花火
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/03 23:51 UTC 版)
花火の種類
花火(広義の煙火)は、打揚花火や仕掛花火など「がん具煙火以外の煙火」と「がん具煙火」に大別できる[4]。
- がん具煙火以外の煙火
- がん具煙火(おもちゃ花火)
消費方法による分類
信号又は観賞用の煙火は消費方法によって打揚煙火(打上花火、打揚花火)と仕掛煙火(仕掛花火)に分類される[4]。
打上花火(打揚花火)
火薬を球状に成形した「星」を詰めた紙製の球体「玉」(煙火玉)を打ち上げる花火である。上方を向いた円筒の底に発射薬を敷きその上に玉を置き打ち上げに備える。打ち揚げは「投げ込み」と呼ぶ火種を円筒上方の射出口から投げ入れて発射薬に点火する。打ち上げと同時に玉から出ている導火線に引火し、玉は所定の高さまで上昇しながら導火線が燃え玉内部の割火薬に到達し玉が破裂し星に引火・飛散する。玉の大きさ(花火の高さ)によって発射薬の量と導火線の長さが調整・選定される。玉の破裂後、星には光の尾を引きながら燃焼するもの、落下途中で破裂するもの、色が変化するものなど、様々なタイプがある。玉の内部に星を均一に詰めることが重要であるが、詳細な技術は花火師の秘伝とされる。
仕掛花火
複数の花火を利用するなど作為的に仕掛けを施した花火。
- スターマイン(速射連発)[4]
- 枠仕掛[4]
- 綱仕掛[4](ナイアガラ)
- 速火線で連結した焔管を数から数十メートルに渡り一列に吊し、点火によって焔管から火の粉が一斉に流れ落ちるもの。一部花火大会では2000mに及ぶものも存在する。ナイアガラ滝から。
- 水中仕掛[4]
- 立火仕掛[4]
- 星や火の粉を筒から放出・噴出させるもの[4]。手持ちや抱えたまま噴出させるものは「手筒」という。
- 車花火[4]
- 円盤等の周りに火薬を詰めた筒を配置し、火薬の噴射推進力により円盤を回転させ、火の粉を円状に噴出させるもの。
-
ナイアガラ(綱仕掛) ドイツのデュースブルク市、2004年
-
スターマイン
構造性能による分類
信号又は観賞用の煙火は構造や性能によって煙火玉(花火玉)と煙火玉以外の煙火に分類される[4]。
煙火玉(花火玉)
打上花火の主流は、打ち上げ時に光が同心円状に広がるものが多く、玉そのものの形も球形をしている。これに対し、初期の花火は打ち揚げても円状にはならず、花火そのものの形も円筒形のものが多かった。円筒形の花火は、球形に比べ、火薬量などを増やすことができ、華やかな光や色を出すことが可能であるが、破裂途中で色の変化をさせることは困難だとされる。かつて、日本の花火も同心円状に広がるものの製造は困難で、一部の武家花火師のみの秘伝とされていたと言われるが、明治期に鍵屋十二代目弥兵衛が技術を取得し、以後、円形の花火が多く作られるようになったとされる。
伝統的に打上花火の「玉」の大きさは寸、尺で表される。直径約6.06cmの二寸玉(2号玉)から直径約60.6cmの二尺玉(20号玉)、さらに三尺玉(30号玉)、四尺玉(40号玉)まである。二尺玉は直径約500m程度、世界最大といわれている四尺玉は直径約800m程度まで広がる。ただし、この号数表記は打ち揚げ筒(内側)の太さであって、実際の花火玉の直径はこれよりも若干小さくなる。具体的には、20号玉の直径は60cmではなく約57cmである。また、最近[いつ?]開発された世界最小の打ち上げ花火は、玉の直径1cm、打ちあげる距離は2m。ただし、まだ開発段階のため、実用化。
『世界の果てまでイッテQ!』の企画で、開花時の直径が推定1kmになる花火玉(四尺三寸大千輪)を作り、打ち揚げた。しかし、花火玉自体が重過ぎたために上昇せず水中で爆発、失敗に終わった。
煙火玉(花火玉)は割物とぽか物に分類される[4]。
- 割物
- ぽか物
- 空中でくす玉のように割れて部品が飛び出るもの。
- 音物
- 俗に「のろし」「合図花火」等と呼ばれているもの。運動会など様々なイベントの開催の合図に使用されている。3回連続で音が鳴る「3段雷」と5回鳴る「5段雷」が主に使われている。
