Sea Launchとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > Sea Launchの意味・解説 

シーローンチ

(Sea Launch から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/07 00:12 UTC 版)

オーシャン・オデッセイ英語版からのゼニット3SLの打ち上げ

シーローンチ (Sea Launch) は、海上からゼニット3SLロケットを使って、人工衛星を打ち上げる商用サービス会社である。

1995年に米露など多国籍の企業による共同事業として開始されたが、2009年経営破綻を経て、2016年以降はロシアS7グループに所属する[1]。しかし移籍後は、打ち上げは凍結状態にある[2]

概要

シーローンチ・コマンダーオーシャン・オデッセイ英語版

海上発射システムを採用することにより、従来の地上発射の場合のような地理的、物理的制約を受ける事が少なく、海洋上のあらゆる場所から打ち上げが可能となり、地上発射型に比べ経費を減らす事ができる。特に赤道直下まで移動して打ち上げることにより、より効率的に人工衛星を軌道に投入することができ、静止トランスファ軌道に6.1tを投入できる。

打ち上げシステムは司令船「シーローンチ・コマンダー」と打ち上げプラットホーム「オーシャン・オデッセイ英語版」 の2隻で構成されている。母港はカリフォルニア州ロングビーチ。司令船「シーローンチ・コマンダー」も同所で建造された。通信設備・発射管制設備のほか、ロケット整備用格納庫を有する。プラットホーム「オーシャン・オデッセイ」 は石油プラットフォーム改造のものであり、打ち上げ地点でロケットを直立させて発射する。

2008年現在、シーローンチが世界で唯一の海上発射型打ち上げ施設であるが、概念は唯一ではない。1964年から1988年イタリアローマ・ラ・サピエンツァ大学NASAが共同でケニア沖のサン・マルコ・プラットフォームで人工衛星を打ち上げていた。

打ち上げに使用する機体を陸上用に改良し、バイコヌール宇宙基地から打ち上げる「ランド・ローンチ」というサービスも展開している[3]

歴史

シーローンチ連合は1995年に設立された、アメリカ合衆国ロシアウクライナノルウェーの企業による共同事業である。最初のロケットは1999年に打ち上げられた。ボーイングが運営している[4][5]

2006年3月、社長のジム・マサー (Jim Maser) が会社を離れてスペースXに社長として加わると発表した[6]

2007年1月30日の打上げ失敗により経営環境が悪化、2009年6月22日に10億ドル相当の負債を抱え経営破綻し、連邦倒産法第11章の適用を受けた[7]。2009年4月以降、約2年半に渡ってロケットの商業打ち上げは中断されていたが、2011年9月24日ユーテルサット社の通信衛星アトランティックバード7の打ち上げに成功し、商業打ち上げ事業に復帰した[8]

経営破綻後はRSCエネルギアがほとんどの株式を所有していたが、2016年にロシア最大手の航空会社S7航空を持つS7グループにより1億5千万ドルで買収された[1]。司令船と打ち上げプラットホームもロシアに移管されたが、その際に打ち上げ用の機器は取り外されており、2020年現在打ち上げは凍結されている[2][9]

出資

シーローンチの打ち上げプラットホーム オーシャン・オデュッセイ Ocean Odyssey

4カ国の4社が出資している。当初、ケイマン諸島に英国法人として設立をしたが[10]、後にカリフォルニア州に本店所在地を移転し米国法人となった。

2010年に連邦倒産法第11章の適用を受け再建型破産をした後、株式の大多数がロシアの権益に買収された[11]

出資構成を以下に示す。

出資企業 出資割合[10]

(1995 - 2010)

出資割合[11]

(2010 - 2018)

役割
エネルギア ロシア 25% 95% ブロックDM-SL (ゼニット3SLの三段目に使用)
ボーイング アメリカ合衆国 40% 2.5% システム統合、ペイロード・エンクロージャー(打ち上げ中の衛星を保護するノーズコーン)
アケル・ソリューションズ  ノルウェー 20% 2.5% 打ち上げプラットホーム (オーシャン・オデッセイ) 、指令船(シーローンチ・コマンダー)
ユージュノエ設計局 / POユズマシュ  ウクライナ 15% 0% 二段式ゼニットロケット (ゼニット3SLの一段目、二段目に使用)

