アーカイヴとは? わかりやすく解説

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アーカイブ【archive】


アーカイブ

(アーカイヴ から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/18 18:00 UTC 版)

アーカイブ (archive; [ˈɑːrkv]) とは、組織や個人の活動の中で作成される文書であり、単に収集・保存するのではなく、ある体系に基づいて編纂し、目的があって保存された文書の集合体である[1]。日本では一般的に書庫保存記録と訳されることが多いが、元来は公記録保管所、または公文書の保存所(公文書館)、履歴などを意味し、記録を保存しておく場所である。

国立国語研究所による「外来語」言い換え提案では、「アーカイブ」の言い換え語として「保存記録」や「記録保存館」とされている。

定義

カール・ツィンカーナーゲルは『アーキビストと「記録」(今日の記録文書や現用文書に当たる)に従事している者のためのマニュアル』 (1800年)において、アーカイブを、ある国家の政府の管理のもとに置かれた、国家の特権と組織に関連した文書の体系化された集成であると定義した[2]。その後、1834年ドイツハインリヒ・アウクスト・エルハルト英語版1895年フランスチャールズ=ビクター・ラングロワ英語版らにより体系化、解釈が行われた[1]。彼らはアーカイブを、作成する国や行政、企業、個人に関わる法的に関連がある文書の資料群として規定し、文書作成の活動または保管場所であると説明した[1]。さらに20世紀初頭のイタリアにおいてユージェニオ・カサノヴァイタリア語版は、1928年に刊行された文書の記録管理に関する学術書において、「アーカイブはある活動の遂行の間に構築された団体もしくは個人の文書の体系化され、これら団体や個人の政治的・法的・文化的目的達成のために保存された集成である」[3]と定義した。

具体的なアーカイブやアーカイブズの定義が行われている一方で、明文化はできないとも言われている[4]

施設としてのアーカイブ

アーカイブの複数形としてアーカイブズがあり、文書や史料、また美術作品の保存を目的とした施設や仕組みを指す。なお、過去に放送された番組や関係資料の所蔵・閲覧を目的とした映像拠点として2003年平成15年)に埼玉県川口市にオープンしたNHKアーカイブスの「アーカイブス」は、「アーカイブズ」では末尾に濁音が続き発音しにくいために、NHKによって考案された造語である。

コンピュータでのファイル操作におけるアーカイブ

複数のファイルを一体化すること。

記録としてのアーカイブ

図書館学における公記録保管所という意味からの派生。

歴史学では多様な史料の活用が図られるようになり、特に1980年代以降の新たな史料学のもとで古文書から電子記録まで「過去の人びとの記録総体」を「アーカイブズ」と呼ぶようになった[5]

個人アーカイブ。

個人アーカイブは、個人または家族が、個人的な文書、写真、手紙、その他歴史的または感情的価値のある資料を保存するために作成する[6][7][8]。 企業や政府のアーカイブとは異なり、一般公開を目的としておらず、主に個人的な利用や家族の思い出、後世への遺産の継承を目的としている[9]

このようなアーカイブには、古い日記や書簡から、ホームビデオ、オーディオ録音、デジタルファイルまで、さまざまな資料が含まれます[10]。 多くの場合、愛好家や家族史研究家、あるいは先祖の記憶を保存しようとする人々によって収集される。場合によっては、個人のアーカイブは、その内容が公共の関心を引くものである場合、例えば、有名な人物や歴史上の重要な出来事に関するものである場合、博物館、図書館、大学に移管される。

個人アーカイブの主な利用者は、所有者本人、その親族、研究者(アクセスが許可されている場合)である。ビジネスアーカイブとは異なり、厳密な保管ルールはなく、資料の整理は作成者の好みによってのみ行われる[11]。 しかし、デジタル技術の発展に伴い、個人のコレクションを保存するための専門的なアプローチ、つまりデジタル化、体系化、データの損失からの保護について考える人が増えている[12]。 現代のテクノロジーは、こうした過去の証言を保存することを可能にしている。個人使用のための古い写真のデジタル化は、技術的なプロセスだけではない。永遠に消えてしまうかもしれない映像に第二の人生を与える機会なのだ[13]

