カートリッジ式とスピンオン式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/05 16:33 UTC 版)
「オイルフィルター」の記事における「カートリッジ式とスピンオン式」の解説
内蔵式の後に登場した形式で、はじめにカートリッジ式オイルフィルターが登場した。カートリッジ式とは内蔵式オイルフィルターと同様の構造のフィルターを内部に納めた着脱可能なカートリッジをエンジン外部に取り付けるもので、カートリッジは何度も再利用を行いつつ、中のフィルターのみを定期交換する形式であった。車両によってはエンジンから離れた位置までオイルが循環するパイプが引き出され、外部から容易にアクセス可能な箇所に設けられた取り付け用台座にカートリッジを取り付けるものもあった。内蔵式に比べてオイルパンなどを開ける必要がないために整備性の向上に繋がった。 そして、1950年代の半ばにスピンオン式オイルフィルターが登場した。スピンオン式オイルフィルターは底部に雌ねじが切られた薄いプレススチールかアルミニウム製のケーシングの中に、濾紙製オイルフィルターと各種バルブ類を全て内蔵しているタイプのオイルフィルターで、エンジン側のオイル経路上に設けられたパイプ状の雄ねじに直接回転させて取り付けられ、オイルフィルターを交換する度に濾材はケーシング毎廃棄されることになる。スピンオン式オイルフィルターの登場はオイルフィルター交換作業を飛躍的に効率化させただけでなく、車両側の油圧経路の構造を簡便化する事にも貢献し、世界中の自動車・オートバイメーカーがこぞって採用したために瞬く間にオイルフィルターの主流となった。社外品を供給する部品メーカーによっては、旧来のカートリッジ式オイルフィルターシステムにスピンオン式フィルターが使用出来るレトロフィットキットを供給する事例もあった。 しかし、スピンオン式オイルフィルターには全ての部品が分解不可能なケーシングに納められている関係上、リサイクルが困難で内蔵式やカートリッジ式に比べて廃棄物が増大するデメリットも存在した。アンチドレーンバルブが内蔵されているために、取り外したフィルター内部に大量の廃油が残ることも廃棄やオイル交換作業の上での問題となった。 そのため、1990年代ごろからヨーロッパ車や日本車では廃棄物の軽減の為にスピンオン式オイルフィルターの基本構造を踏襲しながらも、フィルター本体を分解可能として内部の濾材のみを交換可能とした新型カートリッジ式オイルフィルターを採用し始めている。今日、自動車メーカーが純正採用する新型カートリッジ式オイルフィルターは旧来のスピンオン式オイルフィルターとは互換性がないが、アメリカの部品メーカーの中にはスピンオン式オイルフィルターと完全な互換性を持つ分解可能なスピンオン式オイルフィルターを販売する事例も増えてきている。 なお、スピンオン式オイルフィルターはそのエンジンの仕様によりケーシングの大きさやネジのピッチなどが異なるため、交換の際のコストは車種によってまちまちである。また、同じ形状・寸法のスピンオン式フィルターでも、フルフロー式・バイパス式・燃料フィルターなど複数種類が販売されている場合があり、それぞれの内部構造には全く互換性がないため、間違えて取り付けないように十分な注意が必要である。
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