頓智話
頓智話(とんちばなし)は、頓智を中心にした話の総称。頓知話、とんち話等とも書く。
日本の頓智話
日本における頓智話の代表的な類型は、「和尚と小僧」と呼ばれる、頓知のきく小僧が俗気の抜けない和尚をやり込める形式の話である。この類型の説話は、古くは、鎌倉時代中期の弘安6年(1283年)に成立した無住による『沙石集』や、同じく無住による『雑談集』に見ることができる。また、江戸時代初期の元和9年(1623年)又は寛永5年(1628年)に成立した『醒睡笑』にもこの類型の説話が収録されている[1]。「和尚と小僧」の類型の説話の一部は、中国や朝鮮半島にも見られることから、日本独自のものではなく、中国か日本や朝鮮半島に伝わったものと考えられている[2]。
江戸時代に入ると、元禄以降、室町時代の僧一休宗純の幼少期の逸話としてまとめられた「一休咄」(一休話、一休ばなし)が広く流布した。
著名な頓智話には、他に、肥後国熊本藩八代(現在の熊本県八代市)の下級武士彦一(ひこいち)を主人公とする「彦一話」(彦一ばなし)、豊後国野津院(現在の大分県臼杵市野津地区(旧・大野郡野津町))の庄屋吉四六(きっちょむ)を主人公とする「吉四六話」(吉四六ばなし)等があり、これらは話の面白さなどから児童文学として遍く紹介された。これらの頓智話の中にも、中国に類話があるものがある[2]。
また、同じような説話が前述の彦一や吉四六、その他郷土の英雄で登場したりする。柳田國男の民俗学を学んだ児童文学者、小山勝清の談によると、とんち話の多くは実話ではなく、フィクション的な要素を持ち、そして各々の地域で大人から子供達に語り伝えてきた、一種の文化啓蒙、情操教育活動であるとみている。そのため、それらは、各々の郷土に主人公が存在し、そしてそれらが実話である必然性もなく、また時代の変遷を経て内容が改変された作品が登場しても何ら不思議はないとしている。
日本以外の頓智話
上述のとおり、中国や朝鮮半島には日本の頓智話と同じ類型の説話が見られる[2]。
また、頓知者を主人公とする民話は、ドイツのティル・オイレンシュピーゲル、アラブのジュハー[3]、トルコのナスレッディン・ホジャ[4]等、世界各地に存在する[5]。
主な頓智話の主人公
日本
- 繁次郎 - 北海道江差町
- 佐兵(さひょう) - 山形県置賜地方[6]
- さんにょもん - 石川県能登地方[7]
- あさこ・ゆうこ - 長野県下高井郡[8]
- 一休 - 京都
- 曾呂利新左衛門 - 大阪
- 泰作 - 高知県四万十市[9]
- 万六 - 高知県[10]
- 又ぜー(またぜー) - 福岡県福津市[11]
- かんねどん(勘右衛門) - 佐賀県唐津市[12]
- 長沢勘作 - 長崎県大村市
- 彦一 - 熊本県八代市
- 吉四六 - 大分県臼杵市(旧・大野郡野津町)
- 徳田大兵衛(侏儒どん) - 鹿児島県霧島市
日本以外
- 渡嘉敷ペークー - 琉球王国[13]
- 東方朔 - 前漢(中国)
- ティル・オイレンシュピーゲル - ドイツ
- スタンチク - ポーランド
- ナスレッディン・ホジャ(ジュハー) - アラブ、トルコ
関連項目
脚注
- ^ 日本大百科全書、小学館、1994年
- ^ a b c 琴榮辰「東アジアにおける「和尚と小僧譚」の伝播 : 『禦眠楯』、『蓂葉志諧』の類話新資料をめぐって」『Comparatio』第13巻、九州大学大学院比較社会文化学府比較文化研究会、2009年12月、1-15頁、CRID 1390853649767097984、doi:10.15017/18357、ISSN 13474286。
- ^ ジュハー 世界大百科事典 第2版(コトバンク)
- ^ ナスレッディン・ホジャ 世界大百科事典 第2版(コトバンク)
- ^ 中東情勢分析 文化紹介 中東世界のトリックスター (PDF) 濱田聖子、中東協力センターニュース 2007年2/3月号
- ^ 置賜の民話2 置賜文化フォーラム
- ^ さんにょもんばなし 石川県教育センター
- ^ 「信濃の民話」編集委員会編『日本の民話 1 信濃の民話』未來社、1957年6月30日。
- ^ 広報四万十 「ふるさと応援団員からの便り」 幡多のこどもたちに幡多の昔話を (PDF) 四万十市
- ^ 土佐弁 おもしろ万華鏡 弁当の仕事<40> 読売新聞、2007年1月14日
- ^ 福津市市勢要覧 2006 羽ばたけ! 幸福の津から (PDF) 福津市
- ^ (4)かんね話:さがの民話・伝説 読売新聞、2008年8月17日
- ^ “渡嘉敷ペークー (とかしきぺーくー)”. ryukyushimpo.jp. 琉球新報. 2020年9月12日閲覧。
とんち
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/19 05:24 UTC 版)
「一休さん (テレビアニメ)」の記事における「とんち」の解説
このアニメではたびたびとんち勝負や様々な問題のために、一休が頓智(知恵)を使って解決させる。 頓智を働かせるときには、まず胡座をかき両手の人差し指を舐め、その指で側頭部に2回ほど円を描いてから結跏趺坐で座禅し、ポク、ポクという木魚の音をバックに瞑想する。 その後、閃いたときにはチーンという仏鈴の音と共に一休は“これだ!”と目を見開く。何も浮かばない時には一休は瞑想をやめ「だめだ……」と溜息をつく。細部は省略されることもある。 一休以外の者が同じことをする場合は音が変だったりして、失敗したりすることが多い。例えば新右衛門の場合は木桶の底を叩いたような音が、桔梗屋や将軍の場合はたらいに水滴が落ちたような音がする。 とんち勝負の出題時には毎回、出題者が「そもさん(什麼生。宋代の俗語で「さあどうだ」「いかに」)」と問い、回答者が「せっぱ(説破)」と返し、「汝に問う!」で始まる問答が入る。
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「とんち」の例文・使い方・用例・文例
- 彼は服装にむとんちゃくだ
- 彼女は身なりにむとんちゃくだ
- 彼が若死にした理由は健康にまったくむとんちゃくだったことです
- これは日本語の同音異義語を用いたとんちです。
- 彼はとんちのきく男だ。
- 彼女は金銭にむとんちゃくである.
- 彼は服装にはむとんちゃくだ.
- 彼女は衣服にむとんちゃくだ.
- 服装にむとんちゃくな人.
- 頓智(とんち)[知恵]比べ.
- むとんちゃくに, 冷淡に; いいかげんに.
- 彼は名声[金銭, 他人の要求]にはむとんちゃくだ.
- 彼は金のことにむとんちゃくだ.
- 服装にむとんちゃくなこと.
- むとんちゃくなしゃべり方.
- 見事な頓智(とんち).
- 気転, 頓智(とんち).
- 彼がよくもあんなにむとんちゃくでいられるものだとショックを受けた.
- 他人の気持ちに対してそんなにむとんちゃくであってはいけない.
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