楽天銀行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/17 22:36 UTC 版)
概要
2000年にネット銀行「eBANK」設立のため日本電子決済企画株式会社が設立され、大蔵官僚で元財務官の行天豊雄や、日本長期信用銀行出身の日本電子決済企画代表取締役社長松尾泰一、同じく長銀出身の社会基盤研究所社長平尾光司が出席し、「イーバンク銀行」設立構想記者説明会が開かれ[6]、2001年に国内で2番目のネット銀行として誕生した。開業時より同行間の振込手数料が無料が特徴である。元はイーバンクという名称であったが、楽天に買収後に改名した。
2021年3月31日現在、国内のネット銀行では最多の1052万口座が開設されている[5]。2023年4月21日には、東京証券取引所プライムに上場を果たした[7]。ネット銀行の上場は、東証スタンダードに上場した住信SBIネット銀行に次ぐ2例目である(プライム市場では初めて)。
歴史
イーバンク銀行設立の経緯と特色
2000年(平成12年)1月14日に、銀行設立を目的とした日本電子決済企画株式会社として設立。銀行免許の予備審査が終了した2001年(平成13年)6月15日に、イーバンク銀行株式会社に商号変更し、銀行免許を取得した2001年(平成13年)7月23日から営業を開始。発足当時のパートナー企業として新生銀行やエイベックス等の同業も問わず各種の企業も名前があった。電子ネットワーク決済を業務の中核とした銀行であり、融資業務がなかった(個人向けローン業務は、2009年(平成21年)4月より開始された)など、従来の銀行とは大きく異なっている。
2005年(平成17年)11月から販売開始した投資信託(機関投資家向けのヘッジファンドを小口化した「イーバンク・ヘッジファンドe501」といったユニークな独自商品も発売)では人気ファンドをノーロード販売、2006年(平成18年)12月から開始した国内最低水準の為替手数料による外貨普通預金など、ネット銀行の低コスト体質を生かした商品展開を行っている。
2006年(平成18年)、国内のインターネット銀行として初めて、ビザ・インターナショナルの「プリンシパルメンバー」を取得した[8]。これを利用し、「イーバンクマネーカード」(現「楽天銀行デビットカード」)の発行受付を開始した。このカードに関わる業務の一部をユーシーカードへ業務委託している。
他社との提携
エッジ(ライブドア)
2003年(平成15年)10月に、エッジ株式会社(2004年(平成16年)2月に株式会社ライブドアに改称)と提携し、同社が約35億円を出資して、筆頭株主となる。エッジは、筆頭株主として12人のファイナンス担当社員を出向させたが、企業文化の違いもあり、投資先などを巡り、イーバンクに従来からいた経営陣などと対立。12月に、イーバンクが出向を断る書面や出資契約無効を主張する書面を送付したのを始め、社外取締役の辞任、特別背任罪や信用毀損罪で双方が刑事告訴[9]、脅迫とも言われた電話内容のネット上での公開などが行われ、関係は泥沼化した[10]。これらのことがあり、2004年(平成16年)10月22日に、ライブドア(旧・エッジ)が株式を第三者に売却して、提携を解消することで、両社は和解した[11]。
GMO
上記ライブドアとの紛争中の2004年(平成16年)9月30日に、イーバンク銀行が、グローバルメディアオンライン(GMO)に対して第三者割当増資を行い、GMOは株式の4.8%を保有するようになる。
2006年(平成18年)には、GMOインターネット(当時は出資比率6.45%の筆頭株主)及びオリエント信販株式会社(当時はGMO子会社。後のネットカード)と、インターネット金融事業における関係強化を目的とした資本・業務提携を発表した。2007年(平成19年)9月、GMOインターネットが所有する株式が譲渡されたが、業務協力は継続している。
西日本シティ銀行
当初、金融機関相互のネットワークである全国銀行データ通信システム(全銀ネット)に加盟していなかったため、イーバンク銀行相互以外の送金・入出金は大きく制限され、口座振替にも使えなかった。しかし、2006年(平成18年)1月に全銀ネットに加盟し、それにともなって他行から同社口座を直接指定した振込ができるようになっている。全銀ネット加盟の準備として、2005年(平成17年)9月、支店と支店コードが割り振られた。
