世論調査 バイアス

世論調査

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/14 23:47 UTC 版)

バイアス

正しく世論調査を行っても必ず発生する統計学的な誤差とは別に、世論調査の正確性をゆがめる、回答者のバイアス(偏り)がいくつか存在する。

サンプリングバイアス

まず、そもそもの問題として、調査対象全体(母集団)から無作為に標本抽出(サンプリング)を行わなければ結果は不正確なものとなる。例えば、A候補の支持者のみを作為的にサンプリングして世論調査を行った場合、母集団におけるA候補の支持率の真の値に関わらず、調査結果におけるA候補の支持率は有意に高くなる。

回答バイアス

例えば、面倒くさいので回答者が調査を早く終わらせるために適当に答えたり、人種差別や性差別などの一般的に悪とされる本心を隠すために正反対の回答をしたり、といったバイアスである。

特に投票意向に関係する世論調査においては、秘密投票という方式が持つ特性上、「世論調査員に公言しにくい候補に投票する」ことが可能であり、回答バイアスが世論調査の結果と投票結果に大きな差を及ぼす場合がある。2016年アメリカ合衆国大統領選挙隠れトランプなどがその例とされる。

無回答バイアス

例えば、質問者の態度が気に入らないので回答しない、といったバイアスである。

回答率は調査の主体によっても左右される。例えば、「○○新聞の調査に対しては回答を拒否し、△△新聞の調査には応じる」などである。特に政治的問題では、調査主体に好意的な回答者の回答率が高くなり、そうではない回答者の回答率は下がる。

例えば、死刑廃止を訴えるアムネスティ・インターナショナル日本支部が1996年の衆議院総選挙候補者に行ったアンケートでは、当時与党であった自民党候補者の回答率が低かった。おおむね、公的機関や大手マスメディアの調査に対する回答率は比較的高いが、回答率が低すぎる場合、有効回答者の回答をサンプル全体に当てはめることはできない。選挙プランナーと称する三浦博史は「1社だけでは不正確なマスコミの調査も、複数の調査を合わせれば、精度の高い結果になる」としている。[23]

質問誘導

例えば、質問文の前に「政治改革への期待が膨らむ○○候補ですが」「黒い交際が噂される○○候補ですが」などといったポジティブ・ネガティブな前書きがあった場合、回答もそのイメージに引きずられてしまうバイアスである。

意図的かどうかにかかわらず、『設問文によって回答が誘導される』『ある設問の存在が以降の設問の回答に影響を与える(キャリーオーバー効果)』といった世論誘導が行われないよう実施しなければならない。さらに、「あいまいな回答」や「無回答・分からない」という回答の扱い方が難しいため、統計学的に母集団を推定するうえでは問題もある。

ニュースに関心のない国民の場合、質問に回答する以前に質問の内容自体を理解できないため、「何が問題となっているか」などニュースの背景を詳細に説明する必要があり、それが結果として質問誘導につながるという問題もある。

重ね聞き

質問誘導の一種で、「よく解らない」や「無回答」などと回答する回答者に、「強いて言えば」「どちらかと言うと」などと重ね聞きすることにより、「はい」か「いいえ」に回答を誘導するバイアスである。

例えば日本の大手マスコミのうち、読売新聞と日経新聞は重ね聞きをしているので、「無回答」が少なくなり、「はい」「いいえ」が多い。一方、朝日新聞と毎日新聞は重ね聞きをしないので、「無回答」「分からない」が他社よりも多く、「はい」「いいえ」が他社よりも少ないという偏りが、2009年の朝日新聞論説委員のレポートで指摘されている[24]。世論調査の数字を同じ会社で比較する時は問題ないが、同じ時期の世論調査の数字をマスコミ各社で比較する時に問題となる。

範囲バイアス

調査範囲のバイアスである。例えば固定電話の所有者のみを調査対象とした場合、携帯電話しか持たない人が多い若年層をうまくフォローできない。逆に携帯電話の所有者のみを調査対象とした場合、固定電話しか持たない人が多い老年層をうまくフォローできない。

これはカバレッジ誤差を生む原因となる。


  1. ^ アメリカ大統領選挙の番狂わせ(前編)~ 標本調査における偏り①|統計学習の指導のために(先生向け) 総務省 統計局
  2. ^ 学校における統計教育の位置づけ|統計学習の指導のために(先生向け) 総務省 統計局
  3. ^ 日本世論調査協会会報「よろん」103号、2009年3月
  4. ^ 日本世論調査協会[団体会員名簿]
  5. ^ 国民生活に関する世論調査 5 標本抽出方法 -内閣府
  6. ^ 系統抽出 日経リサーチ
  7. ^ 標本の抽出は、どのように行えばよいのですか - 埼玉県
  8. ^ アメリカ大統領選挙の番狂わせ(後編)~ 標本調査における偏り②|統計学習の指導のために(先生向け) 総務省 統計局
  9. ^ 無作為抽出 日経リサーチ
  10. ^ 世論調査 - 内閣府
  11. ^ a b 世論調査 - ニュース特集 - asahi.com
  12. ^ a b なるほど統計学園高等部 | 調査に必要な対象者数 - 総務省統計局
  13. ^ 面接調査の現状と課題 NHK放送文化研究所
  14. ^ 世論調査 「RDD」方式とは - 政治 朝日新聞デジタル
  15. ^ 調査の方法 日経リサーチ
  16. ^ 福田昌史、固定電話と携帯電話を対象とした電話調査の導入と推定値の評価 『行動計量学』 2017年 44巻 1号 p.85-94, doi:10.2333/jbhmk.44.85
  17. ^ 日本の世論2016:初のネット回答 郵送調査に加え - 毎日新聞
  18. ^ 世論調査 - よくあるお問い合わせ -内閣府
  19. ^ インターネットによる国民生活に関する意識調査 内閣府
  20. ^ インターネットによる国民生活に関する意識調査 調査結果の概要 内閣府 2008年4月
  21. ^ ニコニコアンケート
  22. ^ インターネット調査 日経リサーチ
  23. ^ 三浦『洗脳選挙』光文社ペーパーバックス、2005年1月、ISBN 4-334-93351-3、72頁参照
  24. ^ 世論調査の役割と限界 峰久和哲(朝日新聞編集委員)
  25. ^ 中高年500人酷使 大手紙「世論調査」はブラック労働だった”. 日刊ゲンダイ (2014年12月7日). 2014年12月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年6月21日閲覧。
  26. ^ a b フジ・産経「世論調査捏造」を生んだ根深い病巣”. 東洋経済新報 (2020年6月21日). 2020年6月21日閲覧。
  27. ^ 産経・FNN合同世論調査、委託先社員が不正”. 産経新聞 (2020年6月19日). 2020年6月21日閲覧。
  28. ^ 日本テレネット FNN世論調査データの不正入力を認め謝罪「信頼を裏切る結果に」「一部社員の不正行為」”. スポーツニッポン (2020年6月20日). 2020年6月21日閲覧。
  29. ^ 佐藤卓己『メディア社会-現代を読み解く視点』113頁 (岩波新書、2006年)
  30. ^ 佐藤卓己『メディア社会-現代を読み解く視点』113頁-114頁 (岩波新書、2006年)
  31. ^ 1936年~2008年のギャラップ世論調査と得票率結果(ただし、得票率で負けた候補が当選した事例あり) アメリカ大統領選挙ニュース:ギャラップ
  32. ^ 世論調査2018年3月14日
  33. ^ バイデン氏リードの世論調査、トランプ陣営がCNNに撤回と謝罪要求”. CNN (2020年6月11日). 2020年6月13日閲覧。






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