グリーンとシェイクスピア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/12 08:47 UTC 版)
「ロバート・グリーン (劇作家)」の記事における「グリーンとシェイクスピア」の解説
劇作家グリーンはシェイクスピア研究者の間では『三文の知恵』(正式なタイトルは『百万の後悔によって購われたグリーンの三文の知恵』)というパンフレットで最もよく知られている。この作品について、多くの研究者はエリザベス朝ロンドンの演劇コミュニティの一員としてのシェイクスピアに関する最も初期の言及を含んでいるということで意見が一致している。この中で、グリーンはシェイクスピアを向こう見ずにも芝居を書いている役者であり、剽窃をしているとけなしている。この文章はシェイクスピアの芝居『ヘンリー六世 第3部』からとってきたのではないかと考えられている行を引用しているが、この謎めいたほのめかしが正確には何を意味しているのかについて研究者たちは意見の一致を見ていない。 役者の皮を被ってはいるが心は虎も同然の、我々の羽毛で着飾った成り上がりのカラスが近ごろ現われ、諸君の中でも最良の書き手と同じくらい優れたブランク・ヴァースを自分も紡ぎうると慢心している。たかが何でも屋の分際で、自分こそが国内で唯一の舞台を揺るがす者 (Shake-scene) であると自惚れている。 グリーンは明らかに大学出の劇作家たちと同じくらい書けると自分で信じ込んでいる役者について愚痴っており、シェイクスピアの芝居を引用してその役者に触れており、'Shake-scene'というグリーンの一節の前にも後にも一度も用例のない特異な単語を用いている。シェイクスピア別人説の論者たちはグリーンの言葉は時代が早すぎてシェイクスピアへの言及ではないように見えると主張しているが(シェイクスピアは1592年の時点で自著として作品を刊行していなかった)、ほとんどの研究者はグリーンのコメントはシェイクスピアへの言及であり、シェイクスピアはこの時期には『ヘンリー六世 第1部』や『ジョン王』のような戯曲に著者として参加していた「成り上がりの」役者であったのだろうと考えている。こうした戯曲は刊行はされていなかったが、グリーンの死の前に書かれて上演されていたようである。これは他の役者エドワード・アレンへの言及であると考える研究者もおり、グリーンはこれより前のパンフレットでよく似た表現を用いてアレンを攻撃していた。 『三文の知恵』の一部あるいは全体がグリーンの死の直後に仲間の作家の誰かによって書かれたのではないかと考える研究者もおり、死の床での改悛というきわどい物語から利益を得ようと望んでそのようなことをしたのではないかと論じている(パンフレットの印刷業者であるヘンリー・チェトルが有力な候補である)。ハンスペーター・ボルンはグリーンが『三文の知恵』を全部書いたのであり、死の床での「成り上がりのカラス」に対する攻撃はシェイクスピアがグリーンの芝居『悪党を見分けるコツ』に介入したことで起こったのであると論じている。 グリーンは鮮やかで無責任な性格であったため、スティーヴン・グリーンブラットなど数人の論者はグリーンはシェイクスピアのフォルスタッフのモデルであったのかもしれないと推測している。
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