EU法の優位性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/10 02:32 UTC 版)
欧州司法裁判所においては加盟国の国内法、時には憲法でさえも EU法の方が優越すれるという判決が下されている。EU法と加盟国の法令が相反する状況では EU法が優先され、国内法は適用されないことになっている。この原理は EU法の優先と考えられているが、これは欧州司法裁判所におけるイタリアの市民が電力会社を訴えた裁判で採用されたものである。原告のフラミニオ・コスタはエネルの株主であり、同社の国営化に反対していた。その抗議を表すために電気代の支払いを拒否し、そのうえで国営化は国家が市場を阻害するとしてローマ条約第86条、第87条に違反すると訴えていた。イタリア政府はこの件について、国内法で対処できるとしてたいした問題にならないと考えていた。欧州司法裁判所は、市場原理の阻害に関する条約に違反するとしてイタリア政府を訴えることができるのは欧州委員会だけであるとして、イタリア政府を支持した。そのため一私人には欧州共同体の条約について争うことはできないとして、コスタに訴訟を提起する余地はないとした。ところがコスタが正当な手続で加盟国政府が EC法に反するという訴えを提起することについては、法理としてEC法の優越が当てはまるため、加盟国内の裁判所で判断される前に欧州司法裁判所はイタリア政府と反対の見解を示した。つまり、国内法がEC法に反しているにもかかわらず、そのことを訴えることができないというのならば、EC法は有効なものではないと判示した。 (日本語仮訳)EC法としてその性質を失うことなく、またその法的根拠に疑念がなければ、相反するような法律が国内法に存在していても、条約から派生した法律、独立した法源はその特殊性のために無効になることはないという考え方に従うものである。 しかし、EC法が加盟国の国内法に優先するものとして各国に受け入れられている一方で、法的紛争が生じるとき、EU法が国内法を無効にする根拠について、欧州連合の諸機関が示す解釈に関しては、加盟国すべてが共有しているものではない。 多くの加盟国の最高裁判所では、EC法が加盟国の憲法の基本的原則、つまり欧州連合の諸機関ではなく、加盟国(正確には加盟国の裁判所)の最終的な判断を尊重するものである限りは、EC法は優位性を持つという判断を示している。これは加盟国が「条約の主体」であることを反映したものであり、EU法の有効性の根拠となっている。このほかの事例では、憲法にEC法の優位性を記載している国がある。例えばアイルランド憲法では「欧州連合およびその諸共同体の一員であるための義務として、国家が施行し、採択した法令はこの憲法の条文により無効となることはない」という条項が存在する。
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