イギリス以外への伝播
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/28 14:14 UTC 版)
イギリスで産業革命がほぼ完了する1830年代に入ると、イギリス以外の国々(富国強兵を推進した欧米国家及び幕末から明治初期の日本)にも産業革命が伝播するようになった。まず最初に産業革命が伝播したのはベルギーで、1830年の独立とほぼ同時に産業革命が開始されている。ベルギーが産業革命の先陣を切った理由は、南部のワロニア地域に豊富な鉄鉱石と石炭の埋蔵があったことや、欧州の中央に位置し交通の便に恵まれていたことなどによる。ついで、ほぼ同時期に、七月王政期に入ったフランスと、米英戦争(1812年 -1814年)後にイギリスからの経済的自立が深まり、さらに西部の開拓が急速に進みつつあるアメリカでも産業革命が始まった。イギリスとそれ以外の国々の産業革命における最大の差異は、鉄道の有無である。1825年に実用化された蒸気機関車式の鉄道は、瞬く間にヨーロッパやアメリカ諸国へと伝播し、輸送システムを一変させた。また、こうした後発諸国は先行するイギリスの技術や社会システムを取り入れて発展することができたため、より急速な成長が可能となった。ただしこれら諸国の産業革命のスピードは各国によってまちまちであり、たとえばフランスにおいては産業革命の進展は緩やかなものであり、急速に進展を始めるのはナポレオン3世による第二帝政を待たねばならなかった。 こうした先発諸国に対し、1834年のドイツ関税同盟成立によって広大な共通市場を得たドイツ諸邦が、1840年代から産業革命を開始した。その後、19世紀後半にはイタリアやロシア、そしてスウェーデンなどの北欧諸国が、さらにアジアにおいてはそれまで世界最大の経済大国だった中国とインドはイギリスとの戦争で敗戦して工業化にも失敗し、唯一日本が産業革命を成功させ、工業化社会を築き上げていった。イギリス産業革命がほぼ民間資本のみによって「下から」達成されたのに対し、これら後発諸国の多くにおいては政府が積極的に工業の育成に取り組み、いわゆる「上からの」産業革命が推進されていった。工業化を成功化させた国々と、工業化がなされない国や工業化を成功させた国の植民地との国力差は、産業革命以前と比べて非常に大きなものとなった。
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