ビー‐エム‐ディー【BMD】
読み方:びーえむでぃー
《Becker muscular dystrophy》⇒ベッカー型筋ジストロフィー
ベッカー型筋ジストロフィー
a.病因、病態、病理
ベッカー型の遺伝子座もデュシェンヌ型と同じように、Xp21にあります。デュシェンヌ型と同じように、ジストロフィン遺伝子の欠失が最も多く、患者の約60%にみられます。デュシェンヌ型と異なり、欠失部には3塩基の読みのずれがありません(in frame deletion)。そのために分子量は427kDより小さく、量的には少ないがジストロフィン蛋白は生成されるのです。遺伝子が重複の場合は分子量は大きくなります。また分子量は変わらず、量的に少ないものもあります。
筋生検では筋線維の大小不同、壊死・再生など筋ジストロフィーの所見を備えています。ただし、デュシェンヌ型より一般に軽く、多くの肥大線維を含んでいます。ジストロフィン染色をすると筋線維膜はまだらで薄く(patchy and faint)染まります(図12)。ジストロフィン蛋白量はWesternブロットで測定すると正常よりは量的に減っています。
ジストロフィン抗体で染色すると、ベッカー型ではジストロフィンがまだらではあるが、明らかに存在する。デュシェンヌ型(図7参照)のように完全欠損ではない。 | |
図12: ベッカー型筋ジストロフィーの免疫組織化学的染色 |
デュシェンヌ型:ベッカー型の頻度はは3:1と教科書的にはいわれていました。ジストロフィンテストにより、高クレアチンキナーゼ(CK)血症のみで見いだされたような軽症患者も見いだされ、さらに肢帯型筋ジストロフィーと診断された患者の中からも本症が見いだされ、その頻度は予想より高いことが明らかにされています。わたしたちの研究室ではデュシェンヌ型:ベッカー型=2:1となっています。。
デュシェンヌ型に似たような強い症状のものから、成人発症までと幅があります。中には成人まで全く症状がない人もまれではないようです。筋力低下は躯幹近位筋が好んで侵され、歩行、起立に関する異常が最も多いこともデュシェンヌ型に似ています。中には大腿四頭筋が強く侵され、四頭筋ミオパチー(quadriceps myopathy)の診断を受けることもあります。歩行可能例ではしばしばふくらはぎに筋痛を訴えます。筋力低下はないけれど筋痛が主症状で、検査したらベッカー型だったという例もまれではありません。ふくらはぎにはほとんど例外なく仮(偽)性肥大があります(図13)。まれですがベッカー型には四肢筋の罹患に先行して心肥大、心不全を来たすことがあるので、心臓の定期的チェックが重要といわれています。
17歳男性。ベッカー型では15歳をすぎても歩行可能なのが特徴である。 大腿、上腕筋など近位筋と肩の周囲の筋が萎縮している。ふくらはぎに偽性肥大がある。 | |
図13:ベッカー型筋ジストロフィー |
c.治療
前記のデュシェンヌ型と同じで、本症に特別効く薬はありません。症状のところで述べたように、心症状が早期よりみられる人がまれにあるので、定期的な心機能検査(心電図、心エコー)が必要です。
ベッカー型筋ジストロフィー
ベッカー型筋ジストロフィー | |
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別称 | 良性の仮性肥大を伴う筋ジストロフィー[1] |
X連鎖劣性遺伝 | |
診療科 | 小児科、遺伝医学 |
症候学 | 筋力低下、筋萎縮[2] |
通常の発症 | 5歳から15歳[3] |
原因 | 遺伝子変異[4] |
診断法 | 特徴的臨床所見により疑われ、検査、筋生検、遺伝子検査により確定[3] |
鑑別 | デュシェンヌ型筋ジストロフィー、多発性筋炎、脊髄性筋萎縮症、肢帯型筋ジストロフィー[4] |
治療 | 理学療法[3] |
予後 | 最長寿命:40代[3] |
頻度 | 10万人に3人(米国男性)[4] |
ベッカー型筋ジストロフィー(ベッカーがたきんジストロフィー、英: Becker muscular dystrophy)は、筋力低下や筋萎縮が徐々に進行するという特徴の遺伝子疾患である[2]。ほとんどの場合が脚や骨盤から始まり、歩行が困難になったり転んだりすることが増える[3]。一般的に症状が顕著になるのは5歳から15歳である。合併症には、心筋症などがあげられ、最も一般的な死亡の因由である[4]。
ベッカー型筋ジストロフィーの原因は、タンパク質であるジストロフィンをコードする遺伝子の突然変異による[4]。X連鎖劣性の遺伝による。ジストロノパチー(ジストロフィン異常症)の一種である[2]。診断は、基本的に症状と検体検査か筋生検検査か遺伝子検査によって確定される[3]。ジストロフィン遺伝子の突然変異により起こるデュシェンヌ型筋ジストロフィーより症状は軽い。
完治する治療法はないが、理学療法により症状を軽減することができる場合がある[3]。場合によっては、副腎皮質ホルモンが使用される[4]。ベッカー型筋ジストロフィーは米国の男性10万人あたり約3人に影響している。その他の国々では、男性10万人あたり0.1人から7人の率で影響している。罹患者の最長寿命は40代である[2]。
出典
- ^ “Becker muscular dystrophy: MedlinePlus Medical Encyclopedia” (英語). medlineplus.gov. 2017年3月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年7月30日閲覧。
- ^ a b c d “Duchenne and Becker muscular dystrophy”. NIH.gov. NIH. 2017年3月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年4月17日閲覧。
- ^ a b c d e f g “Becker muscular dystrophy | Genetic and Rare Diseases Information Center (GARD) – an NCATS Program”. rarediseases.info.nih.gov. 2020年11月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年1月20日閲覧。
- ^ a b c d e f Thada, PK; Bhandari, J; Umapathi, KK (January 2020). Becker Muscular Dystrophy. PMID 32310552.
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