シュンギク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/01 20:10 UTC 版)
生産
日本のシュンギク年間生産量は29,900トン (t) 、出荷量21,800 t、作付面積は1,830ヘクタール (ha) 、10アール (a) あたりの収量は1,470キログラム (kg) である(令和元年産野菜生産出荷統計)[16]。都道府県別の主な生産地は、茨城県、群馬県、千葉県、大阪府、福岡県などで収穫量が多く、2019年統計で大阪府が出荷量(2,080 t)・作付面積(187 ha)とも第1位で、千葉県が第2位、群馬県が第3位と続く[16]。市町村別(2006年度産)では、茨城県行方市、千葉県旭市の2大産地が生産量・出荷量で全国1・2位を占め、大阪府堺市がこれに続く[17]。日本全体のシュンギク収穫量は減少傾向にあり、2006年から2019年までの過去14年間で33%の減少、作付面積も26%減少している[16]。
食用
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 92 kJ (22 kcal) |
3.9 g | |
食物繊維 | 3.2 g |
0.3 g | |
飽和脂肪酸 | 0.02 g |
一価不飽和 | 0.01 g |
多価不飽和 | 0.10 g |
2.3 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(48%) 380 µg(42%) 4500 µg |
チアミン (B1) |
(9%) 0.10 mg |
リボフラビン (B2) |
(13%) 0.16 mg |
ナイアシン (B3) |
(5%) 0.8 mg |
パントテン酸 (B5) |
(5%) 0.23 mg |
ビタミンB6 |
(10%) 0.13 mg |
葉酸 (B9) |
(48%) 190 µg |
ビタミンC |
(23%) 19 mg |
ビタミンE |
(11%) 1.7 mg |
ビタミンK |
(238%) 250 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(5%) 73 mg |
カリウム |
(10%) 460 mg |
カルシウム |
(12%) 120 mg |
マグネシウム |
(7%) 26 mg |
リン |
(6%) 44 mg |
鉄分 |
(13%) 1.7 mg |
亜鉛 |
(2%) 0.2 mg |
銅 |
(5%) 0.10 mg |
セレン |
(3%) 2 µg |
他の成分 | |
水分 | 91.8 g |
水溶性食物繊維 | 0.8 g |
不溶性食物繊維 | 2.4 g |
ビオチン(B7) | 3.5 µg |
硝酸イオン | 0.3 g |
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[19]。別名: きくな
廃棄部位:基部 廃棄率:根つきの場合 15 % | |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
特有の香りを持つ葉と茎を食用とする。春菊が食用とされるのは日本、中国、韓国などの東アジア諸国においてのみである[8]。宋の時代に中国に流入して蔬菜となった。食材としての旬は冬場で11月 - 3月とされる[8]。葉の緑色が濃く瑞々しいもので、茎の下の方からも葉が出ていないものが商品価値の高い良品で、茎が太すぎないほうが柔らかい[10][8]。
冬の葉物野菜として、鍋物には欠かせないが、サラダや炒め物など様々な調理法が行われる[8]。すき焼き・ふぐ鍋など鍋料理の具材に使われるほか、えぐみの原因となるシュウ酸が少ないことから、やわらかい葉先は生食も可能[10][9]で、サラダに使われる。和え物にする場合は、さっと茹でてから使う[7]。天ぷらや汁の実にも利用され[7]、「春菊天」は関東の立ち食いそば・うどん店では定番メニューの一つである。中国では炒め物にする。
日本では地域によって好まれる品種が違い、東日本では葉の切れ込みが大きめで苦味の強いものが好まれ、西日本では葉の切れ込みが小さく甘みの強いものが好まれる。苦味は茎には無く、葉を加熱した際に出てくる。
栄養素
栄養価が高く、「食べる風邪薬」と言われるほどβ-カロテンやビタミンCが豊富で[10]、ビタミンB2・E、食物繊維、カリウム、カルシウムなどが多く含まれている[8]。
シュンギクは緑黄色野菜で、カロテンは可食部100グラム (g) あたり4500マイクログラム (μg) とホウレンソウ以上に含まれている[10][7]。カロテンは摂取されると体内でビタミンAに変化し、目の健康や粘膜を丈夫に保つ働きをする[7]。またビタミンAに変換されないカロテンは、抗酸化作用を発揮して、動脈硬化やがんの予防効果があるといわれている[7]。ビタミンB群は、糖質・脂質・タンパク質を有効利用するためのビタミンで、ビタミンCは皮膚を健康に保ち、体のストレス耐性を高める働きがある[7]。
ミネラル類では、カルシウムが特に豊富な野菜で知られ、コマツナとほぼ同等[7]、牛乳以上の含有量がある[10]。茹でた後のカルシウム含有量は、むしろシュンギクの方が多く、カルシウム供給源の野菜としては、コマツナよりもシュンギクの方が優秀と言われている[7]。
シュンギクの独特の香り成分はリモネンで、整腸作用、食欲増進、咳止めに効果的とされる[10][8]。えぐみの原因となるシュウ酸は少ないため、柔らかい葉先は生食することも出来る[8]。
保存
湿らせたペーパーで根元を包み、ポリ袋に入れて冷蔵する[8]。シュンギクのビタミンCは収穫後急速に減少し、あまり日持ちしないため、早めに食べきるようにする[8][7]。
観賞
ヨーロッパでは食用ではなく花の観賞用とされている[8]。しかし近年では和食の影響を受け、徐々に料理に使われてきている。 日本では食用のイメージが強いせいか花のことはあまり知られていないが、写真のようにきれいな黄色い花がつく。また、舌状花の外側が白い覆輪になっているものもある。
なお、シュンギクに似た欧米の観賞用種にハナワギク Glebionis carinata があるが、これは有毒であり食用にはならない。
注釈
出典
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Glebionis coronaria (L.) Cass. ex Spach”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年11月7日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Chrysanthemum coronarium L. var. spatiosum L.H.Bailey”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年11月7日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Chrysanthemum coronarium L.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年11月7日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Chrysanthemum coronarium L. f. spatiosum (L.H.Bailey) Kitam.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年11月7日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Xanthophthalmum coronarium (L.) P.D.Sell”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年11月7日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Chrysanthemum roxburghii Cass.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年11月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 講談社編 2013, p. 129.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 23.
- ^ a b 【旬菜物語】シュンギク(JA福岡市)癖少なく 生もいける『日本農業新聞』2020年1月11日(8-9面)
- ^ a b c d e f g h i j 主婦の友社編 2011, p. 122.
- ^ a b c d e f g h 金子美登 2012, p. 116.
- ^ a b c d e f g h i 丸山亮平編 2017, p. 62.
- ^ a b c d e f g h i j 藤田智監修 2019, p. 175.
- ^ a b c d e f g h 丸山亮平編 2017, p. 63.
- ^ a b c d e f g h i 主婦の友社編 2011, p. 123.
- ^ a b c “春菊(しゅんぎく,シュンギク)農業”. ジャパンクロップス. アプレス. 2021年11月7日閲覧。
- ^ “春菊(しゅんぎく,シュンギク)市町村産地”. ジャパンクロップス. アプレス. 2021年11月7日閲覧。
- ^ 文部科学省『日本食品標準成分表2015年版(七訂)』
- ^ 厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2015年版)』
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