個人アーカイブの中には、最終的に大規模なコレクションの一部となるものもある。例えば、前線からの手紙、前世紀の日常生活を写した写真、口承による記憶の記録は、歴史家や文化史家にとって貴重な資料となる。とはいえ、このようなアーカイブの主な目的は、営利や管理ではなく、個人史や家族史の保存である[14]

デジタルデータのアーカイブ

脚注

  1. ^ a b c 嘉村哲郎 (2015年6月). “芸術資料とアーカイブ/ドキュメンテーション”. 国立国会図書館. 2021年11月3日閲覧。
  2. ^ マリア・バルバラ・ベティーニ 著、湯上良 訳『“アーカイブという概念" アーカイブとは何か: 石版からデジタル文書まで、イタリアの文書管理』法政大学出版局、2012年、16頁。 
  3. ^ マリア・バルバラ・ベティーニ 著、湯上良 訳『“アーカイブという概念" アーカイブとは何か: 石版からデジタル文書まで、イタリアの文書管理』法政大学出版局、2012年、18頁。 
  4. ^ 記録管理学会・日本アーカイブズ学会『“アーカイブを学ぶ" 入門・アーカイブズの世界-記憶と記録を未来に-』日外アソシエーツ、2006年、43頁。 
  5. ^ 大橋 幸泰. “12.史料論の現在(1)―古文書学からアーカイブズ学”. 早稲田大学. 2020年2月26日閲覧。
  6. ^ We Are What We Keep: The “Family Archive”, Identity and Public/Private Heritage”. eprints.whiterose.ac.uk. 2025年4月18日閲覧。
  7. ^ Personal Archiving: What Is It?”. arapahoelibraries.org. 2025年4月18日閲覧。
  8. ^ How to Organize Your Family Keepsakes and Collections”. familytreemagazine.com. 2025年4月18日閲覧。
  9. ^ The Family Archive: Exploring Family Identities, Memories and Stories Through Curated Personal Possessions”. gtr.ukri.org. 2025年4月18日閲覧。
  10. ^ Personal Archive - an overview”. www.sciencedirect.com. 2025年4月18日閲覧。
  11. ^ Personal Archiving: What Is It?”. arapahoelibraries.org. 2025年4月18日閲覧。
  12. ^ The Importance of Personal Digital Archiving (Plus Steps to Get Started)”. lucidea.com. 2025年4月18日閲覧。
  13. ^ Historical Images for Educational Use”. www.grangeracademic.com. 2025年4月18日閲覧。
  14. ^ Understanding the Purpose of Archives - Margot Note”. www.margotnote.com. 2025年4月18日閲覧。

関連項目


アーカイヴ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/09/09 07:06 UTC 版)

アメリカ地理学協会」の記事における「アーカイヴ」の解説

協会のアーカイヴは、私的に維持されているものとしては西半球最大地理学研究図書館地図コレクションとなっている。アーカイヴには、野帳フィールドノート)、オリジナル地図スケッチ写真日誌書簡類、遠征旗やその他の記念品、装備品電報新聞記事切り抜き行事式次第無線交信記録議事録その他の文書文物含まれている。協会図書館には、ラテンアメリカや、両極地域からの膨大な量の収集品があり、15世紀遡るものも含め、その数は100万以上に達している。地図地図帳書籍図書館関係のアーカイヴなどは、1978年ウィスコンシンミルウォーキー大学 (University of WisconsinMilwaukee) へ移管されている。2011年からニューヨーク協会本部と、(ウィスコンシンミルウォーキー大学の)協会図書館は、アーカイヴの電子化と、新たな検索システム構築乗り出した

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