カルダン駆動台車の試験
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/03 08:57 UTC 版)
「阪神1001形電車」の記事における「カルダン駆動台車の試験」の解説
阪神の新設軌道線は戦災や事故、あるいは自然災害など数々の苦難の果てに、1950年ごろには他の日本の鉄道事業者同様、ようやく戦前のレベルにまで復旧することができた。この時期になると戦時中途絶えていたアメリカからの技術情報が入ってくるようになり、PCCカーに代表されるような軽量モーターによる高加減速車両の導入について各事業者において研究が始まった。特に阪神の場合は長年の悲願である車両の大型化も含めて、高性能車の導入は大きな課題であった。 そこで、1950年に襲来したジェーン台風の被害も癒えた1951年以降、昭和26・27年度の運輸省の科学技術応用研究補助金の交付を受けて、制御器換装予定の1121形1130を種車に標準軌間では日本初となるカルダン駆動車を試作することとなり、1952年秋から試験運転を開始した。機器は東芝製で、改造内容は以下のとおり。 台車を釣合梁式の試作台車であるTT-2に換装して、主電動機は1時間定格出力48.5kWのSE-512を搭載、これを直角カルダン駆動方式で駆動した。 制御器は油圧カム軸式のPM-3Bを改造して、電気制動や次に述べる渦流制動装置に対応するようにした。制御器としては直並列切換をやめて全抵抗制御及び一段の界磁制御として乗り心地の向上を図るとともに、電制最終段で自動的に空気制動が入るようになった。 日本初の制動方式である渦流制動装置の実験に対応できるようにした。渦流制動とはカルダン軸に取り付けた鉄製の円板を、電車線を電源とする対抗界磁中で回転させ、その際発生する渦流をブレーキとして利用するものであり、この技術は後年渦電流ブレーキとして確立したものの、この時はメーカーで研究実験中であったことから、実車での実験は行われなかった。 車体も更新並みの修繕が行われ、前年発生した桜木町事故を教訓に不燃化、難燃化が徹底された。また、室内灯も直流直列点灯方式の蛍光灯に交換されたほか、ベンチレーターもガーランド式に交換された。 これらの装備を施された1130は長期にわたって実用試験を受け、このとき得られたデータなどを元に、1954年には阪神初の大型高性能車である3011形が登場した。
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