周期性四肢麻痺
発作性に四肢の筋力低下が起こり、それが数時間ないし数日持続し、自然に回復する病気です。筋力低下のエピソードをくり返すものであって、発作時の血清カリウム(K)の値から、低K血性、高K血性、正K血性に3大別されています。
a.病因、病態
低K血性も高K血性も大多数は常染色体優性遺伝をとり、イオンチャンネルの病気です。低K血性では第1染色体長腕(1q31-32)に遺伝子座があり、カルシウムチャンネルdihydropyridine受容体のサブユニットにいくつかの点変異が見付かっています。一方高K血性周期性四肢麻痺、先天性パラミオトニアでは第17染色体(17q13.1-13.3)に遺伝子座があり、Naチャンネルサブユニット遺伝子内に点変異がみいだされています。
遺伝性でないものはアルコール中毒や甲状腺疾患に合併します。
b.症候
筋脱力は、過激な運動、寒冷、感染などが誘因となることが多いとされています。麻痺の持続時間は高K血性では短いのですが、他は数時間から数日に及ぶこともあります。筋力低下は全身性ですが、呼吸筋や顔、頸部の筋肉は侵されません。発作のエピソードが終わると、筋力低下は完全に戻ります。しかし、発作を繰り返していると永続的な筋力低下をみることもあります。高K血性はしばしばミオトニー(筋肉を収縮させた後、筋肉がすぐに弛緩しない状態)を伴います(先天性パラミオトニアと高K血性は同一疾患です)。表5に周期性四肢麻痺の主な症状をまとめました。
低K血性 | 高K血性 | |
遺伝形式 発 症 発作時間 頻 度 誘 因 麻 痺 感覚異常 時 間 性差 予防・治療 | 常染色体優性 10〜20歳代 1時間〜数日 1/数年→1/月あるいは日 糖質、Naの過剰摂取、運動、感染 顔面、呼吸筋、を除いて全身の麻痺 なし 早朝、夜間 男性に症状強い 抗アルドステロン薬、低Na食、KCL | 常染色体優性 小児〜20歳代 1時間以内 毎週 運動後、寒冷、飢餓、K負荷 一般に軽い。ミオトニ−を伴うことあり あり 日中 男性に症状強い 頻回の高糖質食、アセタゾラミド |
表5:周期性四肢麻痺の主な鑑別点 |
c.予後、治療
一般に若年期には発作が頻発しますが、中年期以降になると減少します。ただ発作が頻回の場合は、筋力低下を残すことがあります。
低K血性では急性期に2ー10gの塩化カリウムを経口投与します。間欠期期にはNa、糖質の摂取を制限します。高K血性では発作時に糖質の投与をします。またアセタゾラミド(ダイアモックス)、高アルドステロン薬などが効果あります。
周期性四肢麻痺
(periodic paralysis から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/25 05:57 UTC 版)
周期性四肢麻痺(しゅうきせいししまひ、英: Periodic Paralysis, PP)とは、突然に発作として、両側性に全身の筋力が失われ、しばらくして再び正常に戻る可逆性疾患。
- ^ a b c d e 希少難治性筋疾患に関する調査研究班, p. 1.
- ^ a b 希少難治性筋疾患に関する調査研究班, p. 2.
- ^ 周期性四肢麻痺.
- ^ 希少難治性筋疾患に関する調査研究班, pp. 3-5.
- 1 周期性四肢麻痺とは
- 2 周期性四肢麻痺の概要
- 3 分類
- 4 診断
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