DMCAセーフハーバー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 01:55 UTC 版)
「フィールド対Google事件」の記事における「DMCAセーフハーバー」の解説
ここまでで「Cachedリンクの掲示行為」が著作権の直接侵害ではなくかつフェアユースであると法廷は認めた。更に法廷は、「キャッシュ自体が"合衆国法典第17編第512条 17 U.S.C. § 512(b)"に基づくセーフ・ハーバー・プロテクションの対象である」との被告の口頭申立を認めた。 原告は被告が"§ 512"の(a)から(d)全てについての認定要件を満たさないとの略式判決を主張する。しかし(a)、(c)、及び(d)に関して、被告が要件を満たさないとの理由を原告は一切論じていないし、説明していない。連邦民事訴訟規則(英語版)56条(c)(Fed.R.Civ.P. 56(c))は略式判決の認定に関して、「重要な事実に関する争点が間違いなくない場合、(原告フィールドの)判決は法の問題として認められる」(There is "no genuine issue of material fact and [Field] is entitled to judgment as a matter of law")と規定している。これゆえ、"§ 512 (a)、(c)、及び(d)"に関する原告の申立は規則56条(c)の基本的な立証を欠いているから、却下される。 "§ 512(b)(1)"は「システム・キャッシュ」に関するものであり、ある特定の要件が満たされるならば「サービス・プロバイダが管理しまたは運営するシステムまたはネットワーク上に素材を中間的かつ一時的に蓄積したことによって、著作権の侵害を生じた場合、当該サービス・プロバイダは、(中略)著作権の侵害に関して金銭的救済(中略)について責任を負わない(後略)」ものとするものである。原告は被告の持つキャッシュが前記のセーフ・ハーバーの以下に挙げる3つの要件を欠いていると強く主張する。 まず初めに、被告のキャッシュ運用は"§ 512(b)(1)"の要件である「素材(material)の中間的(intermediate)かつ一時的な(temporary)蓄積(storage)」とは異なるものであると原告は主張するが、この主張は不正確(incorrect)である。その根拠として本法廷は"Ellison v. Robertson, 357 F.3d 1072, 1081 (9th Cir.2004)"を引用する。この事件においては、Usenet上に投稿された著作物が約14日間蓄積されかつアクセス可能となっていたが、裁判所はこの行為は"§ 512(a)"の要件である「中間的」かつ「一過性な」("transient")蓄積であると認定した。エリソン事件においては、Usenetに投稿された素材の「一時保管場所」(temporary repository)が、情報投稿者及び当該情報を要求する者との間で運用されていたと判示されているが、本件においても被告のキャッシュは情報投稿者及び当該情報を要求するエンドユーザーとの間で運用されている素材一時保管場所であると言える。加えて鑑定人の供述書によると、当該キャッシュ内に蓄積されているウェブページの複製はおおよそ14日間から20日間存在する。このことから、法廷は、おおよそ14日間の一過性の蓄積が"§ 512(b)(1)"に基づく「一時的」蓄積とみなされたエリソン事件と同じく、被告のキャッシュ蓄積も一時的であるものと認める。以上から、法廷は、キャッシュ蓄積済みの素材を被告が「中間的かつ一時的に保管」した行為はDMCAの意図するところの行為であると結論付ける。 続いて原告は、被告のキャッシュが"§ 512(b)(1)(B)"の要件を満たさないと主張した。"§ 512(b)(1)(B)"は、素材をオンライン上で利用可能状態にする者から当該素材が転送されることを要件とする。本件では原告から原告以外の第三者へ向けて原告の著作物が転送されることが要件である。原告は自身のウェブサイトのページを、原告とは異なる人物である被告の要求により、被告の持つGooglebotへ向けて転送した。以上から、被告のキャッシュは"§ 512(b)(1)(B)"の要件を満たす。 最後に、原告は、被告のキャッシュが"§ 512(b)(1)(C)"の要件を完全に満たさないと主張した。"§ 512(b)(1)(C)"は、被告の「自動的かつ技術的な処理」("an automat[ed] technical process")によりウェブページの蓄積を行うこと、及び、「その処理は(発信サイトからの)素材へのアクセスを要求した者に向けて素材を利用可能な状態にする目的のためである」("for the purpose of making the material available to users . . . who . . . request access to the material from [the originating site]")ことを要件とする。そのうち、前者の、被告が自動的かつ技術的な処理を用いて蓄積しているというのは両当事者で争いはない。同様に、既に指摘した通り、ウェブページをキャッシュに蓄積する被告の主たる目的の一つが、発信サイトからの素材、即ちウェブページの要求が何らかの理由で応じられない場合に、当該ウェブページへのアクセスを可能にすることであるのは、やはり争いがない。以上から、被告のキャッシュは"§ 512(b)(1)(C)"の要件を満たす。 被告は"§ 512(b)"に関する争点がないとの主張を「法の問題として」立証したから、被告が"§ 512(b)"のセーフ・ハーバーに不適当であるとの原告の略式判決申立は却下される。"§ 512(b)"に関するその他の要件に関しては両当事者間で一切争いはない。従って、被告が"§ 512(b)"のセーフ・ハーバーに相当との部分的略式判決申立が認められる。
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