フィールド対Google事件とは? わかりやすく解説

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フィールド対Google事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 01:55 UTC 版)

フィールド対Google, Inc.事件Field v. Google, Inc., 412 F.Supp. 2d 1106 (D. Nev.英語版 2006))とは、Googleに対し提起された著作権侵害訴訟である。この事件はGoogleの「検索エンジンのキャッシュによるハイパーリンクの掲示(display)」がフェアユースとして認められた一つの裁判例であり、地区裁判所という下級審ながらもその判例が他のいくつかの判例へ引用されている[or 1][or 2]


注釈

  1. ^ 誠実に行為をなした(act in good faith)か、または法で定められる基準を満たせば民事上の法的責任(liability)を軽減するという制定法上の条項。DMCAの場合、その「第2編: オンライン著作権侵害責任制限法英語版」(Title II: Online Copyright Infringement Liability Limitation Act, OCILLA, 合衆国法典第17編第512条 17 U.S.C. § 512)に実質的規定が存在する。ここにはオンライン・サービス・プロバイダ英語版ISPなどオンライン・サービスを提供する全ての事業者。ちなみにISPは合衆国法典第17編第512条 17 U.S.C. § 512(a)のいわゆる"conduit",「『導管』型事業者」に含まれる)のサービス内容(同条(n)でいうseparate and distinct functions, 「別個独立の機能」)に対し、著作権侵害に対する法的責任の制限される内容とそれが認められるための条件が規定されている。本件の場合、被告のキャッシュは"(b) System Caching"(システム・キャッシング)に該当すると法廷は認定した。ところで"(d) Information Location Tools"(情報特定手段)は検索エンジンのことを指しているのだが、両当事者も法廷もこのことには触れていない。本法は、日本法上で完全には合致するものはないが、プロバイダ責任制限法の一部が相当する。
  2. ^ サマリー・ジャッジメント。裁判官が争点が無いとの心証を得た場合に、陪審員による事実審理(trial)を省略し下す決定。連邦民事訴訟規則英語版 Rule 56に基づく。
  3. ^ のちに述べるCachedリンクという被告サービスの機能提供行為により、インターネット上での「公衆への頒布権」(right of public distribution, 合衆国法典第17編第106条 17 U.S.C. § 106(3))を侵害したと原告は主張する。cf. 公衆送信権
  4. ^ Order, p. 7 (412 F.Supp.2d 1114), "Statement of procedural history & undisputed facts"(「手続履歴及び争いのない事実の供述」)の27.によると、原告の51の著作物は提訴前の2004年1月16日に合衆国著作権局登録されており(registered)(著作権局の登録データを参照せよ)、法定損害賠償請求の条件である合衆国法典第17編第412条 17 U.S.C. § 412の規定は満たされている。損害額は1著作物当たり5万ドル、計255万ドルであると算定。この時原告は被告の行為が故意であると主張したため、単位著作物当たりの請求額が"17 U.S.C. § 504(c)(2)"に基づき増額されたものとなっている。詳しくは記事"故意侵害による法定損害賠償"を参照。
  5. ^ 詳しくは、Googleのヘルプページ他ページ)を参照。Googleのインタフェース表示が日本語の場合、当該ハイパーリンクは「キャッシュ」と表示されている。
  6. ^ Cachedページ上で検索した文字列をハイライトする機能を指す。
  7. ^ Order, p. 11 (412 F.Supp.2d 1116)によると、少なくとも原告は知っている。また被告側鑑定人Expert witness)は以下に述べるタグなどはもはや業界標準であり広く知れ渡っていると主張し法廷もそれを認めている。
  8. ^ 例えばOrder, p. 7 (412 F.Supp.2d 1114)の"Statement of procedural history & undisputed facts", 28.によると、原告がrobots.txtに、検索エンジンのボットのアクセスを拒否するのではなく、むしろサイト全体のクロールを全ての検索エンジン・ボットに許可(allow)するための指示をわざわざ書き込んでいる。法廷は原告が被告のキャッシュから原告の著作物を除去することは先述した業界標準の規約を使用すれば可能であったと同29.で説示する。
  9. ^ counsel. 法廷での代理人。通常は弁護士。
  10. ^ 被害者が侵害者の過失negligence)を立証することが不要となる法的責任。cf. 無過失責任。日本の著作権法は損害賠償請求の要件として侵害者の過失または故意であることを立証する必要がある(民法709条及び著作権法114条)。これに対し米国においては著作権侵害の賠償責任(damages)は厳格責任であると定められている。文化庁による次の資料を参照せよ。(文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会(第6回)議事録 - 資料4
  11. ^ a b 変容的性質英語版transformativeness)とは、利用元の著作物よりも優れていたり、新しい観点に立ったものである場合の、著作物の性質を示す用語である。これは連邦裁判官ピエール・N・レヴァル英語版が1990年、ハーバード・ロー・レビュー英語版上で発表した論文「フェアユース基準に向けて」("Toward a Fair Use Standard")にて提唱しているものであり、彼は創作活動の奨励を本義とする著作権法において、利用の変容性とその程度がフェアユース認定の重要な要素を占めていると主張している。詳しくは文化庁の次の資料を参照せよ。著作権制度における権利制限規定に関する調査研究、pp. 24-27 (PDF) 、平成21年3月。ちなみにこのレヴァル論文がキャンベル事件の法廷命令文に引用されている。
  12. ^ オー・プリティ・ウーマンパロディ作品を著作権侵害で訴えた事件。裁判所はフェアユースと認めている。
  13. ^ 法廷命令文によると、被告側鑑定人がその証拠として、原告のウェブページのCachedリンク・ページのスクリーンキャプチャーを供述書に添付している。

