学生寮
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/18 19:21 UTC 版)
アメリカの学生寮
大学
アメリカ合衆国の大学では寮が設けられる場合にはキャンパス内に設けられていることが多い[2]。アメリカの大学の寮の形態には、男子寮(men's dorm)、女子寮(women's dorm)、男女共有寮(co-ed dorm)があり、上級者専用の寮や留学者専用の寮など対象が定められている寮もある[2]。大学の寮には娯楽室、自習室、コンピュータルーム、ラウンジ、洗濯室等が設けられている[3]。
学生の交流組織であるフラタニティとソロリティが運営する宿舎も寮として機能している(フラタニティとソロリティ#フラタニティ/ソロリティ宿舎の節参照)。
日本の学生寮
中学校、高等学校、専修学校、高等専門学校、大学などの学生、生徒、児童の住む寮である。寄宿舎と呼ばれることもあり、特に特別支援学校などで用いられている(こちらを参照)。本来は、学校が自宅から遠かったり、交通が不便だったりして通学が困難な学生、生徒、児童のために作られたものである。
学生向けの物件であるため、家賃は一般的なアパートより安めに設定されている所が多い。部屋以外の設備(風呂やトイレなど)は共同使用の場合が多く、基本的に相部屋である(特に下級生)。
学校や寮、地域によっては外出や門限を厳しく制限されたり、寮での日課(特に食事や入浴、就寝時間)が規則で決められたりしている寮が多い。私生活を束縛される理由から、深夜・早朝のアルバイトが不可能またはそれに近い状態であったりする。近年は減少傾向にあるが、朝夕の食事が提供される所もある。
以下この項では、文部科学省所管外の教育訓練施設(省庁大学校など)が設置するものについても取り扱うこととする。
大学
第二次世界大戦前の旧制高等学校では、旧制高校といえば寮生活を思い浮かべる人が多いと言われるほど寮と関係が深く、寮歌が盛んに歌われていた。
大学寮は様々な学生の交流の場ともなっており、ホールやラウンジなど、ちょっとした集まりが出来る共有スペースがあり、ユースホステルなどと同じく有料で外部学生が宿泊出来ることもある。東京大学駒場寮などを中心に学生運動の拠点ともなり、学生寮自治会の連合組織として「全日本学生寮自治会連合」(全寮連)も結成されていた(2006年3月解散)。
筑波大学の学生宿舎は、海外からの研究者なども多く、家族で住む事のできる部屋もあり、開学当時はそれが話題にもなった。ヨーロッパや北米の大学では、男女が同室に一緒に住む事もできる寮や、同一フロアに男女が混在して生活する寮も珍しくはない。
もともとは、キリスト教の修道院の中の修道士の居住空間から着想を得ているものらしい[要出典]。dormitory自体は、本来の意味は「共同の寝室」。ドイツ語やスラブ語で仲間、友達をいうder Kameradeも「方形の個室(Kamera)で生活を共にした友達」からくる。
中等教育
一部の中高一貫校にも寮があり、遠隔地からの生徒受け入れが可能なため、都会から離れている立地の学校でも都会の学校と同じ土俵で競えるなどのメリットがある。
集団生活での責任感も養成する観点から、寮では原則として複数人で一部屋を使用する場合が殆どで、特待生として優遇されない限り、一人一部屋になる事はない(一人一部屋にすれば、寮の建設費や維持費が増大するという理由もある)。
トヨタ自動車やJR東海、中部電力など中部地方の有力企業がイギリスの名門イートン校をモデルにして、全寮制学校「海陽中等教育学校」を作った。
不登校経験者を対象にした学校でも、寮を設置している場合が多い(北星学園余市高等学校など)。
篤志家による設置
特定の学校に属さず、複数の学校から広く学生を受け入れる寮としては、山手学舎、友愛学舎、信愛学舎、登戸学寮、地塩寮、和敬塾、大東会館などがある。山手、友愛、信愛の各学舎は兄弟寮であり、YMCAが運営に関わっている。他にも、自治体などによる県民寮があり、全国的に閉寮傾向にあるが育英会館学生寮(千葉県)、富山県の青雲寮(富山県)などが現存する。
