「ムタワーティル」格ハディースのみの限定的な適用
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「ハディース批判」の記事における「「ムタワーティル」格ハディースのみの限定的な適用」の解説
M.O. Farooqによれば、サヒーフのハディースがムハンマドの言葉を「確実に知ることができる」というのは真実ではないが、サヒーフの中にはそのような知識を提供することができる部分もあり、それは非常に稀な「ムタワーティル」格のハディースであるとする。ムタワーティルとは、「多数の伝承者が、虚偽に同意することはあり得ない」との前提を元に成り立つものである。この条件は、伝承経路の最初から最後までの一連の鎖の中で満たされなければならない(ムタワーティル・スンナには、礼拝やハッジ巡礼の儀礼が含まれ、「クルアーン全体がムタワーティルであると認められている」ほか、少数のムタワーティル・ハディースがある)。 しかし、ムタワーティルのハディースは、上記のようなありえない矛盾したハディースを除外し、ムハンマドに従い、模倣せよというクルアーンの命令を満たすかもしれないが、何世紀にもわたりムスリムが発展させたイスラム法学の基礎として適用できるものではない(ムタワーティル格としての基準を満たすハディースの数については学者間でも意見が分かれるが、ムタワーティル・ビル・ラフズ・ハディースと呼ばれる、同じ意味合いを持つ言葉ではなく、同じ言葉で語り継がれるムタワーティルの数は、わずか12個未満と考えられている)。ワーイル・ハッラークによると、「伝統主義者が扱い、法学者がそれに基づいて法律を導き出したハディースの大部分」は、「アーハード」、すなわち非ムタワーティル・ハディースとして知られている。それは「捏造に加担する可能性を排除するために、十分な数の同一本文を持つ伝承経路」のないハディースである。これらのハディースの信憑性は「その可能性がある」だけであって、確実ではない。 一つのハディースがムタワーティル格としての条件を満たすためには、どのくらいの伝承経路が必要かについて、法学者の間では意見が分かれていた。「イスラム法廷におけるカーディは、判決を下す前に4人の証人による証言を審議し、彼らの道徳的な公正さを審査しなければならない」ことから、最低でも5人とする意見もあったが、「12、20、40、70、313」とする意見もあり、それぞれの数字はクルアーンの章句などの宗教的説明により正当化される。 Farooqはムタワーティルを高く評価する多くの資料を引用している。 ムスリムの学者たちの見解では、ムタワーティル・ハディースにより、伝承者が直接的に、明確かつ合理的に混じりけのない認識に基づいて報告したものは、確実な知識を生み出す。 ムタワーティルな伝承とは、ムスリムの第一世代から第三世代までの、捏造の可能性を完全に排除することのできる多くの信頼できる伝承者たちによって伝えられてきたものである。 ムタワーティルなハディースは、クルアーンそのものと同等の権威がある。 大多数のイスラム法学者(ウラマー)によれば、ムタワーティル・ハディースの権威は、クルアーンの権威と同等である。普遍的で継続的な証言(tawatur)は確実性(yaqin)を生み、それが生み出す知識は感覚的に得られる知識と同等である。 大多数のイスラム神学者(usuuliyyun)は、ムタワーティルは必要な知識または即時的な知識(daruri)をもたらすという見解を支持していたが、少数派はそのような報告書に含まれる情報は仲介的または後天的な知識(muktasab または nazari)によって知ることができると考えていた。 伝統派ハディース学者(ワーイル・ハッラークやIbn al-Salahなど)は、これに反対し、ムタワーティルではないハディースを適切なものとしている。「スンナ派の4大法学派の法学者(ウラマー)の大多数は、たとえアーハード・ハディースが正当な知識を生み出さないものであっても、アーハード・ハディースに基づいて行動することを義務づける。このように、現実的な法律問題においては、肯定的な推測(zann)は「義務の根拠として十分である」とMohammad Hashim Kamal は言う(ただし「信仰の問題」においては、そのハードルはより高く、アーハード・ハディースでは不十分とされる)。ムタワーティル格ハディースが稀であることから、後世の最も著名な伝統主義者の一人であるIbn al-Salah(1245年没)は、(Farooqによれば)、ムタワーティル格のハディースは稀であるため、「イスラームの実践の多くでは、確実な知識は実現可能でも必要でもない。むしろ、確率的、あるいは合理的な知識があれば十分である」としている。
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