発症機序
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 04:19 UTC 版)
一般的に血栓症は動脈硬化による閉塞である。心筋梗塞の場合はプラークの破綻によって急激に冠動脈が閉塞する場合がほとんどだが脳梗塞の場合はいくつかの機序が知られている。まずは心筋梗塞と同様にプラークが破綻する場合がある。粥腫に富み、線維性皮膜が薄い場合は不安定プラークといい、こういったプラークは容易に破綻し、血栓による動脈閉塞をおこす。血管が閉塞、狭窄するとその灌流域が血液途絶を起こし皮質枝梗塞を起こす。狭窄部が急激な血管閉塞を起こすと心原性脳塞栓と類似した脳梗塞が発生する。こういったことは頭蓋外の内頸動脈や頭蓋内の脳主幹動脈に多い(血行力学性によるもの参照)。 また、血管の閉塞や高度の狭窄によって血液供給の境界領域(watershed、分水嶺の意味)が乏血状態となり、さらに血圧低下などの血行動態的要因が加わり梗塞が生じる。こういったことは中大脳動脈や内頚動脈に多い。内頚動脈に高度狭窄があり、支配領域の脳血流量低下を伴っている場合には、表層前方では前大脳動脈・中大脳動脈皮質枝の境界、後方では中大脳動脈・後大脳動脈皮質枝の境界領域が最も乏血状態に陥りやすいので梗塞をきたしやすい。深部では中大脳動脈皮質枝と穿通枝の境界領域に起こりやすい。この機序によっておこる場合は発症後段階的階段状の進行、悪化が見られる(progressive stroke)。発症時間は夜に多く、起床時に気がつくことも多い。もともと極めて慢性に進行してきたと考えられ、こういった梗塞をおこす患者は側副血行路が豊富にある場合が多く、代償が可能な間は臨床症状が乏しいこともある。 血行力学性(hemodynamic)によるものとは 一時的に血圧が下がったために、脳の一部が十分な血流を得ることができなくなって壊死に陥ったものである。血栓性や塞栓性では壊死しにくい分水嶺領域に発症することが特徴的である。分水嶺領域(Watershed Area)とは、どの動脈に栄養されているかで脳を区分した時に、その境目に当たる区域のことである。この部分は、一方の動脈が閉塞してももう一方から血流が得られるため動脈の閉塞に強い。しかし、動脈本幹から遠いため血圧低下時には虚血に陥りやすいのである。この場合は診断名はアテローム血栓性脳梗塞である。 他には動脈硬化が原因の脳梗塞としてartery to artery embolism(A to A)というものがある。内頚動脈や椎骨動脈のアテローム硬化巣から血栓が遊離して末梢の血管を閉塞する。皮質枝にも穿通枝にも塞栓を起こしえる。心原性脳塞栓と同様活動時突発性発症が見られやすい。 画像上は典型的には皮質枝、すなわち大脳皮質にMRI拡散強調画像 (DWI) で高信号域を認め、散在性小梗塞巣といった形を取りやすい。もちろん小型というのは他のアテローム血栓性脳梗塞よりはということでラクナ梗塞よりは大型の病変となる。アテローム硬化には好発部位がある。基本的には日本人には中大脳動脈に多い。しかし近年は欧米と同様、頸部内頸動脈の起始部に最も多くなっている。他の好発部位としては内頚動脈サイフォン部、椎骨動脈起始部、頭蓋内椎骨動脈、脳底動脈である。 アテローム血栓性脳梗塞はラクナ梗塞などより一過性脳虚血発作が先行しやすいと言われている。閉塞動脈の支配領域の症状を繰り返しやすいという特徴がある。内頸動脈病変では一過性黒内障が有名である。これは眼動脈、網膜中心動脈領域の虚血が起こり、患側の視力が一過性に消失する。典型的にはカーテンが目の前に降りて行くように暗くなると患者は訴える。椎骨動脈では回転性めまいや嘔吐、構音障害が起こりやすい。発作の頻度が重要であり、短時間に頻回起こっている場合はcrescendo TIAと呼ばれ、主幹動脈の高度狭窄の存在が示唆される、持続時間の延長は脳梗塞の危険が切迫していると考えられる。 初回TIAが起こってから1か月以内が最も脳梗塞が起こりやすいといわれており、特に近年の研究ではTIA発症後48時間以内に脳梗塞を発症する例が多い(90日以内発症例のうちの約半数)いるため、入院精査と治療が必要と言われている。アテローム血栓性のTIAならば抗血小板薬を、心原性やcrescendo TIAでは抗凝固療法を行うことが推奨されている。 内頸動脈系椎骨動脈系運動障害症状は片側性 多彩、交代性片麻痺、drop attack、対麻痺 感覚障害通常は片側性 多彩 視力障害一過性黒内障 両側性視力障害 視野障害同名半盲 中心回避型視野欠損、片側、両側の同名半盲 小脳症状ない 運動失調、動揺歩行 脳神経症状稀 構音、嚥下障害、複視 回転性めまいない ある 失語ある ない 発作回数少なく、発作ごとに症状は同じ 多い、発作ごとに症候は変動する 脳梗塞への移行移行しやすい 移行しにくい 脳神経系の障害は上位ニューロン障害を起こすと内頸動脈系でも起こりうる。中心前回などが中大脳動脈に還流されるからである。
