう かんじょう, བུམ། [bum])この灌頂を受けることにより、生起次第の修習が許される。日本密教の結縁灌頂・受明灌頂に相当する。(水灌頂)灌頂を受ける弟子(受者)に目隠しの赤い鉢巻をほどこし、誓いの水(誓水)などを飲ませて加持した後、曼荼羅へ導いて華を投げさせる。この華の落下した場所の仏菩薩が、受者の守り本尊となる。ついで弟子の目隠しを取って曼荼羅を見せ、瓶から香水を取り出し、弟子の頭頂に注ぐ。 (宝冠灌頂)三界の法王となったことを象徴する宝冠を授与する。 (杵・鈴・名灌頂)密教行者の象徴である金剛杵と金剛鈴を授与し(杵灌頂・鈴灌頂)、最後に密教の法名である金剛名として、受者の守り本尊にちなんだ名前を授与する(名灌頂)。 秘密灌頂から第四灌頂までを受けることにより、究竟次第の修習が許される。 秘密灌頂(ひみつかんじょう, གསང། [gsang])阿闍梨の体験している楽空無差別の境地を、弟子も同様に体験できるようにするため、その素地を植え付ける。 般若智灌頂(はんにゃちかんじょう, ཤེར། [sher])阿闍梨が指導しながら弟子が瞑想し、自分自身で楽空無差別の境地を疑似体験する。 第四灌頂(だいよんかんじょう, དབང་བཞི། [dbang bzhi])阿闍梨が受者に言葉による特別な教示を与える。楽空無差別の真理を言葉で解き明かし、弟子が生起次第と究竟次第の実践を通じてこの境地を本当に体得できるように導く。この灌頂を受けることにより、学習した密教を他に講説することが許されるようになる。日本密教の伝法灌頂に相当する。 カーラチャクラ・タントラの灌頂 無上瑜伽タントラのひとつ「カーラチャクラ・タントラ」のみ、他とは異なる独特の体系を示す。世間灌頂七種(水・宝冠・繪綵・杵鈴・尊主・金剛名・許可)と出世間灌頂四種(瓶・秘密・般若智・第四)に分類する。 灌頂の深浅のレベルにもとづく3分類 「共のトルマ(=ぐのトルマ)に依って四灌頂をお加持の方法で授けるもの(ཐུན་མོང་བ་གཏོར་མ་ལ་བརྟེན་ནས་དབང་བཞི་བྱིན་རླབས་ཀྱི་ཚུལ། [thun mong ba gtor ma la brten nas dbang bzhi byin rlabs kyi tshul]) 「不共のラマの身体曼荼羅(ふぐのラマのしんたいまんだら)」により四灌頂を完全に授けるもの(ཐུང་མོང་མ་ཡིན་པ་བླ་མའི་ལུས་ཀྱི་དཀྱིལ་འཁོར་དུ་དབང་བཞི་རྫོགས་པར་བསྐུར་བ། [thung mong ma yin pa bla ma'i lus kyi dkyil 'khor du dbang bzhi rdzogs par bskur ba]) 非常に秘密な胸に住して頂くお加持の方法で授けるもの(ཆེས་ཤིན་ཏུ་གསང་བ་སཉིང་བཞུགས་ཀྱི་བྱིན་རླབས་ཀྱི་ཚུལ། [ches shin tu gsang ba sanying bzhugs kyi byin rlabs kyi tshul])
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