アセタールとヘミアセタール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/05 02:51 UTC 版)
「四面体型中間体」の記事における「アセタールとヘミアセタール」の解説
ヘミアセタールとアセタールは実質的に、電気的に中性な四面体型中間体である。それらは求核剤がカルボニル基に付加するときに生成するが、四面体型中間体と異なり非常に安定で、有機合成化学で保護基として用いられる。アセトアルデヒドがメタノールに溶解するとヘミアセタールが生成する。ほとんどのヘミアセタールはもとになるアルコールやアルデヒドに比べ不安定である。例えば、アセトアルデヒドと単純なアルコールが反応してヘミアセタールができる反応の平衡定数はだいたい0.5である。[要出典]ただし平衡定数KはK=[ヘミアセタール]/[アルデヒド][アルコール]で定義される。ケトンのヘミアセタール(ヘミケタール)はアルデヒドのヘミアセタールよりも不安定である。しかし、環状ヘミアセタールや電子吸引基をもっているヘミアセタールは安定である。カルボニル炭素に結合した電子吸引基は平衡をヘミアセタールの側に傾ける。それらはカルボニル基の極性を増加させ、すでに正の部分電荷(英語版)をもっている炭素のδ+性を増加させ、求核剤が攻撃しやすいようにする。下の図はカルボニル化合物の水和の傾向を示したものである。ヘキサフルオロアセトンは最も水和しやすいカルボニル化合物であると見られている。[要出典]ホルムアルデヒドはカルボニル基の両側が水素原子のみで立体障害がほとんどないため、水と速やかに反応する。 シクロプロパノン(三員環の環状ケトン)も非常に水和しやすい。 三員環は環ひずみが非常に大きく(結合角が60˚まで捻じ曲げられている)、sp2混成よりはsp3混成の方が望ましい。sp2混成のケトンの結合角が約60°であるのに対し、sp3混成の水和物は結合が約49˚まで歪められている。したがってカルボニル基への付加により環構造特有のひずみが解放されるので、シクロプロパノンやシクロブタノンがとても求電子性が高い。より大きな環になると、結合角がゆがめられていないので、ヘミアセタールの安定性はエントロピーや近接性のため、小さな環に比べ高くなる。1分子のヘミアセタールが生成するのにカルボニルが2分子必要であるため、鎖式アセタールの生成ではエントロピーが減少する。対照的に、環状ヘミアセタールでは一つの分子が分子内で反応を起こすため、反応は起こりやすい。環状ヘミアセタールの安定性は平衡定数(正反応と逆反応の速度定数の比)からも理解できる。環状ヘミアセタールでは分子内反応が起こるため、求核剤は常にカルボニル基の近くにあって攻撃しやすく、正反応の速度定数が逆反応のそれに比べてずっと大きい。[要出典]グルコースなど、糖に関する生体分子はの多くは環状ヘミアセタールである。 酸の存在下で、ヘミアセタールは脱離反応を起こし、もともとのアルデヒドのカルボニル基に含まれていた酸素原子が水分子として抜ける。これらのオキソニウムイオンは強力な求電子剤で、2分子目と速やかに反応してより安定な化合物、アセタールを与える。ヘミアセタールからアセタールが生成する反応機構は以下の通り。 アセタールは、上述のとおり安定な四面体型中間体であるため、有機合成化学において保護基として用いられる。塩基性条件下ではアセタールは安定で、塩基からケトンを保護するのに用いられる。アセタール基は酸性条件下で加水分解され、アルデヒドやケトンへと戻る。ジオキソランを保護基として用いる場合の例を下に示す。
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