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発症機序
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 18:18 UTC 版)
皮膚の表皮を作るスピードが通常の10倍速を上回り(正常皮膚の細胞周期は約457時間、対して病変部位は37.5時間と.mw-parser-output .frac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .frac .num,.mw-parser-output .frac .den{font-size:80%;line-height:0;vertical-align:super}.mw-parser-output .frac .den{vertical-align:sub}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}1⁄10以下。癌細胞の増殖を超える速度)、真皮の血管が肥大しつつ組織を炎症しながら、ターンオーバー(表皮が角化し剥離して入れ換わる周期)が通常なら4週間のところ3〜4日で完了する。どんどん表皮が増殖し、角化が亢進している状態によって、白いかさぶた状の皮疹を多く生じる。 病態形成にT細胞性自己免疫系が関与する可能性が示唆されている。
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発症機序
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/15 15:08 UTC 版)
「ベルナール・スリエ症候群」の記事における「発症機序」の解説
GPIb/IX 欠損はvon Willebrand 因子(von Willebrand factor; vWF)による血小板機能欠損・一次止血機能の欠損を意味する。またシグナル伝達もなされないため、血小板の成熟障害もきたすため、巨大血小板性血小板減少症もみられる。
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発症機序
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/05 04:16 UTC 版)
NSAID潰瘍発症の原因として主に挙げられるのが、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害の関与である。 COXにはCOX-1とCOX-2があることが知られている。このうち、COX-1は細胞に常に存在している「構成型」で、胃粘膜や血管内皮などの生体に存在し、それらの機能を調節している。COX-2はサイトカインなどの炎症性の刺激により産生される「誘導型」で、マクロファージ、好中球、滑膜細胞といった炎症細胞によく発現する。 NSAIDsは、COX-2を阻害することで、炎症に関与するプロスタグランジン(PG)の産生を抑制し、消炎・鎮痛効果を発揮する。しかし、従来の一般的なNSAIDsでは、COX全体を阻害してしまうため、COX-2のみならず、胃粘膜保護などの役割をもつCOX-1も阻害してしまう。そのため、胃粘膜の傷害を生じる原因となる。さらに、トロンボキサン(TXA)の産生も抑制することで、出血傾向を亢進させ、出血性潰瘍の合併症を引き起こす可能性もある。
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発症機序
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 15:16 UTC 版)
諸説があり、まだまだ不明な点が多い。血小板由来増殖因子(platelet-derived growth factor:PDGF)や血管内皮細胞増殖因子(vascular endthelial growth factor:VEGF)が肺で除去されないため、ばち指を起こすという説がある。肺癌では、加療・切除により"ばち指"も改善することがある。
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発症機序