全寮制
大学・大学校では、自治医科大学、東京基督教大学、防衛大学校などは全寮制であり、入学と同時に入寮の義務が課せられる。また皇學館大学でも学生全員に原則として2年間、学生寮への入寮を義務付けている。旧制大学時代の千葉工業大学のように、学生だけではなく教員も同じ寮に寄宿し、寝食を共にするというスタイルの全寮制大学も存在した。
高等学校でも全寮制の学校がある。学校法人日生学園が経営する、三重県所在の青山高等学校(旧・日生学園第二高等学校)は、全寮制高等学校として知られる。近年は少子化などによる学校経営上の理由から、聖パウロ学園高等学校(東京都)のように全寮制を廃止する学校もある。
石川県にある国際高等専門学校などの高等専門学校にも学年限定で全寮制を導入している。
キリスト教の神学校では、日本聖書神学校や聖契神学校、JTJ宣教神学校、東京バプテスト神学校など働きながら学ぶことを前提とする神学校を除き、ほとんどが全寮制となっている(全寮制ではないが、日本聖書神学校と聖契神学校には学生寮がある)。牧師の結婚を認めているプロテスタントの神学校では、既婚者で献身(入学)する者もいるため家族寮を設けているところもある。
そのほか、松下政経塾でも全寮制を採用している。
学生寮の一覧
大学
- 北海道大学 - 恵迪寮(けいてきりょう)日本四大自治寮 北晨寮(ほくしんりょう)自治寮 霜星寮(そうせいりょう)女子寮
- 北海道教育大学札幌校 - 紫藻寮(しそうりょう)男子寮 北香寮(ほっこうりょう)女子寮
- 北海道教育大学旭川校 - 築ヶ丘寮(つきがおかりょう)男子寮 春光寮(しゅんこうりょう)女子寮
- 北海道教育大学函館校 - 桐花寮(とうかりょう)男子寮 翠蔭寮(すいいんりょう)女子寮
- 北海道教育大学釧路校 - 鶴ヶ岱寮(つるがだいりょう)男女併設寮
- 北海道教育大学岩見沢校 - 希望寮(きぼうりょう)男子寮 清明寮(せいめいりょう)女子寮
- 室蘭工業大学 - 明徳寮(めいとくりょう)男子寮 明凛館(めいりんかん)女子寮
- 酪農学園大学 - ㊚北光寮創生寮㊛清温寮(高大共同寮)
- 札幌医科大学 - 望嶽寮
- 弘前大学 - 北溟寮(ほくめいりょう)男子寮 北鷹寮(ほくおうりょう)男子寮 朋寮(ほうりょう)女子寮
- 岩手大学 - ㊚ 自啓寮(じけいりょう)同袍寮(どうほうりょう)北謳寮(ほくおうりょう)㊛紅梅寮(こうばいりょう)
- 東北大学 - 明善寮(めいぜんりょう) 日本四大自治寮・有朋寮(ゆうほうりょう)廃寮・日就寮(にっしゅうりょう)・東北大学YMCA渓水寮[4]
- 東北学院大学 - 泉寄宿舎、泉女子寄宿舎、旭ヶ岡寄宿舎
- 東北福祉大学 - 喜心寮
- 福島大学 - キャンパス内に自治寮である 如月寮(きさらぎりょう)男子寮、信夫寮(しのぶりょう)男子寮、葵寮(あおいりょう)女子寮、福島市内に留学生向け宿舎の国際交流会館がある。
- 筑波大学 - 平砂・追越・一ノ矢・春日宿舎 「寮」ではなく「宿舎」である。収容人数は4000人を超える
- 埼玉大学 - 蒼玄寮(そうげんりょう・男子)・悠元寮(ゆうげんりょう・女子) 自治寮
- 千葉工業大学 - 桑蓬寮・椿寮(㊚そうほうりょう・㊛つばきりょう)
- 千葉大学 - 無名寮・薫風寮・雄翔寮・さつき寮・浩気寮
- 東京大学 - 駒場寮 日本四大自治寮、廃寮。YMCA寮。
- 東京大学が提供している学生宿舎 - 豊島国際学生宿舎、追分国際学生宿舎、三鷹国際学生宿舎、目白台インターナショナル・ビレッジ。
- ※追分国際学生宿舎は、同大学宿舎の再編に備えて2021年の秋季入居分(留学生のみ対象)をもって新規の入居募集が停止となる。
- 慶應義塾大学 - 日吉寮
- 日本体育大学 - 日体第一学生寮(東京世田谷深沢)「エッサッサ」の訓練が毎年伝統的に行なわれている。他に健志台合宿寮(横浜青葉区)女子深沢寮-荏原体育の訓練が毎年伝統的に行われている。
- 東京農業大学 - 常磐寮・昆明寮、飲み会のあとに「青山ほとり大根踊り」を下級生が踊ることもある
