シリーズ3 5.3リットル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/24 12:09 UTC 版)
「ジャガー・Eタイプ」の記事における「シリーズ3 5.3リットル」の解説
シリーズ2の生産が終わってしばらく後の1971年10月、シリーズ3は発売を開始した。アメリカの安全基準に適合させるために骨抜きになったEタイプはエンジンをウォルター・ハッサンとウォーリー・マンディにより設計された内径φ90.0mm×行程70.0mmで5,343cc、圧縮比9.0の新開発V12気筒エンジンに置き換えることでそのパフォーマンスを回復した。キャブレターはゼニス・ストロンバーグ175CDSEを片バンク2機ずつ備え、272hp/5,850rpm、42.0kgm/3,600rpm。アルミブロックを採用したため6気筒と比べても重量増はわずかに留まり、最高速度は227km/h、0→60mph加速は6.9秒を記録した。このエンジンはまさにシルキー・スムーズなすばらしいエンジンであり、その後XJサルーンや後継モデルであるXJ-Sにも搭載されて、改良を受けながら20年以上も生産された。もちろんジャガーの伝統どおり、新型エンジンは最初に生産規模の少ないスポーツモデルに搭載し、市場へのテストベンチとする、という役割もシリーズ3は担っていた。当初ジャガーはレーシング・プロトタイプであるXJ13に搭載したツインカムの5.0リットルV型12気筒エンジンをデチューンして、新たなEタイプに搭載しようと考えていたようだ。しかし量産するには機構が複雑すぎることもさることながら、何よりツインカムのヘッドがEタイプの狭いエンジンベイに納まらないことから採用は見送られ、代わりにシングルカムのV型12気筒エンジンを搭載することとなった。 ボディタイプはクーペが廃止されロードスターと2+2の2タイプのみとなった。ロードスターも2+2のシャシを使っていたため、ホイールベースはかなり延長された。その結果ロードスターのラゲッジスペースは拡大され、また従来は2+2でしか選べなかったボルグワーナー製の3速ATがロードスターでも選べるようになった。従来どおりいずれのモデルにも自社製4速MTも用意された。 外装は大きく手直しを受け、シリーズ1のシンプルな美しさはなくなったが、代わりに迫力と豪華さを備えていた。フロントにはメッキの格子状グリルが付いた。その横のバンパーにはアメリカの基準に合わせるべくつけられた不恰好なオーバーライダーがつけられていた。重量増に対応するためタイヤは太くなったが、それを飲み込むためにホイールアーチには前後ともフレアがつけられた。 前照灯には車幅灯が組み込まれたが、それ以外灯火類は大きな変更を受けず、方向指示器も後部の灯火類もそのままシリーズ2のものが用いられた。 室内ではシートが新設計のものとなった。ヘッドレストは国によって義務付けられたり、オプション扱いになったりした。ステアリングはウッドステアリングが廃止になり、代わりに皮巻きのものが取り付けられた。 その他の変更点としては、パワーステアリングが付いたこと、ブレーキのディスクが通風式になったこと、ノーマルの車輪がワイヤーからメッキカバーの付いたスチールホイールへと変更されたこと、などが挙げられる。サスペンションも若干の変更を受けた。 これらの変更を受け大きく姿を変えたEタイプであるがしかしこの時点ですでにかなり旧態化しており、すばらしい新型エンジンはむしろその旧態化したシャシを目立たせてしまう結果となった。折りしも当時はオイルショックのまっただ中であり、時代がスポーツカーには全くの逆風だった。さらに悪いことにはこのときすでにブリティッシュ・レイランド傘下に入っていたジャガーの自動車の品質はかなり落ちており、最大のマーケットであるアメリカにおいて「よく壊れる車」とのレッテルを貼られる羽目に陥ってしまった。これらのことからシリーズ3は失敗作だとするマニアの声は多いようであるが、何物とも比較せずシリーズ3だけを見れば、これは未だにすばらしいパフォーマンスを誇る美しい車であると言える。 2+2クーペは1973年末、ロードスターは1975年2月に製造中止となった。なお最後の50台にはライオンズのサインが入った、ゴールドのプレートが助手席のパネルに張られている。50台のうち49台は特別色のブラックで塗られてラインオフした。最後の1台はジャガー・ヘリテッジ・トラストに展示されている。
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