「不可侵」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/21 20:41 UTC 版)
「大日本帝国憲法第3条」の記事における「「不可侵」」の解説
後段の「侵スヘカラス」の主体は、広義の「国民」であり、国民に対して、天皇の不可侵性を守ることを義務付けている。仮に「侵スヘカラス」を、天皇を主体とする文意(天皇の性格として、その不可侵性を確認する文意)とした場合、前段の「神聖」と同義の文意になり、法律として不自然な同義反復的文章になってしまう。 天皇の不可侵性については、以下の4点に大別できる。 皇位の不可侵 帝国憲法は皇位の世襲による継承を定めており(第2条)、統治権も当然これとともに継承される(第1条)。よって、皇位およびその継承は国体の中心構造であり、これの干犯は厳に禁じられなければならず、道鏡事件や大逆事件のごとき皇位への干渉に適用されうる。 大権(統治権)の不可侵 帝国憲法は第4条以降に天皇の統治権の条項を設けているが、これは単に憲法制定時に新たに定めたものではなく、近代以前から天皇が保有していた歴史的、社会的なものであるから、これを干犯した場合、現在の権力機構(明治政府)の安定性のみならず、日本の社会の安定性(君民共治)が根本から覆される恐れがある。 天皇の身体(玉体)の不可侵 「天皇の神聖」に対する不可侵であるから、当然、天皇本人の一身上への干犯も禁じられる。 天皇の尊厳の不可侵 前3項に加え、より広範な「天皇」の概念に対する干犯も、法理として、認められない。これは、天皇本人に限らず、その尊厳に影響・関連するもの、例えば皇室に直接関係ある諸事項に関わってくる。 帝国憲法では「輔弼」の制度があり、天皇が統治権を行使するにあたり、国務大臣や宮内大臣にはこれを輔弼し、天皇の統治権の行使が国家のために有益な結果をもたらすようこれを助けることが義務付けられていた。そして、統治権の行使についての結果責任は、輔弼者が輔弼をあやまった自己の行為に対する責任として追うことになっており、これによって、天皇の法的不可侵(無答責)が制度的に保障されていた。 また、天皇および皇室が国民と直接利害相反関係に立つことは本義上あり得ないことであることから、例えば御料の所有権などを巡って民事訴訟が起こされる場合は、輔弼者たる宮内大臣が直接的な当事者として告訴の対象者となった。
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