2005年(平成17年)9月16日に、西日本シティ銀行と包括的な業務提携を行うことで合意した。当時のイーバンク銀行は日本銀行との当座預金取引を有していないが、提携の一環として、全銀ネットにより行う同社の内国為替取引の資金決済については西日本シティ銀行へ委託している(同社2006年3月期決算短信による)。西日本シティ銀行の関連会社である、九州カード発行のクレジットカードと一体型のキャッシュカード(#イーバンクカードジョーヌ)の発行もされている。
2007年(平成19年)11月26日および12月1日に、一部手数料が改定された。
後に、NCBダイレクト利用者を対象とし、楽天競馬や宝くじの購入などを利用できるサービスを提供する、楽天銀行NCB支店のサービスを開始している。
楽天グループ入り、楽天銀行へ商号変更
2008年(平成20年)8月4日に、楽天株式会社との資本・業務提携を合意し[12]、9月4日に発表された。
2008年(平成20年)9月29日に、楽天はイーバンク銀行が行う優先株による第三者割当増資(66万6000株)を引き受け、199億8000万円を出資した[13][14]。同時に、楽天の國重惇史副社長がイーバンク銀行社長に就任した。それまでの社長(初代社長)の松尾泰一は、取締役副会長執行役員となった[15][16](2009年(平成21年)3月31日付で、取締役辞任[17]。)。
2009年(平成21年)2月10日に、楽天は、優先株式をすべて普通株式に転換し、出資比率が46.39%(議決権で48.69%)となり、イーバンク銀行を連結子会社化した[18]。
2009年(平成21年)2月23日、東京都民銀行から事業譲受し、同行楽天支店の預金・顧客を譲り受けた[19]。これに伴い、都民銀行楽天支店利用者でかつ既存のイーバンク利用者については既存イーバンク口座に統合、譲受に伴いイーバンクを新たに利用する都民銀行楽天支店顧客については、自動的に口座開設手続きをイーバンク側が行う形を取った。
その後、2009年(平成21年)3月19日に、イーバンク銀行が楽天に対して第三者割当増資(33万3000株、99億9000万円)を実施し、楽天の出資比率は56.48%になった。さらに、4月1日には、楽天子会社の楽天クレジットがカードローン事業について、イーバンク銀行を承継会社とする吸収型会社分割を実施し、楽天がイーバンク銀行の株式57万9735株を取得し[注 1]、67.22%となっている[20]。
2009年(平成21年)6月4日に、「楽天銀行株式会社」への商号変更と、本店を楽天本社所在地へ移転する計画が発表され[21][22][23][24]、6月29日の定時株主総会で承認された。本店移転は、当初の予定どおり、7月21日に実施された。2010年(平成22年)3月19日から4月30日にかけて、楽天株式会社による普通株式および新株予約権の株式公開買付け (TOB) がなされ[25][26]、楽天株式会社の出資比率は91.93%となる。そして、金融庁長官の許可を得て、2010年(平成22年)5月4日に商号変更がなされた[21][22][23]。2010年(平成22年)10月15日に、簡易株式交換を行い[27]、楽天株式会社の完全子会社となっている[28]。
2022年(令和4年)7月に東京証券取引所に上場する方向で手続きを開始したと発表した[29]。当初は年内に手続きが完了し、同取引所に上場する予定としていたが、同年12月に年内上場を断念することを発表した[30]。その後、2023年(令和5年)3月22日に同証券取引所から新規上場を承認され、同年4月21日にプライム市場に上場した[31]。株式を売り出した結果、2023年6月30日現在、楽天グループの所有株式数の割合は63.33%となっている[32]。
沿革
- 2000年(平成12年)1月 - 東京都千代田区内幸町一丁目1番7号に日本電子決済企画株式会社(資本金4億円)を設立。
- 2001年(平成13年)
- 3月 - 銀行業免許取得への予備審査申請。
- 6月 - 銀行業免許予備審査終了。商号をイーバンク銀行株式会社に変更。
- 7月 - 銀行業免許を取得、開業。
- 2002年(平成14年)4月 - モバイルバンキングサービスを開始。
- 2004年(平成16年)9月 - イーバンク銀行キャッシュカードを発行。
- 2006年(平成18年)
- 1月 - 全国銀行データ通信システム(全銀ネット)に直接接続。
- 5月 - マルチペイメントネットワーク(Pay-easy)に接続。
- 2008年(平成20年)9月 - 楽天と資本・業務提携。
- 2009年(平成21年)
- 2月 - 楽天の子会社となる。
- 7月21日 - 本店を東京都品川区東品川四丁目12番3号に移転。
- 2010年(平成22年)
- 5月 - 商号を楽天銀行株式会社に変更。
- 10月 - 楽天の完全子会社となる。
- 2015年(平成27年)
- 2019年(平成31年)4月 - 楽天グループの再編により楽天銀行株式会社の株式が楽天株式会社から楽天カード株式会社に継承される[33]。
- 2020年(令和2年)7月6日 - 東京都港区のNBF品川タワーへ本店を移転した[34]。
- 2022年(令和4年)4月 - 楽天銀行株式会社の株式が楽天カード株式会社から楽天グループ株式会社に継承される。
- 2023年(令和5年)
- 4月21日 - 東京証券取引所プライム市場に上場[31]。
- 第一生命保険の顧客を対象とした、第一生命支店を開設。
- 2024年(令和6年)
- 4月頃 - ビューカードを銀行代理店としてJRE POINT利用者を対象とした、JRE BANKのサービスを開始予定。
注釈
出典
- ^ ディスクロージャー誌内2021年ディスクロージャー誌「会社概要」編 - 楽天銀行株式会社
- ^ 会社概要 | 会社情報 | 楽天銀行について | 楽天銀行
- ^ a b 2021年3月期決算短信 (PDF) - 楽天銀行 2021年5月13日
- ^ 銀行コード・支店名・支店番号一覧 - 楽天銀行
- ^ a b 口座数・預金残高の推移 - 楽天銀行
- ^ “日本電子決済企画、少額決済専用のネット銀行『eBANK』(イーバンク銀行)のサービスを2001年初頭から開始”. ASCII.jp (2000年4月25日). 2020年6月13日閲覧。
- ^ 日本放送協会. “楽天銀行が東京証券取引所に株式上場 700億円余り調達 | NHK”. NHKニュース. 2023年5月4日閲覧。
- ^ 世界No.1カード「VISA」のプリンシパルメンバーに イーバンク銀行 2006年(平成18年)4月18日
- ^ イーバンク、ライブドア堀江社長を刑事告訴 ITmediaニュース 2004年(平成16年)4月13日
- ^ 泥沼化した「イーバンク・ライブドア論争」~双方の言い分 ITmediaライフスタイル 2004年(平成16年)2月18日
- ^ ライブドアとイーバンクが和解 ITmediaニュース 2004年(平成16年)10月22日
- ^ 楽天がイーバンクに200億円出資へ ITmedia ニュース 2008年(平成20年)8月4日
- ^ 楽天、イーバンクに200億円出資 ITmedia ニュース 2008年(平成20年)9月6日
- ^ 株主割当増資及び第三者割当増資の完了及び主要株主の異動に関するお知らせ (PDF) - イーバンク銀行 2008年(平成20年)9月29日
- ^ イーバンク銀、新社長に楽天の国重副社長 asahi.com
- ^ 代表取締役の異動に関するお知らせ (PDF) - イーバンク銀行 2008年9月29日
- ^ 役員人事に関するお知らせ (PDF) - イーバンク 2009年(平成21年)2月13日
- ^ イーバンク銀行株式会社の連結子会社化について 楽天株式会社 2009年(平成21年)2月10日
- ^ 東京都民銀行楽天支店の事業譲受について イーバンク銀行 2008年(平成20年)11月14日
- ^ 楽天、イーバンクへの出資比率67%超に NIKKEI NET 2009年(平成21年)2月13日
- ^ a b イーバンク銀行、「楽天銀行」に商号変更へ NIKKEI NET(日本経済新聞)2009年(平成21年)6月4日
