アメリカコガモとは? わかりやすく解説

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アメリカコガモ

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コガモ

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/14 14:36 UTC 版)

コガモ
コガモ雄(冬羽、日本・2月)
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
亜綱 : Carinatae
下綱 : Neornithes
小綱 : Neognathae
: カモ目 Anseriformes
: カモ科 Anatidae
亜科 : カモ亜科 Anatinae
: マガモ属 Anas
: コガモ A. crecca
学名
Anas crecca
Linnaeus1758
英名
Common Teal
亜種
  • アメリカコガモ A. c. carolinensis
  • コガモ A. c. crecca
  • オオコガモ A. c. nimia
生息分布図(黄緑色:繁殖地、水色:越冬地、濃緑色:周年生息地)

コガモ(小鴨、学名: Anas crecca)は、カモ目カモ科マガモ属の鳥類である。

形態

カワラバトくらいの小さいカモである。

以下、清棲(1979)による[2]

冬羽の雄は額から後頭にかけて栗色を基本とするが、目から後頸までは金属光沢のある暗緑色になる。暗緑色の部分の上下には栗色の部分との境に細い白線がある。眼先、頬、喉、頸側などは栗色、腮(あご)は黒褐色である。後頸の羽根はやや長く、金属光沢のある藍紫色で若干ではあるが毛羽立ち羽冠になる。背と腰は暗褐色で、個々の羽根には灰褐色の縁がある。胸は汚白色で、黒い斑点が散在する。腹は白色で灰色の不明瞭な横縞がある。胸側と脇は遠目には灰色であるが、近くで見ると地は白色で細かい波型の黒い模様が密在するのがわかる。上尾筒、下尾筒は黒色。下雨覆と脇羽は白色、風切羽類は内側は基本的に灰褐色、外側はやや色が濃いが、次列風切の外側だけは緑色の金属光沢がある。嘴色は黒色、虹彩は褐色、脚色は灰褐色、嘴峰(嘴の長さ)は雄33-40mm、雌30-40mm、翼長は雄165-195mm、雌160-185㎜、体重が雄280-500g、雌225-430g[2]

冬羽の雌は頭上から後頭にかけて濃褐色で個々の羽根には赤錆色の縁がある。額、腮と喉はクリーム白色で黒褐色の小斑が散在する。背と肩羽は黒褐色で、個々の羽根には赤錆色の縁があり、中央には馬蹄形の斑紋がある。腹は白色で下腹部に暗色の斑あり。脇はクリーム色[2]

雄の夏羽(非生殖羽、エクリプス)は雌に似ているが、胸や腹の斑が雌よりも小さく、逆に次列風切の金属光沢部分は雌よりも大きくよく目立つ[2]

類似種

雄の冬羽の様子はアメリカコガモトモエガモなどと類似する。アメリカコガモは本種の亜種とも別種とも言われ、形態は酷似するが、脇腹に白線が入るのがよく目立つ。トモエガモは顔の模様が違うが、全体的な大きさや目の後ろに金属光沢のある緑色の部分があること、胸の斑点、灰色のわき腹などが遠目には若干似ている。頭部が褐色系のカモとしてはヒドリガモオナガガモもいるが、目の周りの緑色の部分はなく胸や腹の色合いなどもかなり異なり、本種と間違える可能性は低い。

生態

北半球の高緯度地域でで繁殖を行い、冬季には南方へと渡りを行う。日本にこの際に飛来するものが大半で、一般には冬鳥として認識されている。中部地方以北の高原や北海道湿原では、ごく少数が繁殖している。

植物食メインの雑食性だが、繁殖期には昆虫などもよく食べるとされる。

非繁殖期には、湖沼河川干潟などに生息する。淡水域に多い。越冬の終盤である2月末〜3月につがいを形成し、繁殖地へ渡る。つがいを形成する前の11月〜1月頃には、オスはメスに対して盛んにディスプレイ行為を見せる。繁殖期には、河川や湿地の周辺の草地などに生息する。

雄は「ピリピリッ」、雌は「クゥェックゥェッ」などと鳴く。

繁殖形態は卵生。メスは草地の地上にを作り、4月下旬〜7月上旬に平均8個産卵する。卵の平均サイズは45×33mmである。卵は抱卵開始から21〜23日で孵化する。他の多くのカモ類と同様に、抱卵・育雛はメスのみで行う。雛は26〜30日程度で親から独立する。

分布

ユーラシア中部・北部および北米大陸中部・北部で繁殖する。冬季はヨーロッパ南部、北アフリカ中近東南アジア東アジア、北アメリカ中部から南部へ渡り越冬する。

カモ類の中では冬の渡りが早く、また春の渡りが遅めである。越冬中は群れで生活し、関東地方では9月頃から4月頃にかけて見ることができる。

分類

亜種コガモ Anas crecca crecca Linnaeus1758
日本に主に渡来する。
亜種アメリカコガモ Anas crecca carolinensis Gmelin1789
英名:Green-winged Teal
本亜種の雄は、側面に横白線が入らず、肩から縦に白線が入ることで判別できる。雌や幼鳥の両亜種間の識別は困難である。日本国内では亜種コガモに混じって希に観察される。また、両亜種の特徴を有した亜種間雑種と考えられる個体も観察されている。
なお、本亜種をコガモとは別の独立種 Anas carolinensis (Gmelin1789) であるとする見方もある。
亜種オオコガモ Anas crecca nimia Friedmann1948
アリューシャン列島に分布している。