シーローンチ計画は1995年、ローンチカスタマーとしてヒューズ・エアクラフトが最初の10基とさらに10基のオプション契約を行い、スペースシステムズ/ロラールも5基の打ち上げ契約を行ったことでスタートした[5]

打ち上げ実績

1999年3月27日、最初の打ち上げが行われた。最初の商業衛星の打ち上げは同年10月9日である。

回数 日付 ペイロード 重量 成否
1 1999年3月27日 DemoSat 4.5 t 成功
2 1999年10月9日 DIRECTV 1-R 3.5 t 成功
3 2000年3月12日 ICO F-1 2.7 t 失敗 (墜落)[a 1]
4 2000年7月28日 PAS-9 3.7 t 成功
5 2000年10月20日 Thuraya-1 5.1 t 成功
6 2001年3月18日 XM-2 ROCK 4.7 t 成功
7 2001年5月8日 XM-1 ROLL 4.7 t 成功
8 2002年6月15日 Galaxy IIIC 4.9 t 成功
9 2003年6月10日 Thuraya-2 5.2 t 成功
10 2003年8月7日 EchoStar IX/Telstar 13 4.7 t 成功
11 2003年9月30日 Galaxy XIII/Horizons-1 4.1 t 成功
12 2004年1月10日 Telstar-14/Estrela do Sul 1 4.7 t 成功
13 2004年5月4日 DIRECTV-7S 5.5 t 成功
14 2004年6月28日 Telstar-18 4.8 t 一部失敗(予定軌道に投入出来ず)[a 2]
15 2005年3月1日 XM-3 4.7 t 成功
16 2005年4月26日 SPACEWAY-1 6.0 t 成功
17 2005年6月23日 Intelsat IA-8 5.5 t 成功
18 2005年11月8日 Inmarsat 4-F2 6.0 t 成功
19 2006年2月15日 EchoStar X 4.3 t 成功
20 2006年4月12日 JCSAT-9 4.4 t 成功
21 2006年6月18日 Galaxy 16 5.1 t 成功
22 2006年8月22日 コリアサット5号 4.9 t 成功
23 2006年10月30日 XM-4 4.7 t 成功
24 2007年1月30日 NSS-8 5.9 t 失敗(点火直後爆発)[a 3]
25 2008年1月15日 Thuraya-3 5.2 t 成功
26 2008年3月19日 DirecTV-11 5.9 t 成功
27 2008年5月21日 Galaxy 18 4.6 t 成功
28 2008年7月16日 EchoStar XI 5.5 t 成功
29 2008年9月24日 Galaxy 19 4.7 t 成功
30 2009年4月20日 SICRAL 1B 3.0 t 成功
31 2011年9月24日 Atlantic Bird 7 4.6 t 成功
32 2012年5月31日 Intelsat 19 5.6 t 成功
33 2012年8月19日 Intelsat 21 6.0 t 成功
34 2012年12月3日 Eutelsat-70B 5.0 t 成功
35 2013年2月1日 Intelsat 27 6.2 t 失敗(墜落)[a 4][12]
36 2014年5月26日 Eutelsat 3B 6.0 t 成功
  1. ^ プログラムエラーにより第二段エンジンが早期に停止し海上へ墜落した
  2. ^ 第三段エンジンが早期に停止し予定より低い軌道に衛星が投入されたが、後に衛星側のエンジンで不足分を補うことで予定軌道に到達した。
  3. ^ 発射台上で爆発し、打ち上げプラットフォームが損傷を受けた。原因究明と修理のため打ち上げが1年間凍結された。後の調査で燃料ポンプに金属片が混入したことが原因と判明した。この失敗により打ち上げ事業が滞ったことが、経営破綻の一因になった。
  4. ^ 発射後に徐々に姿勢を崩し始め、25秒後にエンジンが自動停止して海上へ墜落した。

ランド・ローンチ

ランド・ローンチ (Land Launch) はシーローンチの子会社であり、ゼニットロケットをバイコヌール宇宙基地の45番射場から打ち上げる。使用されるロケットは2段式のゼニット-2SLBと3段式のゼニット-3SLBである。

最初の打ち上げは2008年4月28日05:00 GMTにゼニット-3SLBでAMOS-3 (AMOS-60) を静止軌道へ投入した。

2回目の打ち上げは2008年8月21日にマレーシアのMEASAT-3A通信衛星を打ち上げる予定だったが打ち上げの準備中にクレーンによって破損した[13]

