ブックガイド
ブックガイド
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ブックガイド(Book Guide)は、書籍の案内を目的とした文章やこれをまとめた出版物。書評や目録の要素を備えたものもあり、日本においては「本の本」ともいわれ、読書の対象とする書籍の選定材料に使われるほか、図書館のレファレンスサービスにも利用されることがある。
成立と発展
ブックガイドの需要が顕在化したのは19世紀後半とされ、産業革命に伴う出版点数の増加と識字教育の進展に伴う読書人口の増大を起因とする[1]。ジョン・ラボックが1885年に発表した『List of 100 books』、チャールズ・エリオットによるハーバード・クラシクスなどが本格的なブックガイドの始まりとされる[1]。
日本においては、河合栄治郎が1938年に出版した『学生と読書』内の243点の書籍紹介が嚆矢とされ、1954年に新潮社が『昭和文学小説百選』、文藝春秋が『戦後作品ベストテン』を企画するなど、1950年代には出版社や文芸雑誌によるブックガイドやブックランキングの企画が一般化し、1960年代には実用書分野でもブックガイドが出版されていく[1][2]。また、1976年に本の雑誌社が『本の雑誌』を創刊するなど、1970年代から1980年代にかけて、ブックガイドを含め、読書論や出版文化に関する書籍の出版が続き、これらは「本の本」ともいわれるようになる[3][4]。
形式
紀田順一郎の『日本の書物』や『世界の書物』のように読書エッセイの形をとるものもあれば、大阪外国語大学の研究者が中心に編纂した『世界を学ぶブックガイド』のように特定分野を学ぶ上でのリーディングリスト・選択書誌となることに重きを置いたものもある[5][6]。河出書房新社の『読本シリーズ』のようにブックガイドを兼ねたアンソロジーもある[7]。
世界各地の童話のあらすじをまとめた遠藤早泉の『世界名作教育童話一百選』や明治・大正文学の名作をまとめた芥川龍之介の『近代日本文芸読本』などは、国語教育の副読本や読書指導の教材としての性質を持つ[8][9]。また、学校図書館では、いわゆる良書の紹介だけではなく、読者の年齢や読解能力を踏まえた適書という考え方があり、全国学校図書館協議会では『何をどう読ませるか』を1958年から刊行している[10][11]。
意義
膨大な出版物の中で自らが求める書籍を探すための選書手段として利用される[2][12]。書評や目録として優れたブックガイドもあり、特定の土地を舞台とした小説を選書対象としたブックガイドなどは、書誌や件名標目には表れにくいジャンル・テーマ別の文献探索にも役立つことから、レファレンスサービスの参考資料としても使われる[3][13]。選書経験の蓄積が少ない漫画について、宝島社の『このマンガがすごい!』などを選書材料とする図書館もある[14]。
また、ハーバード・クラシクスの影響を受けて、名著集・叢書の刊行が盛んになるなど、古典作品に光を当てるという効果もある[1]。名のある選書者に選書されることで掲載作品の評価が定まる面もあり、水田洋は、河合栄治郎の選書によって阿部次郎などの教養主義的作品の普及度が高まったとしている[15]。一方で、ブック・ガイドに掲載する本の選定は、各選書者の嗜好によるところも大きく、ジョン・ラボックの『List of 100 books』初版では聖書が選外となっていることが議論となった[1]。
脚注
- ^ a b c d e 紀田順一郎 (2000). “名著選定アンケートの今昔”. 學鐙 (丸善雄松堂) 97 (1): 4-9. doi:10.11501/3364274.
- ^ a b 紀田順一郎 (1982). “本の小事典36 ブックガイド”. 本 (講談社) 7 (7): 45. doi:10.11501/3468037.
- ^ a b 山下武 (1979). “いぜん盛んな「本の本」の出版 書物随筆から出版人の伝記まで”. 出版ニュース (出版ニュース社) (1166): 8-9. doi:10.11501/3435495.
- ^ 植田康夫 (1982). “ブック・ガイドは花ざかり”. 太陽 (平凡社) 20 (8): 110. doi:10.11501/1792425.
- ^ 紀田順一郎『世界の書物』新潮社、1977年、5-6頁。doi:10.11501/12443427。
- ^ 岡田新 (1996). “世界を学ぶブックガイド:世界地域研究基本文献目録”. 書誌索引展望 (日本索引家協会) 20 (1): 19-25. doi:10.11501/1730189.
- ^ 植田康夫『当世出版事情』理想出版社、1981年、110-113頁。doi:10.11501/12276473。
- ^ 上笙一郎、富田博之 編『復刻叢書日本の児童文学理論第1期解説』久山社、1987年、24-27頁。doi:10.11501/12461547。
- ^ 滑川道夫『解説国語教育研究:国語教育史の残響』東洋館出版社、1993年、117-120頁。doi:10.11501/13293590。
- ^ 黒沢浩 (1978). “ブックリスト作成の留意点”. 学校図書館 (全国学校図書館協議会) 329: 9-12. doi:10.11501/3431720.
- ^ 半田雄二 (1987). “何をどう読ませるか(全国SLA発行)をめぐって:公共図書館員の立場から”. 図書館雑誌 (日本図書館協会) 81 (8): 453-454. doi:10.11501/11230800.
- ^ 『出版指標年報 1983年』全国出版協会出版科学研究所、1983年、26-27頁。doi:10.11501/12276862。
- ^ 岸美雪 (1989). “小説への主題アプローチ:分類配架とインデキシング”. 現代の図書館 (日本図書館協会) 27 (3): 184-185. doi:10.11501/3433538.
- ^ 吉田倫子 (1999). “"図書館員のためのやさしいマンガの選び方”. みんなの図書館 (教育史料出版会) 269: 37-47. doi:10.11501/3470411.
- ^ 水田洋『読書術』講談社、1982年、33頁。doi:10.11501/12273947。
関連項目
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