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/02 14:20 UTC 版)
「ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死」の記事における「発症機序」の解説
この発症機転は、顎骨の生理的なリモデリング速度や、局所的な細菌感染病態の特徴と関連していると仮説されている。ビスホスホネート系製剤の投与による強い破骨細胞の抑止機能は全身のあらゆる骨で代謝の抑制を引き起こすが、ビスホスホネートは代謝に伴って骨に沈殿されるので、骨内ビスホスホネートの濃度はもともと代謝の活発な骨部位においては更に選択的に上昇する。顎骨とりわけ歯牙支持組織である歯槽突起部は常に摂食に伴う強力な咀嚼圧に晒される部位であり、このため歯槽部の骨リモデリング速度は全身骨平均の10倍程度に及ぶと推計されている。この高い骨代謝速度によってビスホスホネート剤は選択的に歯槽部に沈着し、歯牙歯周感染症に対する感染防御機転の一部をなしている骨吸収プロセスを阻害する。また、この歯槽骨は解剖的には薄い歯肉粘膜を介するのみで、きわめて常在細菌叢に富む口腔内に近接しており、常に細菌感染に晒されうる部位であることが、この部位にビスホスホネートによる骨感染・骨壊死を初発することの原因とされる。 マトリクス・メタロプロテイナーゼ2は骨の異常と心房細動の両方という、ビスホスホネートの他の副作用にかかわる事が判明している唯一つの遺伝子なので、ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死への関与が疑われる遺伝子とされている。
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発症機序
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 09:52 UTC 版)
脳血管障害に共通するのは、脳を栄養する頭蓋内の血管(血流)に異常が発生し、出血による炎症・圧排または虚血による脳組織の障害により発症することである。
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発症機序
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/30 00:33 UTC 版)
TENにおける免疫系の役割は明らかではないが、一部の免疫細胞(細胞傷害性CD8+ T細胞)は角化細胞の死と続発性の皮膚剥離の主因である。角化細胞は表皮深部に存在し、皮膚細胞を支えている。CD8+ T細胞が薬剤やその代謝物で過剰に活性化されて角化細胞を攻撃しているのではないかとの仮説が立てられる。すなわちCD8+ T細胞がパーフォリン(英語版)、グランザイム(英語版)B、グラヌリシン(英語版)、腫瘍壊死因子α、Fasリガンドなどの分子を大量に放出し、角化細胞を死滅させ、TENを呈するというものである。
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発症機序
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 01:17 UTC 版)
薬剤性肝障害に影響を与える因子年齢 民族と人種 性別 栄養状態 基礎となる肝疾患 腎機能 妊娠 薬剤の投与期間と投与量 酵素誘導 薬物間相互作用 発売後に発見された肝毒性の為に、今も多くの医薬品が市場から撤退している。肝臓は、その独特の代謝と消化管との密接な関係から、薬物やその他の物質による傷害を受けやすい。肝臓に来る血液の75%は、消化器官や脾臓から門脈を経由して直接届き、薬物や生体異物が充分に希釈されていない形で運ばれて来る。肝臓の損傷を誘発したり、損傷プロセスを悪化させたりするメカニズムは幾つかある。 多くの化学物質は、エネルギーを生産する細胞内小器官であるミトコンドリアを損傷する。ミトコンドリアが機能不全に陥ると、過剰な量の酸化物質が放出され、肝細胞が傷害される。また、CYP2E1(英語版)などのシトクロムP-450系酵素の活性化も酸化ストレスの原因となる。肝細胞や胆管細胞が傷害されると、肝臓内に胆汁酸が蓄積される。この胆汁酸が更に肝障害を促進する。また、クッパー細胞、脂肪を蓄積する伊東細胞、白血球(好中球、単球)などの非柔組織もこのメカニズムに関与している。
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