- 袋物・吊物など
- 和紙など薄紙で袋状に作った人形や、パラシュートに吊った煙玉・旗などがゆっくりと落ちてくる昼花火。特定条件下以外の打ち上げが禁止されている。「袋物」は花火師の平山甚太が1883年にアメリカで特許を取得しているが、これが日本人がアメリカで取得した初の特許である[6]。
代表的な打上花火である「割物」の鑑賞のポイントとして以下のようなものがある。
- 玉の座りがしっかりしているか。玉が昇りつめた点で開いていることを「玉の座りがしっかりしている」という。きれいに広がるための重要なポイントである。
- 盆が取れているか。星が盆のように真ん丸に見えているか。
- 消え口が揃っているか。星の色が一斉に変化し、一斉に消えているかである。ただし、わざと消え口をずらしている花火もある。
- 星がまんべんなく広がり、歯抜けになっていないか。
- 星の発色が良く、はっきりとした色が出ているか。さらに、星をどのように配色するかは花火師の個性が発揮される重要なポイントである。
煙火玉はスターマインなどの仕掛花火にも用いる[4]。
煙火玉(花火玉)以外の煙火
流星(龍勢)のように星を打ち出すロケット花火や、火の粉等を噴出させる手筒花火などである[4][7]。
おもちゃ花火
かつては玩具花火とも呼ばれたが、日本煙火協会での表記はこちらに統一されている[注 1]。購入や使用に免許が不要な花火の総称で、線香花火のような手で持つものが代表的なものであるが、小型ではあっても打上花火になっていて、筒があって上空で破裂するものも存在する。日本では日本煙火協会が出荷品の検査を行っており、合格したものには「SFマーク」がつけられる。
火薬量の制限は、花火の種類により異なるが、最高でも15グラム以下となっている[8][注 2]。おもちゃ花火であっても、束ねて使う場合はおもちゃ花火とは見なされず、煙火(届出・免許が必要な花火)としての届出が必要になる[9][10]。
おもちゃ屋などで単品で発売されることも多いが、大抵は一つの種類の数本入りから複数種類の花火100本くらいを詰め合わせにしたものが、晩春から初秋にかけてスーパーマーケットやホームセンター、駄菓子屋などで売られている。
帰省や旅行の際、旅先で使うために出発前に購入したり、使い切れなかった花火を自宅に持ち帰ったりすることがあるが、花火を携行して交通機関を利用する場合、持ち込みに禁止や制限があるので注意を要する。航空機を利用して旅行する場合、安全上の理由から少量であっても機内への持込みも受託手荷物の取り扱いも出来ない[11][12]。列車・バスを利用する場合、少量の持ち込みはできるが、持ち込める量に制限がある[注 3]。また、宅配便での発送はできない[15][16]。
- ヘビ花火
- 火薬量5グラム以下[5][8]。「ヘビ玉(法令上は「へび玉」)」ともいい、地方によって名称の違いあり。色は黒。
- 後述のネズミ花火と同じく、生物名が付いた花火として知られる。
- 円形の炭状の火薬に火を点けると煙と共に燃えカスがヘビのような形状に伸びていく構造の花火。普通の花火とは異なり、色鮮やかな色の火花は出ず、煙しか出ない。このため、昼花火の一種に入れられることもある。
- ネズミ花火
- 火薬量1グラム以下。または、火薬量0.9グラム以下かつ爆薬0.1グラム以下[8]。炎を吹き出すタイプのひも状の花火を、円形に組んだもの。1929年創業の筒井時正玩具花火製造所の初代・筒井時正が考案[17][18][19]。火を点けて炎が吹き出すと重心に対して回転を与える向きの力がかかるため、地面に置かれた場合、高速に回転してその勢いで地面をはい回る。円形の炎がシュシュッと音を立ててはい回る様がネズミに喩えられたためにこの名がある。最後にパンとはじけるような仕掛けを施されたものが一般的。最近[いつ?]は使い方が分からない人が多く、やけどをする人も珍しくないようである。
- コマ花火
