コインの種類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 06:48 UTC 版)
マタイによる福音書第26章15節に現れる語(ἀργύρια、argyria)は単に「銀貨」というだけの意味であり、学者たちの間でイエスの代価として使われた銀貨は何であったかについて意見が分かれている。ドナルド・ワイズマンはその候補として、ひとつは一般にティルスのシェケル銀貨(Tyrian shekel)と呼ばれるティルスのテトラドラクマ(銀品位94%、14グラム)、もうひとつはアウグストゥスの肖像を刻んだアンティオキアのスタテル銀貨(銀品位75%、15グラム)を示唆している。この他、プトレマイオスのテトラドラクマ銀貨(銀品位25%、13.5±1 グラム)ではないかとする説もある。2016年12月12日の銀スポット取引の終値 1トロイオンスあたり17.06ドルを用いると、「銀貨30枚」の価値は185ドルから216ドル程度となる。 タイプ 銀品位 重量(g) 銀含有量(g) 30枚の銀含有量(トロイオンス) 価値(17.06ドル/トロイオンス) ティルスのシェケル銀貨 94% 14 13.16 12.69 216.49ドル アンティオキアのスタテル銀貨 75% 15 11.25 10.85 185.10ドル プトレマイオスのテトラドラクマ銀貨 25% 13.5 3.375 3.26 55.62ドル アテネのテトラドラクマ銀貨 95% 17.2 16.34 15.76 268.87ドル ティルスのシェケル銀貨はアテネのドラクマ銀貨4つ分の重さで約14グラムあり、イスラエルのシェケル銀貨(11グラム)に比べて重いが、当時は神殿への賽銭としては等価であるとみなされていた。ローマの銀貨は品位が80%しかなかったため、エルサレムで寺院税を支払うには、より品位の高い(94%またはそれ以上の)ティルスのシェケル銀貨が必要であった。新約聖書の福音書(マタイ21:12ほか)にも、ティルスのシェケル銀貨を通常のローマ通貨と交換する両替商が登場する。 紀元前5世紀にアテナイで発行されたテトラドラクマ銀貨は、コリントのスタテル銀貨と並んでアレクサンドロス3世以前のギリシャ世界でおそらく最も広く通用していた硬貨だとされる。表面には兜をつけたアテーナーの胸像、裏面にはフクロウが描かれており、当時の日常生活において γλαῦκες(glaukes、フクロウの意)と呼びならわされていた。転じてギリシャ語の諺 Γλαῦκ’ Ἀθήναζε(Glauk Athenaze、アテネにフクロウ(を送る))は、英語の Coals to Newcastle(ニューカッスルに石炭を運ぶ)と同じく、ある品物をそれが豊富にあるところにわざわざ持って行くようなこと、すなわち無意味なことを表す。現在ギリシャで発行されている1ユーロ硬貨には、このテトラドラクマ銀貨の裏面が描かれている。ドラクマ貨は、ギリシャ中でさまざまな発行者がさまざまな重量基準で鋳造していたが、最も広く使われて標準となったのは4.3グラムを少し超える重さで作られたアテナイあるいはアッティカのドラクマであった。当時、1ドラクマはおおよそ熟練労働者の日給に相当した。したがって、銀貨30枚がテトラドラクマ貨30枚だったとすると、4ドラクマ×30枚で120日、約4か月分の賃金に匹敵する。 中世には、古代ギリシャ期のロドス島の硬貨を銀貨30枚の見本として展示する宗教施設もあった。この硬貨の表面には正面を向き、上方から光線を浴びる太陽神ヘーリオスの頭部が描かれていたが、この光線は「茨の冠」を表現したものだと解釈されていた。 聖書外典に現れるアリマタヤのヨセフの物語では、ユダは銀貨ではなく金貨を30枚受け取ったとされている。
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