MRSA
「MRSA」とは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌のことを意味する表現である。
「MRSA」とは・「MRSA」の意味
「MRSA」とは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌のことをいい、メチシリンに対して耐性があることを示しているが、メチシリンなどのペニシリン剤に限らず、β-ラクタム剤や、アミノ配糖体剤、マクロライド剤など、多くの薬剤に対し多剤耐性を示す。そのため、通常の抗菌薬では効果がなく、MRSAの抗菌薬としては、グリコぺプチド系の塩酸バンコマイシン、テイコプラニン、アミノグリコシド系の硫酸アルベカシン、オキサゾリジノン系のリネゾリド、環状ペプチド系のダプトマイシンが承認されている。その中でも塩酸バンコマイシンは、第一選択薬の抗菌薬として使用されることが多い。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の元となる黄色ブドウ球菌は、人間の鼻やのど、皮膚など様々なところに存在している常在菌である。健康な時は身体に問題が起こることは少ないが、免疫力が低下している時や、高齢者、傷口があると感染症にかかりやすくなる。特に、黄色ブドウ球菌の中でもメチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、抗生物質が効きにくいため感染すると重症化しやすい。そして、菌を保有しているかどうか調べるためには細菌検査を行う。細菌検査の結果での1+とは、菌を保有している状態のことをいう。菌の保有数が増えれば、この1という数が2や3になる。MRSAの感染原因には長期間の抗生物質乱用や、長期間の入院、手術を受けたこと、湿疹などの慢性皮膚炎などが挙げられる。
病院内で感染することを「院内感染」といい、MRSAは院内感染の代表的な病原体である。入院患者が保有している黄色ブドウ球菌の中で、50~70%がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌だったというデータもある。そのため、院内感染を防ぐために感染対策マニュアルが作られている。院内感染は特に高齢者に多く、様々な臓器に感染症を起こし重症化しやすく治療が難しい。その一方で、医療機関以外で感染する「市中感染」は、子どもや若者の皮膚感染が多く、治りやすいという特徴がある。
MRSAの感染経路には、飛沫感染や接触感染がある。どうやって感染するかというと、MRSAに感染した人が咳やくしゃみをすることで感染したり、MRSAに感染した人の飛沫を触り、その手で鼻や口などを触ることで感染したりする。そのため、MRSA感染者を看護する場合は、マスクやガウンの着用、手洗いうがいを徹底することが大切である。
MRSAに感染したらどんな病気になるかは、感染場所によって様々で、皮が大きくむけるブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群や、かゆみの強い膿んだ水ぶくれができるとびひ、発熱や皮膚の腫れなどが起こる骨髄炎、高熱や呼吸困難を起こす肺炎などが挙げられる。したがって、感染したらどのくらいで治るかは症状の重さによって差が出てくる。
MRSAは決して治らない感染症ではないが、高齢者が感染すると症状が重くなりやすいため、治るのか不安に思ったら医師や医療現場のスタッフに直接聞くと良い。MRSAについては、「感染 原因」「症状 高齢者」「完治 期間」などインターネット上で検索されることが多いが、自らの判断で抗菌薬を使用すると症状が悪化することも考えられるため、身体に違和感を感じたらすぐに医師へ相談するべきだ。
MRSAと同じブドウ球菌で、「mssa」と「mrse」という菌が存在する。mssaは、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌のことで、第一選択薬の抗菌薬に、セファゾリンを使うことが多い。MRSAとの違いは、メチシリンに対する感受性の有無である。また、mrseは、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌のことで、MRSAと同じく多くの薬剤に対して耐性を示す。MRSAとの違いは、コアグラーゼという血漿を凝固させる酵素を作るか作らないかである。MRSAはコアグラーゼを作り、mrseはコアグラーゼを作らない。
「MRSA」の読み方
「MRSA」は、「エムアールエスエイ」と読む。- エムアールエスエイのページへのリンク