- ネズミ花火の応用型で、本体が独楽(こま)状になっている。ネズミ花火よりも高速に回転できるため、うなるような音を立てて地面上で回転する。
- トンボ花火
- コマ花火の応用系。双方向に噴射する本体の花火筒に二枚の紙羽根が付いており、表面を上にして平らな場所に置いて打ち上げる。二か所からの噴射力によって高速回転を行い、風を受けた紙羽根によって揚力を得て高速で錐揉み上昇する。上昇時に二段階で急上昇する特徴がある。日中でも使えるため、昼花火の一種に入れられることもある。
- UFO花火
- トンボ花火からの派生花火。扇風機の様な小型のフィンがついているため回転と同時にフィンに風を受け上昇する。平らな所に置かないと予想しない方向に飛んだりするので、注意が必要。日中でも使えるものもあり、昼花火の一種に入れられることもある。
- 線香花火
- 火薬量は法律によれば0.5グラム以下[5][8]とされているが、実際には0.06 - 0.08グラム程度である。こよりや細い竹ひごの先端に火薬を付けた花火。日本の夏の情緒を代表する花火である。火を付けると火薬が丸くなり、小さな火花を散らすようになる。燃え方に様々な名前が付いている。現在[いつ?]でも開発が行われている。最も長く安定させて燃えさせるには45度の角度に傾けた方が良いとも言われている。
- ロケット花火
- 火薬量0.5グラム以下かつ爆薬(笛音薬)2グラム以下[5][8]。打ち揚げ式の花火。瓶などを発射台にする。打ち揚げ後破裂するものと破裂しないもの、曳光の有るもの無いものがある。破裂しない物の場合は打ち揚げ時の大きな音を出すように改良されているものが多い。燃えカスが回収できないという問題があるため、海岸での使用を禁止している自治体も存在する。
- こうもり花火
- 基本的にはロケット花火と変わらないが、コウモリのような羽がついており、真上に急上昇、柄が無いなどの特徴がある。地方によって名称の違いあり。
- 単発打上げ
- 火薬量10グラム以下[5][8]。一般的な打上花火。筒物で数個または1個の星を1回打ち上げる。筒状の容器に火薬を仕込んであるが、一部は業務用の打上花火同様に、球形の丸玉に火薬を仕込んだ製品もある。
- 連発打上げ
- 火薬量15グラム以下[5][8]。「乱玉」とも。筒物(筒の内径1㎝以下)で、火を付けると複数の星が間欠的に飛び出す。筒1本あたり、5連発から30連発程度まである。発数が多い製品は、複数の筒が最初から仕込まれていて、総数で70連発程度まで実現している。
- パラシュート花火(袋物)
- 火薬量10グラム以下[5][8]。打上花火の一種で、昼花火の一種でもある。法令上は単発打上げと同一の扱い。上空で破裂した玉の中に袋が入っており、万国旗やパラシュートが降りてくる仕組み。おもちゃ花火で小さなものが若干生産されている。1931年に細谷火工(創業1906年。1990年にホソヤエンタープライズの名で花火部門が独立[20])によって製造されたものが始まりとされる。電線にひっかかるなどの障害が生じるため、打ち上げの際には注意が必要。
- 噴出花火
- 火薬量15グラム以下[5][8]。紙製の筒から火花を噴水のように吹き上げるもの。かつて一世を風靡した太田煙火製作所の「ドラゴン」が代表的な製品である[21][22]。地面に置いて、導火線に点火して使う。手持ち用として小パイプほどの太さに改良されたものもあり、後述のススキに似る。
- ススキ(より物)
- 火薬量10グラム以下[5]。手持ち用。竹ひご・針金などの持ち手に、火花の出る紙製の筒を取り付けた物。「朝顔」など、地方によって名称の違いがある。
- 銀波(より物)
- 火薬量10グラム以下[5]。手持ちまたは吊り下げ用。糸に、火花の出る紙製の筒をぶら下げた物。複数個の銀波を、あらかじめ用意した台などに吊り下げて同時に点火することで、擬似的にナイアガラ花火を再現できる。このため、複数個セットが「ナイアガラ」などの名称で市販されている。
- スパークラー(ねり物)
- 火薬量10グラム以下。または、鉄粉を30%以上含んでいる火薬量15グラム以下[5]。手持ち用。竹ひご・針金などの持ち手に、火薬を直接塗り込んだもの。
