「入浴」の際の注意
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/06 15:36 UTC 版)
死海を訪れる観光者の多くは死海の湖面へ自らの体を浮かべる「入浴」(Bathing)を楽しむが、現地の注意看板にもあえて「Swimming」ではなく「Bathing」という言葉が使われていることからもわかる通り、死海での「遊泳」は決して推奨されない行為である。 死海の湖水はあまりにも塩分濃度が高いために人体が浮力を失って溺れる可能性は皆無とされているが、入浴中に誤って湖水を飲み込んでしまった場合、体内のナトリウムバランスが急速に崩壊するばかりでなく、内臓に化学熱傷を引き起こす場合があり、万一湖水が肺に入ってしまうと肺炎に類似した肺機能障害を引き起こして死に至る場合がある。この状態から恢復するには、輸液と利尿剤の積極投与、場合によっては人工透析や酸素吸入などの大がかりな救命救急措置が必要となる。マーゲン・ダビド公社(MDA)の統計によれば、2010年(8月時点)中イスラエル国内で水難事故でMDAの救急車に救護された人は117人で、そのうち23人が死亡しているが、死海での救護者数は21人と地中海沿岸の83人に比べて少ないながらも、ガリラヤ湖(11人)と紅海(2人)を足した数の2倍近い割合の事故者を例年出しており、イスラエル国内では2番目に危険な遊泳地として認知されているほどである。 入浴の際には現地に立てられた複数の言語表記による「安全な入浴」に関する注意看板を熟読し、最低限看板に書かれている事項は順守すべきであるが、他にも死海を複数回訪れている旅行者の間では、入浴に当たっては次のようなことにも注意が必要であると周知されている。 湖岸には鋭く尖った岩や岩塩が多いため、ビーチサンダルなどの履物を必ず履くこと。 身体に切り傷などの外傷がある場合は激痛を伴うことから入浴を避ける。男性の場合、最低でも入浴の二日前からシェービングは控える。 やはり激痛を伴うことから、目や粘膜など皮膚の弱い部分に湖水をかけることは厳禁。 塩分濃度が高すぎるために衣服や水着はしばしば脱色してしまうことから、できるだけ古着や色あせた水着を持参することが望ましい。 女性の場合、痴漢に遭うおそれが高いためヨルダン側からのアクセスは避け、できるだけイスラエル側からアクセスする方が良い。 なお、近年では死海の環境問題の啓発のため、特別な訓練を受けたスイマーが集団遠泳を行うイベントが毎年行われているが、死海の水の誤飲は命の危機に直結することから、一般的な海水浴用水中眼鏡やシュノーケルは使用できず、代わりに特別な構造のシュノーケル付きフルフェイス型水中眼鏡が着用される。それでも塩分濃度の高さから水中眼鏡が肌に触れる部分に裂傷や肌荒れを起こす場合があり、浸透圧の差により水に触れている皮膚から体内の水分が急速に失われていく(この際、皮膚表面に灼熱感を感じる者もいる)ため、30-45分に一度は水中眼鏡を外して水分や食事を取る必要があり、その際にも目や口に死海の水が入らないように細心の注意を払う必要があるなど、死海での水泳は熟練したスイマーが協力した上で十分な支援体制の下で行うことが不可欠で、世界で最も挑戦的かつ過酷な海水浴であるとも認知されている。
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