「元首」に関する議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 12:54 UTC 版)
詳細は「日本の元首」を参照 伝統的な意味での「元首」とは、行政権の長として対外的にその国を代表する者で、君主または大統領などである。しかし日本国憲法では内閣の長は内閣総理大臣だが、主権者は国民であり、「国権の最高機関」は議会で、天皇は一切の政治的権限を持たない。 学説では天皇非元首説(内閣元首説、内閣総理大臣元首説、衆議院議長元首説、元首不在説など)が多数派 だが、天皇元首説も存在する。 日本国憲法制定時に、元首という言葉を使用するよう議論があったが、金森徳次郎憲法担当国務大臣は、「元首は主権者や行政の首長であるという印象を与える」が、象徴という言葉にはそのような悪い連想が無いと答弁した。 元首と申しまする言葉は、常識的に申しますれば、国の所謂主権者であるとか、或いは少なくとも行政の首長であるとか云うような意味でなければ、元首と云う言葉は恐らく意味をなさないものと思っております。だからこの元首と云う言葉を使いまして、縦んばそれに前後の関係で法律学的に色々緻密な説明を加えたり、条文の規定を工夫致しまして、特殊な、意味のない主権者とか行政の首長とか云う、特殊の意味のない言葉なりと制限を致しましても、成る程法律家にはそれで以て満足を得ることが出来ましょうが、(中略)国民はこの憲法に定まって居る天皇の御地位を、必要以上に権力的に考える虞が十分あろうと思います。(中略)象徴と云う言葉には左様な悪い連想がないのであります。 — 1946年(昭和21年)9月11日 貴族院帝国憲法改正案特別委員会、金森徳次郎 国務大臣 答弁 日本国憲法施行後の、国会答弁における政府側答弁には以下があり、天皇は外交的には形式的に国を代表する面を有しているが、元首と呼べるかは元首の定義次第、と述べた。 天皇が元首であるかどうかは、要する元首の定義のいかんに帰する問題であると思います。この点は、先般、衆議院の内閣委員会においても私申し上げたところでございますが、かつてのように、元首とは内治外交のすべてを通じて国を代表して、行政権を掌握する存在であるという定義によりまするならば、現在の憲法のもとにおきましては天皇は元首ではないということになりますが、今日では、実質的な国家統治の大権を持たなくても、国家におけるいわゆるヘッドの地位にある者を元首とするような見解も有力になってきております。この定義によりまするならば、天皇は、現憲法下においても元首であると言って差しつかえないと存じます。 — 1973年(昭和48年)6月28日 参議院内閣委員会、政府委員・吉國一郎内閣法制局長官答弁 内治、外交のすべてを通じて国を代表し行政権を掌握している存在である、こういう定義によりますならば、現行憲法のもとにおきまして天皇は元首ではないというふうに申し上げたわけであります。と同時に、先ほど元首に関連をして、天皇はごく一部ではございますけれども外交関係において国を代表する面を有するということを申し上げたわけでございますが、憲法七条におきましてはその第九号におきまして「外国の大使及び公使を接受すること。」と規定されておるわけであります。天皇はこの規定により、したがいまして内閣の助言と承認に基づいてでございますが、国事行為として、我が国に駐在するために派遣される外国の大使、公使の接受をされているのでございますが、これは、外交面において形式的儀礼的にではございますけれども国を代表する面を有しているというふうに解されるわけであります。 — 1988年(昭和63年)10月11日 参議院内閣委員会、政府委員・大出峻郎 内閣法制局 答弁 2012年の自由民主党の改憲草案、2013年の産経新聞の改憲草案が共に「天皇」は「日本国の元首」とする。
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