人間との関わり

食用・狩猟

肉は食用になる。カモ類の中でも食味が良いことで有名で、『大和本草』ではマガモ、オナガガモ、本種の3種を美味な鴨として挙げている[3]

世界的に重要な狩猟鳥獣の一つで、日本でも「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(平成十四年法律第八十八号、通称:鳥獣保護法)[4]で狩猟鳥獣に一つと定められている(リスト一覧は同法の施行規則第三条にあり[5])。狩猟を希望する場合は同法に従って狩猟免許を取得し都道府県の名簿に登載されれば、亜種も含めて冬季に決められた区域内と手法で狩猟ができる。なお、卵の採取は同法の第八条により[4]、鳥もち・釣り針・かすみ網などによる狩猟は同法の施行規則第十条により禁止されている。また、施行規則第十条により一日に捕獲できる上限はカモ類合計で5羽と定められている[5]

農業害鳥

カモ類の中でも草食性の種類は農業被害を引き起こすことでも有名である。

水田で栽培するレンコンの食害に関してはマガモオオバンが主な加害鳥類とされている[6]。茨城県では被害防止のためにハス田に防鳥網を設置しているところが多いが、前記の加害鳥類だけでなくコガモもよく引っかかるという[7]

種の保全状況評価

国際自然保護連合(IUCN)が定めるレッドリストでは2020年現在で低危険種(Least Concern, LC)と評価している[1]。日本の環境省が定める環境省レッドリストでも2015年発表2020年最終改訂の第四次レッドリストには掲載されていない[8]。都道府県が作成するレッドリストでは群馬県において情報不足DDの評価を受けているに留まる[9]

名前

標準和名は「コガモ」とされ、『日本鳥類目録』(1974)にはこの名前で掲載されている[10]、日本産カモ類の中でも最も小さい鴨の一つということで形態的な特徴に基づく命名である。食味が良く利用的にマガモとの対比を示す名前でもあったとみられ、マガモを「オオガモ」という地方名で呼ぶ地域も多い[11]

漢字表記は「小鴨」が妥当だろうが、『大和本草』では「刀鴨」と書いて「コガモ」と読み仮名を振っている。同書は「鴨」ではなく「鳬」表記が多いが、「刀鴨」表記となっている[3]

食味が良く利用価値の高いカモであり、地方名は非常に多い。『水谷禽譜』には「タカベ」や「オナガガモ」に混じって「ホタル」という名前も確認できる[12]

種小名 crreaは本種の鳴き声の擬声語を音写したものとされ、属名 Anasはラテン語でカモ類を指す[13]

脚注

  1. ^ a b BirdLife International. (2020). Anas crecca. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T22680321A181692388. doi:10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T22680321A181692388.en
  2. ^ a b c d 清棲幸保 (1979)『日本鳥類大図鑑 Ⅱ(増補改訂版)』. 講談社, 東京. doi:10.11501/12602100(国立国会図書館デジタルコレクション)
  3. ^ a b 貝原篤信(1709)『大和本草 巻乃十五 巻乃十六』(国立国会図書館所蔵 請求記号:特1-2292イ)doi:10.11501/2557370(国立国会図書館デジタルコレクション)
  4. ^ a b 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号) e-gov 法令検索. 2025年8月15日閲覧
  5. ^ a b 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行規則(平成十四年環境省令第二十八号) e-gov法令検索. 2025年8月15日閲覧
  6. ^ 益子美由希, 山口恭弘, 吉田保志子 (2022) 泥中のレンコンはカモ類等の食害を受ける:実地試験による確認. 日本鳥学会誌 71(2), p.153-169. doi:10.3838/jjo.71.153
  7. ^ 渡辺朝一 (2012) ハス田に敷設された防鳥ネットに羅網した野鳥の被害状況と防鳥ネット敷設が鳥類の生息に与える影響. Bird Research, A11-A18. doi:10.11211/birdresearch.8.A11
  8. ^ 生物情報収集提供システム いきものログ > レッドリスト・レッドデータブック 環境省生物多様性センター 2025年8月31日閲覧
  9. ^ ホーム > 種名検索 日本のレッドデータ検索システム. 2025年8月15日閲覧.
  10. ^ 日本鳥学会 編 (1974) 『日本鳥類目録(改訂第五版)』. 日本鳥学会. 学習研究社, 東京. doi:10.11501/12638160(国立国会図書館デジタルコレクション)
  11. ^ 農商務省 編 (1921) 『狩猟鳥類ノ方言』. 日本鳥学会, 東京. doi:10.11501/961230(国立国会図書館デジタルコレクション)
  12. ^ 水谷豊文 (発行年不明)『水谷氏禽譜 二』. (写本。国立国会図書館所蔵 請求番号寅-12) doi:10.11501/2553655(国立国会図書館デジタルコレクション)
  13. ^ 内田清一郎, 島崎三郎 (1987) 『鳥類学名辞典―世界の鳥の属名・種名の解説/和名・英名/分布―』. 東京大学出版会, 東京. ISBN 4-13-061071-6 doi:10.11501/12601700(国立国会図書館デジタルコレクション)

参考文献

関連項目

外部リンク


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