コガモとは? わかりやすく解説

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コガモ

(アメリカコガモ から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/10 14:32 UTC 版)

コガモ
コガモ(オス)(2014年2月、三重県)
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
亜綱 : Carinatae
下綱 : Neornithes
小綱 : Neognathae
: カモ目 Anseriformes
: カモ科 Anatidae
亜科 : カモ亜科 Anatinae
: マガモ属 Anas
: コガモ A. crecca
学名
Anas crecca
Linnaeus1758
英名
Common Teal
亜種
  • アメリカコガモ A. c. carolinensis
  • コガモ A. c. crecca
  • オオコガモ A. c. nimia
生息分布図(黄緑色:繁殖地、水色:越冬地、濃緑色:周年生息地)

コガモ(小鴨、学名: Anas crecca)は、カモ目カモ科マガモ属の鳥類の一で、カモの仲間。日本語における命名由来は「小型のカモの意」であるが、本項で扱うコガモは形容や総称ではなく、生物種である。

形態

コガモの雄(上)と雌(下)
Anas crecca

体長34〜38cm。翼開長58〜64cm。の方がやや大きい。ドバトより一回り大きい程度で、日本産カモ類の中では最小種のひとつ。

雄は頭が栗色で、目の周りから後頸にかけてが暗緑色、身体は灰色で、側面に横方向の白線が入る。下尾筒は黒く、両側に黄色い三角の斑がある。は暗褐色だが、翼鏡は緑色。は黒い。

は全体に褐色で、黒褐色の斑がある。下尾筒の両脇は白い。雄と同様に緑色の翼鏡が見られる。

生態

非繁殖期には、湖沼河川干潟などに生息する。淡水域に多い。越冬の終盤である2月末〜3月につがいを形成し、繁殖地へ渡る。つがいを形成する前の11月〜1月頃には、オスはメスに対して盛んにディスプレイ行為を見せる。繁殖期には、河川や湿地の周辺の草地などに生息する。

食性は植物食で、河川や湖沼などの水面から届く範囲の水草などを食べる。夜間に採食することが多い。

雄は「ピリピリッ」、雌は「クゥェックゥェッ」などと鳴く。

繁殖形態は卵生。メスは草地の地上にを作り、4月下旬〜7月上旬に平均8個産卵する。卵の平均サイズは45×33mmである。卵は抱卵開始から21〜23日で孵化する。他の多くのカモ類と同様に、抱卵・育雛はメスのみで行う。雛は26〜30日程度で親から独立する。

分布

ユーラシア中部・北部および北米大陸中部・北部で繁殖する。冬季はヨーロッパ南部、北アフリカ中近東南アジア東アジア、北アメリカ中部から南部へ渡り越冬する。

日本では、冬鳥として全国に飛来する。全国で普通に見られ、市街地の河川や公園の池などでも観察される。中部地方以北の高原や北海道湿原では、ごく少数が繁殖している。

カモ類の中では冬の渡りが早く、また春の渡りが遅めである。越冬中は群れで生活し、関東地方では9月頃から4月頃にかけて見ることができる。

亜種

アメリカコガモ(手前が雌、奥が雄)
亜種コガモ Anas crecca crecca Linnaeus1758
日本に主に渡来する。
亜種アメリカコガモ Anas crecca carolinensis Gmelin1789
英名:Green-winged Teal
本亜種の雄は、側面に横白線が入らず、肩から縦に白線が入ることで判別できる。雌や幼鳥の両亜種間の識別は困難である。日本国内では亜種コガモに混じって希に観察される。また、両亜種の特徴を有した亜種間雑種と考えられる個体も観察されている。
なお、本亜種をコガモとは別の独立種 Anas carolinensis (Gmelin1789) であるとする見方もある。
亜種オオコガモ Anas crecca nimia Friedmann1948
アリューシャン列島に分布している。

人間との関わり

肉は食用になる。カモ類の中でも食味が良いことで有名で、『大和本草』ではマガモ、オナガガモ、本種の3種を美味な鴨として挙げている[2]

世界的に重要な狩猟鳥獣の一つで、日本でも「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(平成十四年法律第八十八号、通称:鳥獣保護法)[3]で狩猟鳥獣に一つと定められている(リスト一覧は同法の施行規則第三条にあり[4])。狩猟を希望する場合は同法に従って狩猟免許を取得し都道府県の名簿に登載されれば、亜種も含めて冬季に決められた区域内と手法で狩猟ができる。なお、卵の採取は同法の第八条により[3]、鳥もち・釣り針・かすみ網などによる狩猟は同法の施行規則第十条により禁止されている。また、施行規則第十条により一日に捕獲できる上限はカモ類合計で5羽と定められている[4]

名前

『日本鳥類目録』(1974)に掲載されている標準和名は「コガモ」[5]、日本産カモ類の中でも最も小さい鴨の一つということで形態的な特徴に基づく命名である。食味が良く利用的にマガモとの対比を示す名前でもあったとみられ、マガモを「オオガモ」という地方名で呼ぶ地域も多い[6]

漢字表記は「小鴨」が妥当だろうが、『大和本草』では「刀鴨」と書いて「コガモ」と読み仮名を振っている。同書は「鴨」ではなく「鳬」表記が多いが、「刀鴨」表記となっている[2]

食味が良く利用価値の高いカモであり、地方名は非常に多い。『水谷禽譜』には「タカベ」や「オナガガモ」に混じって「ホタル」という名前も確認できる[7]

種小名 crreaは本種の鳴き声の擬声語に由来し、英語における quackをラテン語表記したものだという[8]

脚注

  1. ^ BirdLife International. (2020). Anas crecca. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T22680321A181692388. doi:10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T22680321A181692388.en
  2. ^ a b 貝原篤信(1709)『大和本草 巻乃十五 巻乃十六』(国立国会図書館所蔵 請求記号:特1-2292イ)doi:10.11501/2557370(国立国会図書館デジタルコレクション)
  3. ^ a b 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号) e-gov 法令検索. 2025年8月15日閲覧
  4. ^ a b 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行規則(平成十四年環境省令第二十八号) e-gov法令検索. 2025年8月15日閲覧
  5. ^ 日本鳥学会 編 (1974) 『日本鳥類目録(改訂第五版)』. 日本鳥学会. 学習研究社, 東京. doi:10.11501/12638160(国立国会図書館デジタルコレクション)
  6. ^ 農商務省 編 (1921) 『狩猟鳥類ノ方言』. 日本鳥学会, 東京. doi:10.11501/961230(国立国会図書館デジタルコレクション)
  7. ^ 水谷豊文 (発行年不明)『水谷氏禽譜 二』. (写本。国立国会図書館所蔵 請求番号寅-12) doi:10.11501/2553655(国立国会図書館デジタルコレクション)
  8. ^ 内田清一郎, 島崎三郎 (1987) 『鳥類学名辞典―世界の鳥の属名・種名の解説/和名・英名/分布―』. 東京大学出版会, 東京. ISBN 4-13-061071-6 doi:10.11501/12601700(国立国会図書館デジタルコレクション)

参考文献

関連項目

外部リンク





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