ダイナミック型スピーカーの振動板の材質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 10:07 UTC 版)
「スピーカー」の記事における「ダイナミック型スピーカーの振動板の材質」の解説
振動板には、分割振動や共鳴による固有振動が少ないこと、変換効率が良いことが求められる。このため、硬く(=高ヤング率)、内部損失が大きく、かつ軽量な素材が使われる。また、経年劣化が少ないことも重要である。これら全てを高い次元で満たす材料を求めるのは容易でない。このため、ユニットの担当する音域に合わせて素材を変えるのが一般的になっている。なお、振動板の材質として軽量なものが好ましいと言っても、限界がある。あまりにも軽量だと低音に比して中音、さらには高音の音圧レベルが高くなり過ぎる。トゥイーター用としては好ましい特性であるが、ウーファー用としては好ましい事ではない。よって、ウーファー用のスピーカーユニットの振動板は、他のスピーカーユニットのそれよりも重い場合が多い。 紙 - 時代を問わず最も多く利用されている。適度に内部損失があり、比較的丈夫で軽量なため、廉価品から超高級スピーカーまで幅広く使われている。全ての音域に使用できるが、高音用にはあまり使われない。パルプに種々の材料を混漉することで特性を改善した紙も多く使われる。またホヤやコンブの繊維を使用したり、バクテリアに産生させたバイオセルロースを使用した製品もある。 樹脂- ポリエステル、アラミド、ポリプロピレン、炭素繊維などの高分子樹脂を維状にして編んだり、ハニカム構造にして利用することが多い。主に低音~中音用ユニットに使われる。絹などの繊維を構造基材にし、強度確保や物性改善を目的にこれら高分子材料を含浸させることも行われる。 金属 - アルミニウム、チタン、ホウ素(ボロン)、ベリリウム、マグネシウムなど。薄く軽量化でき、ヤング率が高い反面、内部損失が小さいので固有振動が発生しやすい。このため、主に高音用ユニットに利用される。高音用は振動板が小さいため、固有振動を可聴周波数外に追い出すことができるからである。これらの金属にダイヤモンド薄膜をコーティングしたり、炭化処理、窒化処理、酸化処理、非球面加工、ダンプ剤塗布などして、固有振動を分散化する処理も広く行われている。 木 - 薄くスライスした木板を振動板としたもの。ビクターが「ウッドコーン」の名称でスピーカーやヘッドフォンに採用しているほか、自作スピーカー向けのユニットが販売されている。 その他 - 合成ダイヤモンド、絹ルやカーボンをシート化したものなどがあるが、いずれも主流にはなっていない。
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