2回目の打ち上げは2009年2月26日にテルスター11Nを成功裏に打ち上げた。

ランドローンチはゼニット-3SLを用いるシーローンチとは異なり、ロシア製の小型フェアリングを使い軽量化される等、改良されたゼニット-3SLBが用いられ、ペイロードは静止トランスファ軌道を経由せずに直接静止軌道へ投入される。高緯度からの打上げのため、シーロンチに比べ打上げ能力は6割程度の3.7tとなっている。

打ち上げ実績

回数 日付 機種 ペイロード 重量 ペイロードの種類 軌道 結果 備考
1 2008年4月28日[14] ゼニット 3SLB AMOS-3 1.3t 商業用 通信衛星 静止軌道 成功 ランドローンチの最初の打ち上げ
2 2009年2月26日[15] テルスター11N 4.0t
3 2009年6月22日[16] MEASAT-3a 2.3t
4 2009年11月30日[17] インテルサット15 2.4t
5 2011年10月5日 インテルサット18 3.2t
6 2013年8月31日 AMOS-4 4.2t

出典

  1. ^ a b ロケット海上打ち上げ企業のシーローンチ、ロシア航空会社が買収へ 約2年後に再打上げ目指す”. Sorae.jp (2016年10月9日). 2016年10月9日閲覧。
  2. ^ a b Sea Launch “frozen” after ships moved to Russia” (英語). SPACENEWS (2020年4月24日). 2022年11月16日閲覧。
  3. ^ ただし、運営母体は露SIS社であり、打ち上げもSIS社が担当する。シーローンチ社は打ち上げ計画の立案、顧客との商談などを行う。
  4. ^ “Sea Launch System - Commercial heavy-lift launch services, USA”. Aerospace-technology.com. (2006年). http://www.aerospace-technology.com/projects/sealaunch/ 
  5. ^ a b “Zenit 3SL”. Orbireport.com. (1997–2000). http://www.orbireport.com/Launchers/Zenit_3SL/Architecture.html 
  6. ^ “Jim Maser to Join SpaceX as President and Chief Operating Officer”. SpaceRef.com. (2006年5月17日). http://www.spaceref.com/news/viewpr.html?pid=19291 
  7. ^ “UPDATE 1-Sea Launch files for Chapter 11 protection” (英語). Reuters. (2009年6月23日). http://www.reuters.com/article/rbssIndustryMaterialsUtilitiesNews/idUSBNG17593820090623 
  8. ^ “Sea Launch Returns to Flight with Smooth Satellite Flight”. SPACE.COM. (2011年9月27日). http://www.space.com/13092-sea-launch-rocket-launch-satellites.html 2011年9月29日閲覧。 
  9. ^ Sea Launch to be restored at cost of about $470 mln” (英語). RUSSIAN NEWS AGENCY (2020年8月24日). 2022年11月16日閲覧。
  10. ^ a b “The Sea Launch Partnership”. Energia. オリジナルの2001年2月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20010214235743/http://www.energia.ru/english/energia/sea-launch/partner.html 
  11. ^ a b Raymond, Nate (2013年2月4日). “Boeing sues Sea Launch partners for $350 million”. Reuters. https://www.reuters.com/article/2013/02/04/boeing-sealaunch-idUSL1N0B31GP20130204 2014年5月27日閲覧。 
  12. ^ “ゼニート3SL、インテルサット27の打ち上げに失敗”. sorae.jp. (2013年2月1日). https://sorae.info/030201/4770.html 2013年2月2日閲覧。 
  13. ^ Morris, Jefferson (2008年8月12日). “Crane Damages MEASAT 3A At Baikonur”. アビエーションウィーク & スペーステクノロジー. 2012年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。
  14. ^ Amos 3”. NASA NSSDC. 2018年3月29日閲覧。
  15. ^ Telstar 11N”. NASA NSSDC. 2018年3月29日閲覧。
  16. ^ "MEASAT-3a satellite successfully launched" (PDF) (Press release). MEASAT. 22 June 2009. 2018年3月29日閲覧
  17. ^ "Land Launch Successfully Deploys Intelsat 15 Satellite to Orbit" (Press release). Sea Launch. 30 November 2009.[リンク切れ]

関連項目

外部リンク


「Sea Launch」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「Sea Launch」の関連用語

Sea Launchのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



Sea Launchのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのシーローンチ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS