不随意運動 不随意運動の概要

不随意運動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/07/16 02:35 UTC 版)

不随意運動
分類及び外部参照情報
ICD-9 333.9
MeSH D009069
プロジェクト:病気Portal:医学と医療
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不随意運動の診察

不随意運動に関して分析を行う場合は以下の点に関して注目する。

どこに出るのか。

全身に分布するのか、半身か、一肢だけか、一つの髄節で支配された筋肉、ひとつの筋肉かといった点に注目する。

いつ出るのか

安静時か、計算や会話などストレス時なのか、姿勢保持時か、運動時かといった点に注目する。

いつ出ないか

どういう時に出ないか、寝ている時に止まるのか、意図的に止められるのかに注目する。

どのように出るか

規則的か不規則か、遅いか速いか、大きいか小さいか、運動のパターンが単純か複雑か。

上記の分析を行うためにビデオ撮影を行うことが多い。また不随意運動を正確に判断するには表面筋電図が用いられる。筋電図の解析によって、筋放電の出現部位、律動性、周波数、持続時間、相反性、同期性などが客観的な数字によってとらえることができる。不随意運動は最初に律動性(周期性がある)なのか非律動性(周期性がない)を判定する。一定のリズムで反復していれば律動性の不随意運動と判定し振戦かミオクローヌスを考える。一方、不随意運動の方向や周期、振幅が不規則ならば舞踏病、バリスム、アテトーゼ、ジスキネジアを考える。非律動性の不随意運動である舞踏病、バリスム、アテトーゼ、ジスキネジアの責任病巣は大脳基底核(尾状核、被殻-淡蒼球-視床下核)である。

運動制御の生理学

大脳皮質大脳基底核小脳が運動制御では重要視される。特にAlexander and Crutcherによる運動ループモデルは多くの不随意運動の解析で有効である。

大脳皮質 

典型的な大脳皮質は組織学的は6層に識別できる。Ⅰ層は分子層、Ⅱ層は外顆粒層、Ⅲ層は外錐体細胞層、Ⅳ層は内顆粒層、Ⅴ層は内錐体細胞層、Ⅵ層は多形細胞層と言われている。一次運動野ではⅣ層の内顆粒層が薄いがⅤ層の内錐体細胞層は厚く、ここにBez巨細胞が認められる。大脳皮質の入出力に関してまとめる。大脳皮質は末梢からの求心性線維の大部分を、視床を介した視床皮質路として受け取る。皮質への入力はそれぞれの皮質領野に対応した視床からⅣ層とⅥ層に終止するがⅣ層が主要なものである。皮質間のやり取りに関与するのは交連線維と連合線維である。交連線維は脳梁を介して左右の半球間を結合し、連合線維は同一半球内の皮質領野間を結合する。大脳皮質から遠心路は原則として第Ⅴ層の錐体細胞に起始する。例外は2つあり一つは皮質から視床への遠心性線維の大部分は第Ⅳ層に起始する。皮質から線条体への投射の一部に第Ⅲ層に起始するものがある。連合線維と交連線維は、主として第Ⅲ層の錐体細胞に始まる。

大脳基底核 

大脳基底核は一般的に尾状核被殻淡蒼球視床下核黒質が含まれる。小脳と異なる点としては大脳基底核には直接感覚入力が入らない点、脊髄に直接投射線維を送っていない点があげられる。淡蒼球は系統発生としては古い。内側髄板で淡蒼球外節(GPe)淡蒼球内節(GPi)に分かれ、それぞれ脳の全く異なった部分と線維連絡をする。尾状核と被殻は系統発生として比較的新しく一括して線条体といわれる。視床下核(STN)と黒質中脳にある。中脳の黒質は背側の緻密層(SNc)と腹側の網様層(SNr)にわかれ淡蒼球と同様に脳の全く異なった部分と連絡している。淡蒼球内節(GPi)と黒質網様層(SNr)は大脳基底核の主たる出力線維を出している点で類似している。

線条体や淡蒼球の腹側にある側坐核(NAS)や嗅球(OT)も基底核に含まれることがある。

Alexander and Crutcherによる運動ループモデル

大脳皮質は直接感覚入力を受けないが大脳皮質感覚野から線条体に感覚入力があり、視床へ投射することによって、視床に入ってきたい感覚運動連関のニューロン発火を調節している。また脊髄に直接投射していないが、皮質脊髄路や赤核脊髄路、網様体脊髄路の活動に影響を与えることができる。大脳基底核は広範囲の大脳皮質からの被殻で入力を受け、視床を通じて同じ領域に線維を送り返している。入力は主として運動野、体性感覚野前頭前野大脳辺縁系からである。大脳基底核の中では多くのループが並走しておりparallel loopとなっている。それぞれ入出力関係のある大脳皮質によって運動ループ、眼球運動ループ、背外側前頭前野ループ、前帯状回ループの4つに分かれる。運動制御に関係するループは運動ループと眼球運動ループである。運動ループと関係する皮質は主として補足運動野や運動前野であり眼球運動ループと関係する皮質は主として補足眼野や前頭眼野である。1990年台Alexander and Crutcherによる運動ループモデルが提唱され、2012年現在でも基底核疾患を理解する上で有用である。

Striatum: 線条体; GPe: 淡蒼球外節; GPi: 淡蒼球内節; STN: 視床下核; SNc: 中脳緻密層; SNr: 黒質網様層

ドーパミンD1受容体およびD2受容体は線条体ニューロンに存在する。ドーパミンD1受容体は興奮性であり、D2受容体は抑制性である。それぞれの線条体ニューロンはGABA作動性である。D1受容体をもつ線条体ニューロンは黒質網様層(SNr)や淡蒼球内節(GPi)に軸索を送っており線条体黒質路といわれる。D2受容体のニューロンは淡蒼球外節(GPe)に軸索を線条体淡蒼球路へ送っている。黒質緻密層(SNc)から黒質線条体路を通じて放出されたドーパミンは、D1受容体を通じて線条体黒質路興奮させ、D2受容体がいかに通じて線条体淡蒼球路を抑制する。D1受容体、D2受容体がいかに活性化されたかの評価でしばしばニューロペプチドを調べることがある。D1受容体ではサブスタンスPやジノルフィンである。D2受容体ではエンケファリンである。これらはGABAとともに産出される。

D1受容体が刺激されると黒質網様層(SNr)や淡蒼球内節(GPi)がGABAによって抑制される。黒質網様層(SNr)と淡蒼球内節(GPi)は視床にGABA作動性ニューロンを送っているため抑制の抑制となり視床は興奮する。視床は大脳皮質に興奮性ニューロンを送っている。ドーパミンD1受容体を介した皮質-線条体-黒質網様層/淡蒼球内節-視床-皮質のループを直接路という。直接路のドーパミン放出によりD1受容体が刺激されると皮質には興奮性の神経伝達物質が増加する。D2受容体が刺激されると線条体淡蒼球路は抑制され、淡蒼球外節(GPe)が抑制される。淡蒼球外節(GPe)は視床下核(STN)にGABA作動性の抑制性のニューロンを黒質網様層(SNr)と淡蒼球内節(GPi)に送っている。ドーパミンD2受容体を介した皮質-線条体-淡蒼球外節-視床下核-黒質網様層/淡蒼球内節-視床-皮質ループを間接路という。間接路は 黒質緻密層(SNc)興奮によるドーパミン放出によりD2受容体が刺激を受けると視床は興奮する。間接路に大脳皮質から線条体へ興奮性の刺激が入力されると視床は抑制され、その結果、大脳皮質も抑制される。

大脳皮質からのグルタミン酸を介した興奮性入力では直接路では抑制性シナプスが2つあるため結局大脳皮質へは興奮性の出力として帰る。間接路としては抑制性シナプスが3つあるので大脳皮質への出力としては抑制となる。運動ループとしては直接路は興奮性、間接路は抑制性である。しかしドーパミン刺激は直接路を賦活化し、間接路を抑制するため全体的として運動を賦活化する。

運動ループモデルの意義

Alexander and Crutcherによる運動ループモデルはMinkにより解剖学的見解から周辺抑制(surround inhibition)という概念に発展した。随意運動で皮質が興奮した場合、直接と間接路ともに刺激される。直接路は黒質網様層/淡蒼球内節の狭い部分を抑制する。最終的に焦点性に皮質を興奮させるがこれは信号と雑音の比を高める作用があると考えられている。間接路は視床下核広範を興奮させ黒質網様層/淡蒼球内節の広い部分を興奮させる。これは皮質の意図した運動以外を抑制させる意味がある。この抑制を周辺抑制という。運動野の興奮によってまずは直接路によって目的の運動が行われ、遅れて間接路によって周辺抑制がかけられると考えられている。また一次運動野から直接視床下核(STN)へいく経路もありこれをハイパー直接路という。ハイパー直接路は広範な抑制をかける作用がある。

運動ループモデルによる不随意運動の解析

Alexander and Crutcherによる運動ループモデルはヒトの基底核疾患による不随意運動をよく説明できる。

パーキンソン症候群

パーキンソン病を含むパーキンソン症候群では黒質緻密層(SNc)から線条体へのドーパミン作動性ニューロンの選択的変性がある。これは直接路を抑制し、間接路を賦活化するため皮質を抑制する。これが無動などの症状を生み出すと考えられている。パーキンソン病患者で視床下核(STN)が脳血管障害で障害されると無動が改善されることがある。これは視床下核(STN)を傷害すると黒質網様層(SNr)や淡蒼球内節(GPi)への入力が減少する結果、皮質の興奮が高まるからと考えられている。手術療法で視床下核(STN)や淡蒼球内節(GPi)の破壊や深部脳刺激が行われるのはこのメカニズムに基づくと考えられている。しかしこのモデルでは説明が困難な例も多数ある。

ヘミバリズム

ヘミバリズムは視床下核(STN)の脳血管障害でよくみられる。視床下核の障害は間接路障害となり大脳皮質の興奮性が高まる結果と考えられる。被殻(線条体の一部)の障害でもヘミバリズムは出現する。これも間接路障害となるからと考えられている。

舞踏病

間接路障害によるものと考えられている。特にハンチントン舞踏病では線条体から淡蒼球外節(GPe)への線維が選択的に脱落し間接路障害となることが知られている。

ジストニア

遺伝性ジストニアであるDYT3では黒質線条体ニューロンのドーパミン放出を抑制する線条体細胞の選択的な脱落が見られる。ジストニアはドーパミンの絶対的、相対的過剰の結果、直接路の過剰興奮などがおこると考えられている。遅発性ジストニアではドーパミン遮断によりレセプター感受性が亢進し相対的にドーパミン作用が高まるため起こると考えられている。

小脳 

小脳の分類はいくつか知られているが小脳虫部(小脳内側部)、小脳中間部、小脳外側部という分類がよく用いられる。これは小脳皮質からの出力系、すなわち小脳核とよく対応する。小脳虫部(内側部)は室頂核に、小脳中間部は中位核に小脳外側部は歯状核に線維を送る。虫部は前庭核、赤核など脳幹下行路の一部から室頂核に入力線維を送り、再び脳幹の核である前庭核や網様核に投射し、近位筋の姿勢保持の筋の制御に関与する。小脳中間部は中位核から脳幹の神経核に(特に赤核)に出力される経路で遠位筋の運動制御に関与している。小脳外側部は歯状核から視床を介して運動皮質(運動野、一部の運動前野、前頭前野、頭頂葉)に投射している。大脳皮質から橋核(皮質橋路や錐体路とは別の線維)を通して小脳皮質に投射された線維が再び歯状核や視床を通じて大脳皮質にフィードバックする系がある。この系、皮質-小脳-皮質ループまたは小脳ループは、運動学習や運動技能獲得など随意運動の際、瞬時、瞬時に形成される運動プログラムの形成に関与し、スピードの調節に不可欠と考えられている(フィードフォワードコントロール)。

小脳への入力 

小脳における局所回路。興奮性のシナプスは (+) で表し、抑制性のシナプスは (-) で表す。
MF: 苔状線維.
DCN: 深部小脳核.
IO: 下オリーブ核.
CF: 登上線維.
GC: 顆粒細胞.
PF: 平行線維.
PC: プルキンエ細胞.
GgC: ゴルジ細胞.
SC: 星状細胞.
BC: 籠細胞.

小脳への入力は主としては大脳皮質、脊髄、前庭系からであり二箇所の中継核がある。これは橋核と延髄の下オリーブ核である。

橋核

橋核は主として大脳皮質、特に前頭葉や頭頂葉からの運動に関する入力を受け(皮質橋路)、中小脳脚の大きなふくらみとなり、苔状線維となって対側の小脳皮質に投射される。苔状線維は興奮性線維である。苔状線維はプルキンエ細胞に直接シナプスしないが顆粒層の顆粒細胞に投射する。顆粒細胞がプルキンエ細胞にシナプス接続する。

下オリーブ核

下オリーブ核からの入力は多種である。脊髄(脊髄オリーブ路)、運動野、上丘、前庭核、三叉神経核、被蓋前野から下オリーブ核へ入力する。下オリーブ核から下小脳脚を形成し登上線維となりおもに小脳の外側部に投射される。登上線維は興奮性線維でありプルキンエ細胞に直接シナプス接続する。登上線維によるプルキンエ細胞への強力な入力は苔状線維のミスを是正していると考えられている。

小脳への出力 

小脳皮質からの主要な出力はプルキンエ細胞であり、これはGABA作動性の抑制性ニューロンである。プルキンエ細胞への登上線維と顆粒細胞がグルタミン酸性の興奮性入力をしており、ゴルジ細胞、籠細胞、星状細胞がGABAによる抑制性入力をしている。プルキンエ細胞からの軸索は小脳深部の核群、室頂核、中位核、歯状核にシナプスさ出力線維が出される。小脳の大きな出力線維である上小脳脚は主として歯状核と中位核のからの線維で形成される。脳幹で上行線維と下行線維に分かれる。

歯状核から視床、運動野への出力

歯状核から出た上行線維は赤核を介し、あるいは直接に視床(VLp核、小脳視床)に中継されたあと主に運動野へ投射される。このルートは大脳皮質-下オリーブ核、橋核-対側の歯状核、中位核-対側の対側の赤核、視床-対側の対側の大脳皮質というループが形成される。この経路のため小脳症状は障害部位と同側に出現する。

歯状核から視床を介さない出力

歯状核から出た上行線維で赤核に入ったものは一部、下オリーブ核へ下向する。歯状核から直接下オリーブ核へ投射される線維もあり、直接路、間接路の関係になる。下オリーブ核から登上線維で小脳皮質に投射されるため、小脳皮質-中脳赤核-延髄下オリーブ核-小脳皮質というループが存在する。歯状核からの下行線維は橋や延髄の網様体、縫線核に終止するものもある。

中位核からの出力

中位核から出た上行線維は赤核に投射されその後対側の網様体に投射され赤核脊髄路を形成する。




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