スイス連邦共和国ジュネーヴ大学への奉職
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「保江邦夫」の記事における「スイス連邦共和国ジュネーヴ大学への奉職」の解説
ジュネーヴ大学では教授のチャールス・P・エンツに師事。エンツはスイスの天才物理学者ウォルフガング・パウリの最後の助手であった。保江は、スイスにて主に確率制御問題に没頭する。 ジュネーブでは4年間モレゾン通りに居をかまえる。ここで、確率変分学の基本となったヤスエ(保江)方程式を不思議な体験のもとに発見する。以下、ヤスエ方程式を発見した当時の記述の要約。 「スイスに来て2度目のクリスマス時期。セミナー講師招聘のためイタリアに向かった。 ドイツの国境を越えた辺りに、アウトバーンが広がりアクセルを踏み込んでいった。ランチャー特有の甲高いエンジン音が鳴り響き、スピードメータの時速190キロ近くになったとき、あれほど激しいエンジン音や風切り音が鳴り響いていた車内が、一瞬のうちにそれこそ何の音もしない完全な静寂の世界に変貌した。振動も消えた。まるで雲の絨毯の上を滑らかにすべっていくかのように車窓の外の景色だけがゆっくりと穏やかに流れていくのが見える。時間が止まったような感じもあったが、不安とか怖さは全くなかった。むしろ、何か非常に大きな存在に暖かく見守られているという確信も生まれた。このまましばらく様子を見ようという気持ちになった。そして、時速190キロで突如出現してきたこの静寂の世界の中で、自分の額の裏側としか表現できないところにフッと何か数式のようなものが浮かびあがってきた。(中略)あの状況はなんだったのだろう、あの数式は?どうやら自分の頭は一時おかしくなっていたのかもと考えた。あるいは疲労のため脳が混乱していたに違いないとも思った。しかし、その晩ホテルの部屋に入って便せんにその数式の詳細を書き込んでみた。しばらく紙の上の方程式を眺めて考えていくうち、ふと方程式に現れる関数の中に具体的な形を入れてみたらどうなるだろうかと思い、いくつか計算してみた。1964年にプリンストン大の数学者エドワードネルソンが発見していた方程式が導けてしまった。ということは、目の前にある不可思議な方程式は、既に知られていた重要な方程式をひとつの特殊ケースとして含む、より一般的で普遍的な基礎方程式に違いない」 「再度計算をチェックしてみたが、どこにもミスはない。その突然脳裏に浮かんだのは、原子分子のスケールはもちろん、日常的スケールから宇宙的スケールに至るまで成り立つ、最も普遍的な最小作用の法則そのものを表す具体的な数式だった。この数式は日常的スケールや宇宙的スケールの場合には既に物理学の基本原理として確立している最小作用の法則の数式そのものと一致することがわかった。では、原子や分子のスケールではどうなったかというと、いささか面倒な数式展開の果てに、あの方程式が出てきたのだ!僕はついに大学院のときからの希望を達成した。これまで世界中の物理学者達によって基本方程式と考えられてきたシュレーディンガー方程式は単に最小作用の法則が成り立つことから派生的に導かれた浅いレベルの基本原理にすぎない」(「路傍の奇跡」から抜粋) Stochastic calculus of variations Kunio Yasue http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0022123681900793
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