スペースコロニー
月の軌道上に数10万人がくらす都市をつくる
宇宙空間に地球と同じような環境をつくり、数万人から数十万人もの人が住む都市を建設しようという計画があります。これをスペースコロニー構想といいます。月の軌道上には、月と地球の引力のつり合ったところがあり、そこにスペースコロニーをつくることができるとされています。このコロニーの内部には、空気も水も運び込まれ、山や湖もつくられます。コロニーを回転させて人工的に重力もつくるので、人々は立って歩くことができ、ふわふわ宙に浮くことはありません。こんな夢のような構想がもし実現されれば、将来スペースコロニーで生まれた人たちが地球へ観光旅行にやってくるという時代がくるかもしれません。
世界の人口増加に対応しアメリカのオニール教授が提案
「地球から出て、広大な宇宙で多くの人類が永住できる人工の生活圏を建設しよう」というスペースコロニー(宇宙植民島)の構想──この構想をはじめて提案したのは、アメリカのプリンストン大学のオニール教授です。彼にこの考えが浮かんだのは、1969年のアポロ飛行士の月着陸の成功のときだといわれています。オニール教授の構想を米国航空宇宙局(NASA)が専門家を集めて検討したところ、「建設可能である」という結論に達し、どうやって建設するかという具体案までもが作成されました。その背景には、世界の人口が当時すでに40億人を突破し、100年後には300億人近くになると試算されている現状があります。このまま人口が増加し続けると、地球上の食糧資源や燃料資源がなくなり、地球上に人類が生存できなくなるおそれがあるのです。
自転の遠心力を重力に代用するドーナツ型の居住区
コロニーに人間が住むには、そこに地球上と似た環境が求められます。大気の構成や圧力、温度などは地球の大気と同じにする必要があります。重力についても同じにすることが望ましいため、コロニーを自転させることで生ずる遠心力で代用しようと考えられています。米国航空宇宙局(NASA)は1970年代に、この考えに沿ったスペースコロニーの構想案を作成しました。それによると、コロニー上方にある大反射鏡で太陽光が反射されてコロニー内に差し込みます。居住区はドーナツ型になっていて、その中が居住区域、農業区域などに区分され、生活に必要な動植物の飼育、栽培がおこなわれます。総重量は推定約1,000万tに達するものです。この計画を実現するには、提案当時の試算でも、約20年の歳月と約2,500億ドル(当時約60兆円)の費用がかかるとされました。このような巨大プロジェクトは、世界のすべての人の理解と協力がなければ実現はむずかしいでしょう。
コロニーの建設資料は月から運ぶほうが効率的
コロニーを月と地球の間につくるとき、スペースコロニーの建設資材は、地球から送るよりも、月から送るほうがよいと考えられています。月の引力は地球の引力の1/6しかないので、月からロケットで運ぶほうが、はるかに効率的なわけです。そのためには、まず人類が月に基地をもつ必要があります。また、コロニー建設のための材料の運搬には、磁石の力で走る「リニアモーターカー」を利用する案があります。これは、まず月基地で月の石や砂を固めて、リニアモーターカーにのせます。秒速2.4kmを超える速度に加速すれば月の引力を脱出させることができ、その石や砂をコロニー建設現場へ送り届けることができます。そして建設現場で飛んでくる月の石を集めて、太陽発電所と太陽炉を使って溶かし、建設資材をつくるのです。
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