ダイナミック型スピーカーユニット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 23:55 UTC 版)
「スピーカー」の記事における「ダイナミック型スピーカーユニット」の解説
一般的な音響機器に組み込まれているスピーカーユニットのほとんどがこの方式を採用している。1924年にチェスターW.ライスとエドワードW.ケロッグによって発明されてから現在に到るまでその基本構造が変わっていないのは、この方式がシンプルで優れているからである。 ダイナミック型のスピーカーユニットにはドーナツ型の永久磁石が用いられる。このドーナツの穴にあたる円筒形の空間に、それよりわずかに直径の小さい筒「ボイスコイル」が挿入されている。ボイスコイルはコイルの一種であり、紙やプラスチックの筒に導線を巻きつけたものである。この導線に音声信号が流れると、電磁石になるためボイスコイルが波形に合わせて前後方向に振動する。ボイスコイルには振動板が直結しており、この振動板が一緒に振動することで音声信号と等しい波形の音が空気中に放射される。これはリニアモーターの原理そのものであり、ダイナミック型スピーカーはリニアモーターの一種であるといってもよい。 上記の各パーツはフレームと呼ばれる骨組に固定され、1つのユニットとして完成したものになる。永久磁石はフレームに強固に固定されるが、ボイスコイルと振動板は振動する必要があるため、ボイスコイルはダンパーを介して、振動板はその外周を取り巻くように張られた「エッジ」と呼ばれる柔軟な膜を介して、それぞれフレームに固定される。ダンパーとエッジは振動板をフレームに固定するサスペンション(懸架装置)であるが、前後方向の動きだけは妨げないようになっている。また、ダンパーは振動板の固有振動を抑える役割もしている。フレームには通常ねじ穴があり、それによってユニットがエンクロージャーなどに取り付けられる。 磁気回路に使われる永久磁石には高い磁束密度が求められる。コストパフォーマンスに優れたフェライト磁石がよく使われるが、小型スピーカーには磁力の強いサマリウムコバルト磁石やネオジム磁石なども使われる。なお、以前はアルニコ磁石も高級品を中心に使われていたが、ニッケル価格が高沸したため現在ではほとんど見られなくなった。またアルニコ磁石には磁気抵抗が少ないというメリットがあるが、減磁しやすい、特殊な磁気回路が必要というデメリットもある。また励磁型と呼ばれる磁気回路にも電磁石が用いられたスピーカーユニットが存在し、強い磁力の永久磁石が無かった1920年代から1960年ごろまではよく使用され、現在でも一部マニアに使用され生産もされているが、磁気回路用に専用の直流電源装置が必要となり使用はかなり大掛かりとなる。
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