- ^ a b イーバンク銀行、「楽天銀行」に商号変更へ Yomiuri Online(読売新聞)2009年(平成21年)6月4日
- ^ a b 商号変更及び本店移転に関するお知らせ (PDF) - イーバンク銀行プレスリリース 2009年(平成21年)6月4日
- ^ 商号変更及び本店移転に関するお知らせ (PDF) - イーバンク銀行 2009年(平成21年)6月4日
- ^ 楽天株式会社による当行株券等に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ (PDF) - イーバンク銀行 2010年(平成22年)3月18日
- ^ 楽天株式会社による当行株券等に対する公開買付けの結果に関するお知らせ (PDF) - 楽天銀行 2010年(平成22年)5月6日
- ^ 株式交換による完全子会社化について (PDF) - 楽天銀行 2010年(平成22年)8月19日
- ^ 株式交換による完全子会社化についてのお知らせ (PDF) - 楽天銀行 2010年10月15日
- ^ “楽天G、楽天銀行の新規上場申請を発表”. ロイター通信. (2022年7月4日) 2022年12月22日閲覧。
- ^ “楽天G、銀行年内上場見送り 米S&Pは格付け引き下げ”. 日本経済新聞 (2022年12月21日). 2022年12月22日閲覧。
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- ^ 『イーバンク銀行、人気競艇選手の顔写真をデザインしたキャッシュカードを発行』(プレスリリース)イーバンク銀行株式会社、2006年5月10日 。2020年6月7日閲覧。
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- ^ 『8種類から選べるVISAデビット機能付きキャッシュカード「イーバンクマネーカード」の申込受付を開始』(プレスリリース)イーバンク銀行株式会社、2007年6月8日 。2020年5月26日閲覧。
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- ^ 旧イーバンクマネーカードをご利用の方へ
- ^ “NTTファイナンスとイーバンク、ひかり支店対応「VISAデビットカード」を発行”. RBB TODAY (2009年1月16日). 2020年5月26日閲覧。
- ^ “「ひかり支店」の新規口座開設受付停止のお知らせ”. イーバンク銀行株式会社 (2009年10月27日). 2020年5月26日閲覧。
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- ^ “イーバンク、キャッシュカード一体型クレジットカードでATMに対応”. internet.watch.impress.co.jp. 2020年5月26日閲覧。
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- ^ イーバンク銀行、イオン銀行とのATM提携を開始 イーバンク銀行 2009年(平成21年)11月20日
- ^ a b 楽天銀行、イーネットおよびローソンとのATM提携を、8月23日午前7時より開始 楽天銀行 2010年(平成22年)8月20日
- ^ みずほ銀行とのATM提携を開始 楽天銀行 2014年(平成26年)2月10日
- ^ ステーションATM「Patsat(パッとサッと)」との提携を開始 楽天銀行 2015年(平成27年)3月23日
- ^ 三菱東京UFJ銀行とのATM提携を開始 楽天銀行 2015年(平成27年)4月27日
- ^ 『トランスバリュー信託株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ』(PDF)(プレスリリース)楽天銀行(株)、2014年9月2日 。
- ^ “「楽天信託」に会社名変更 買収の専業会社”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2015年5月24日)
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