- 絵型
- 火薬量10グラム以下[5]。手持ち用。厚紙製の持ち手に、パイプを取り付け、火薬を詰め込んだもので、パイプの先に点火して使う。パイプはプラスチック製のものが多いが、環境問題から紙製のものも増えている。
- 爆竹
- 1本で火薬量1グラム以下かつ爆薬0.05グラム以下。また、20連発以下の制限もある[5][8]。長さ数センチの小型の花火。多くの場合複数の爆竹が導火線によって結びつけられており連続して爆発するようになっている。花火としての歴史は古く、もっとも古い種類の花火とする説もある。中国系文化圏では、旧正月などを祝うために使われる。別名、ダイナマイト。
- クラッカー
- 爆薬量0.05グラム以下[5][8]。長さ10cm程度の小型花火。発破同様、音を楽しむ花火であるが発破とは異なり単体で使用する。導火線は無く、代わりに筒の先端に有る火薬が導火線の役目を果たしている。点火後5秒程度で破裂する。
- 煙花火(煙玉)
- 火薬量15グラム以下[5][8]。球体をしたもの(玉の色はさまざま)。花火の一種。火をつけるとその名のとおり煙を吹く。殆どが色の付いた煙を出す。もっぱら花火の使われ方より、その特性から悪戯などに使われるのが非常に多い。地方によって名称の違いあり。
- 癇癪玉(かんしゃくだま)
- 爆薬量0.08グラム以下。また、直径1センチメートル以下、総重量1グラム以下の制限もある[5]。踏んだり、物に当てたりすると音がなる。パチンコなどで飛ばすことが多い。クラッカーボールと呼ぶ場合もある。
- これを大型化したものが、異常時に線路上にセットし、列車が通過すると爆音を発して緊急停止を促す信号雷管である。
- 紙火薬
- 「平玉」は爆薬量0.01グラム以下。また、一粒の直径4.5ミリメートル以下、高さ1ミリメートル以下の制限もある。「巻玉」は爆薬量0.004グラム以下で、なおかつ一粒の直径3.7ミリメートル以下、高さ0.7ミリメートル以下[5][8]。遊戯銃、あるいは陸上競技のスタート用のピストルなどに使用され、火薬部分に打撃が加わると発火し、火花と破裂音を放つ。小粒な火薬を赤い巻紙に等間隔で配置したものを巻玉火薬、ミシン目の入った赤色または黄色のシートにやや大きめの火薬を配置したものを平玉火薬と呼ぶ。大量にまとめて使われる危険性があるため、後述のキャップ火薬の普及により淘汰されつつある。
- キャップ火薬
- 主に遊戯銃に使用される、プラスチック製のキャップに紙火薬同様の火薬を詰めたもの。過剰装てんなどのおそれがなく、紙火薬より取り扱いが容易かつ発火も確実である。特にモデルガンに使用されるものは、作動を確実にするために厳密に調整されており、価格も高い。種類は、直径5mmと7mmの2種類ある。
注釈
- ^ 火薬類取締法、および火薬類取締法施行規則では「がん具煙火」と表記する。
- ^ 火薬類取締法施行規則で、広義のおもちゃ花火である「緊急保安炎筒」(発炎筒)、「模型ロケットに用いられる噴射推進器」、「内容物盗用防止装置付きかばんに用いられる発煙火工品」は、これより多量の火薬使用が認められている。最も火薬を使えるのは、発炎筒の150グラムである。
- ^ たとえばJR東海では、旅客営業規則にて列車に持ち込めない危険品を定めており、適用除外の物品に「がん具煙火、競技用紙雷管及びその他のがん具用軽火工品で、容器・荷造ともの重量が1キログラム以内のもの。」とあり、これを上回る量は持ち込めない[13]。他の鉄道事業者でも類似する規則をそれぞれ定めている。バスの場合は、旅客自動車運送事業運輸規則により100グラムを超える量の持ち込みを禁じている[14]。
- ^ “打ち上がって、花が開き、それが落ちていくまで「たーーーまやーーー」と声を出し続けるのが本寸法だと言い伝えられている。享保18年(1733年)の両国での花火大会はわずか二十発程度だったという”[33]。
出典
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