エネルギー保存則の発見
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/23 01:27 UTC 版)
「ジェームズ・プレスコット・ジュール」の記事における「エネルギー保存則の発見」の解説
「熱の仕事当量」も参照 ボルタ電池を使うとジュールの法則にのっとった熱が得られることは明らかになったが、この熱がどこから生み出されたかについては知られていなかった。 この当時の熱学は、熱は物質であるとするカロリック説と、運動であるとする熱運動説の2説あった。カロリック説の基軸となっている熱量保存則によれば、熱は生み出されることはないのであるから、発生した熱はボルタ電池から移動してきたと考えられる。 1843年、ジュールは、おもりの力によって水中でコイルを回転させる実験を行った。コイルを回転させると誘導電流が発生し、水の温度が上昇する。この場合も熱量保存則では、コイルから熱が移動するため、コイル自身は温度が下がっているはずである。一方、「熱は物質でなく振動状態と考えるなら、単なる力学的作用によって、たとえば銅線でできたコイルを永久磁石の磁極の前で回転させるというようなことによって、熱が作り出されないとする理由は何もないように思える」ジュールは、コイルを含めた全体の温度変化を測ることで、熱がコイルから移動してきたのか、それとも新たに発生したのかを確かめようとしたのである。 実験の結果、水の温度上昇はボルタ電池のときと同じく、ジュールの法則が成り立つことが分かった。すなわち、コイルの温度変化は無く、熱は生み出されたものであることが確かめられたのである。ただしこのときジュールは、電磁気が機械的な力を熱に変えていると考えていた。 また、この実験装置でジュールは、仕事量がどれだけの割合で熱に変わるのかを示す数値、すなわち熱の仕事当量も測定した。13回の測定を行い、587から1040までの値を得たので、平均してJ=838ft-lbとした。これは現在の単位に換算するとJ=4.50[J]に相当する[要出典]。 ジュールはその1か月後、細管からの水の圧出による発熱を利用して、J=770ft-lbの値を得た。さらにこの実験では、電流は使用していなかったので、磁電磁気は介在していない。よってジュールは、自らの考えを少し修正し、発生した熱は機械的な力そのものによるものであると結論した[要出典]。 これらの結果は王立協会で発表されたが、評価されることはなかった。これは実験データのばらつきが大きかったのに加え、ジュールがまだ無名であったためでもあった[要出典]。 ジュールはその後も熱の仕事当量の測定を行った。1844年には、気体を膨張、圧縮させることにより仕事当量を求めた。そして、この値は、仕事が熱に変わるときでも、逆に熱が仕事に変わるときでも等しいことを示した。この当時は、カルノーやクラペイロンの理論として、「熱が高温から低温へと移動するときに仕事が発生し、そのときに熱の消失はない」とする考えがあった。しかしジュールは、「この理論は、いかに巧妙であるにしても、公認された学問の原理に反するものであると私は思う」と否定し、熱自体が仕事に転化すると主張したのである。 なお、その際に、気体を単に膨張させただけでは気体の温度は変わらないことを確かめたが、これはカロリック説で信じられていた「膨張の潜熱」(気体は膨張するときに熱が潜在化されるので温度が下がるという考え)を否定するものであった[要出典]。こうしてジュールは自らの理論を確かなものにしていった。
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