- 東洋大学 - 小石川寮(男子寮、廃寮)
- 拓殖大学 - 扶桑寮
- 芝浦工業大学 - 東大宮学生寮
- 東京家政大学 - 板橋学寮、狭山学寮
- 大妻女子大学 - 大妻加賀寮
- 駿河台大学 - フロンティア・タワーズ(男子・女子寮)、フロンティアS(スポーツ推薦入学者)、飯能学生ハイツ(女子寮)
- 横浜市立大学 - 夕照寮 全日本コール選手権において男子寮チームとして2連覇を果たす。日本の一気コール文化の一翼を担う。
- 関東学院大学 - かんらん寮(神学部女子寮、男子寮、廃寮)、YMCA寮(男子寮、廃寮)、青雲寮(男子寮、廃寮)
- 神奈川大学‐横浜キャンパス 男子寮:白楽寮、中丸棟、 女子寮:国際寮エスペラール、中丸棟、日本榎棟 湘南キャンパス 男女併設寮:湘南宮川ビル
- 新潟大学 - 六花寮
- 富山大学 - 新樹寮(しんじゅりょう)
- 信州大学 - 思誠寮 北杜夫の「どくとるマンボウ青春記」の舞台。こまくさ寮、男女混合の学生自治寮。揃いの法被や、追いコン(寮中を酒まみれにする)、寮祭が学生の間で有名。こまくさ寮・あけぼの寮・若里寮・修己寮・中原寮
- 金沢大学 - 北溟寮 日本海側最大の収容人数を誇る寮(男子寮)
- 福井大学 - 啓成寮
- 静岡大学 - 片山寮・雄萠寮・あかつき寮
- 名古屋大学 - 国際嚶鳴館(旧:嚶鳴寮)
- 愛知県立芸術大学 - 三ヶ峰寮
- 名古屋商科大学 - 国際寮
- 豊田工業大学 - 久方寮・第二久方寮
- 岐阜大学 - 黒野寮
- 三重大学 - 安濃津寮、むかしは寮が主催で伝統の仮装行列があった
- 皇學館大学 - 男子:精華寮女子:貞明寮
- 京都大学 - 吉田寮 日本四大自治寮。現存する日本最古の学生寮・熊野寮(くまのりょう)・室町寮(むろまちりょう)・女子寮(じょしりょう)地塩寮(ちえんりょう)YMCA寮。
- 同志社大学 - 自治寮
- 京都女子大学 - 紫金寮、東山寮、
- 京都光華女子大学 - 眞心寮
- 大阪大学 - 刀根山寮、清明寮、新稲寮(にいなりょう)、大阪大学グローバルビレッジ津雲台寮、大阪大学グローバルビレッジ箕面船場寮
- 大阪経済大学 - 男子学生寮扇町センター、女子学生寮瑞光センター
- 梅花女子大学 - 学生寮メゾンドクレア
- 関西学院大学 - 啓明寮、静修寮、成全寮、清風寮、聖和寮
- 武庫川女子大学 - 淳正寮、啓成寮、貞和寮、甲子園口寮
- 神戸女学院大学 - 学生寮、東京寄宿舎
- 神戸大学 - 住吉寮、白鴎寮、女子寮
- 神戸松蔭女子学院大学 - 六甲寮
- 神戸女子大学 - 行幸寮、天神寮
- 神戸親和大学 - 新玉結寮、玉結寮
- 岡山大学 - 北津寮(ほくしんりょう) マルクス主義青年同盟(マル青同)による襲撃・殺人事件。廃寮
- 鳥取大学 - 北斗寮(ほくとりょう)
- 島根大学 - 雄翔寮(ゆうしょうりょう)
- 山口大学 - 吉田寮、椹野寮、常盤寮
- 宇部フロンティア大学、宇部フロンティア大学短期大学部 - ㊚知心寮、㊛洗心寮
- 香川大学 - 留学生会館(屋島寮に併設)、上之町国際寮、㊚屋島寮、光風寮、㊛若草寮
- 徳島大学 - ㊚晨鐘寮、㊛藍華寮
- 徳島文理大学 - 学生寮
- 九州大学 - 田島寮(廃寮)、松原寮、井尻寮、貝塚寮。
- 九州工業大学 - 明専寮男子寮 老朽化のため2010年に廃寮
- 福岡大学 - 自修寮
- 長崎県立大学 - 大潟町留学生宿舎、三芳町留学生宿舎、扇町留学生宿舎(すべて留学生のみ対象)
- 琉球大学 - 千原寮(せんばるりょう) 男子:北辰棟、海邦棟、南星棟、混住棟、新混住棟 女子:紫陽花棟、混住棟、新混住棟
高等専門学校
国立および私立の高等専門学校には学生寮がある。前期課程の一部学年に於いて全寮制を導入している。
中学校・高等学校
- 白陵中学校・高等学校
- 秀明中学校・高等学校
- 麗澤高等学校
- 麗澤瑞浪高等学校
- 自由学園高等学校
- ラ・サール中学校・高等学校
- 函館ラ・サール中学校・高等学校
- 黄柳野高等学校
- 静岡県立川根高等学校 - よすが苑・南麓寮(男性専用)、若者交流センター奥流(男女共用)
- 桜丘中学校・高等学校 (三重県)
- 青山高等学校 (三重県)
- 自由ヶ丘高等学校 (兵庫県)
- 早稲田摂陵中学校・高等学校
- 暁星国際中学校・高等学校
- 宇部フロンティア大学付属香川高等学校 - 知心寮(男性専用)、洗心寮(女性専用)
- 酪農学園大学附属とわの森三愛高等学校 - 機農寮(男性専用)、清温寮(女性専用)(いずれも高大共同寮)
- 秋川高等学校
- 楠隼中学校・高等学校
- 片山学園中学校・高等学校
- 朝日塾中等教育学校
専修学校・各種学校
文部科学省所管外
- 国土交通大学校 - 小平本校(旧建設省建設大学校)と柏研修センター(旧運輸省運輸研修所)における研修生のための宿泊室を備えた宿泊棟がそれぞれある。
- 水産大学校 - 滄溟寮
- 税務大学校 - 和光校舎の中に、通学困難な研修生のための学寮棟を置いている。
- 総務省自治大学校 - 地方公務員のための中央研修機関であり、寄宿舎として麗沢寮、洗心寮の2棟がある(立川市への移転前からの寮名を引き継いでいる)。
- 防衛大学校 - 学生舎
- 防衛医科大学校 - 学生舎
- 両国予備校(2005年廃校) - 同仁寮(全寮制を謳いつつも通学生も受け入れていた)
その他
- 司法研修所 - ひかり寮(裁判官用)、いずみ寮(司法修習生用)
- 市町村アカデミー - 正式名は市町村職員中央研修所であり、研修生のために設けられた宿泊棟の名前は、亦楽寮(えきらくりょう)である。
- 陸上自衛隊高等工科学校 - 全寮制
- 競馬学校(JRA) - 全寮制
- 警察学校 - 初任教育は入寮することが義務づけられている。
- やまと学校(現:ボートレーサー養成所)(ボートレース) - 全寮制
- 戸塚ヨットスクール
- ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(幸福の科学)
留学生宿舎、混住寮、混住型学生寮
留学生のみの学生寮を留学生宿舎、留学生などと共に生活する混住寮(混住型学生寮)という[6][7]。
- ^ 「開校ラッシュ続く 全寮制国際感覚や自立心培う」『毎日新聞』朝刊2022年11月21日(教育面)2023年1月4日閲覧
- ^ a b 永野真司『アメリカホームスティ&留学の英会話』(三修社、2010年)40頁
- ^ 永野真司『アメリカホームスティ&留学の英会話』(三修社、2010年)40-41頁
- ^ 1928(昭和3)年に当時東北帝国大学法文学部長だった石原謙教授により設立された東北大学とは独立している自治寮。“渓水寮の歴史”. 東北大学YMCA渓水寮. 2021年9月25日閲覧。
- ^ もとは全寮制大学が前身で、時局に伴って何度か大学の所在地が移転しているため、複数の寮(名)が存在するが、その伝統は現在の寮にも受け継がれている。
- ^ 千春, 吉田; 友章, 田中; 雅弘, 横田 (2018). “多文化の学びを育む混住型国際学生宿舎の研究”. 住総研研究論文集・実践研究報告集 44: 191–202. doi:10.20803/jusokenronbunjisen.44.0_191 .
- ^ 保坂, 真名「交流・学びの場としての混住寮 : 日本人学生に着目して」2019年3月29日、doi:10.15083/00077129。
- ^ “椰月美智子『緑のなかで』特設サイト”. 光文社 (2018年9月20日). 2019年1月2日閲覧。
- ^ 椰月美智子『緑のなかで』光文社、2018年9月。ISBN 978-4334912406 。
- ^ “テレビドラマデータベース”. テレビドラマデータベース (2013年5月6日). 2018年5月10日閲覧。
- 1 学生寮とは
- 2 学生寮の概要
- 3 アメリカの学生寮
- 4 学生寮を扱った作品
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