出典

  1. ^ Order, p. 24 (412 F.Supp.2d (at) 1125)
  2. ^ Order, p. 1 (412 F.Supp.2d 1110)
  3. ^ a b Order, p. 7 (412 F.Supp.2d 1114), "Statement of procedural history & undisputed facts", 27.
  4. ^ Order, pp. 1-2 (412 F.Supp.2d 1110)
  5. ^ a b c Order, p. 2 (412 F.Supp.2d 1110)
  6. ^ Order, pp. 2-3 (412 F.Supp.2d 1110-1111)
  7. ^ Order, pp. 4-5 (412 F.Supp.2d 1111-1112)
  8. ^ Order, p. 5 (412 F.Supp.2d 1112)
  9. ^ Order, pp. 5-7 (412 F.Supp.2d 1112-1113)
  10. ^ Order, p. 7 (412 F.Supp.2d 1113)
  11. ^ Order, p. 8 (412 F.Supp.2d 1114)
  12. ^ Kelly v. Arriba Soft Corp., 336 F.3d 811, 817 (9th Cir.2003) (en) ; 合衆国法典第17編第501条 17 U.S.C. § 501.
  13. ^ Religious Tech. Ctr. v. Netcom On-Line Commc'n Servs., Inc., 907 F.Supp. 1361, 1369-70 (N.D.Cal.1995) (en).
    「直接侵害は被告による意思的行為であることを要求する。例えば機械が他人の行為を契機に自動的に複製する場合は不十分である。」 ;
    CoStar Group, Inc. v. LoopNet, Inc., 373 F.3d 544, 555 (4th Cir.2004) (en).
  14. ^ a b Order, p. 9 (412 F.Supp.2d 1115)
  15. ^ Order, pp. 9-10 (412 F.Supp.2d 1115)
  16. ^ Order, pp. 10-11 (412 F.Supp.2d 1115-1116)
  17. ^ a b Order, p. 11 (412 F.Supp.2d 1116)
  18. ^ Order, pp. 11-12 (412 F.Supp.2d 1116)
  19. ^ Order, pp. 12-13 (412 F.Supp.2d 1116-1117)
  20. ^ Order, p. 13 (412 F.Supp.2d 1117-1118)
  21. ^ Campbell v. Acuff-Rose Music, Inc., 510 U.S. 569, 579, 114 S.Ct. 1164, 127 L.Ed.2d 500 (1994) (en, 日本語訳).
    「第1番目の因子、即ち、利用の変容的性質英語版の成否に主として着目」() ;
    Leibovitz v. Paramount Pictures Corp., 137 F.3d 109, 114-15 (2d Cir.1998) (en).
    「第1番目のフェアユース因子に主としてその基礎を置くパロディに関して、フェアユースとの略式判決を認める」
  22. ^ Harper & Row, Publishers, Inc. v. Nation Enters., 471 U.S. 539, 566, 105 S.Ct. 2218, 85 L.Ed.2d 588 (1985) (en).
    「(第4の)因子がフェアユースの唯一最も重要な要素であるのは疑う余地がない。」
  23. ^ Order, pp. 13-14 (412 F.Supp.2d 1118)
  24. ^ a b Order, p. 14 (412 F.Supp.2d 1118)
  25. ^ Kelly, 336 F.3d at 820
  26. ^ Order, pp. 14-16 (412 F.Supp.2d 1118-1119)
  27. ^ Order, pp. 16-17 (412 F.Supp.2d 1119-1120)
  28. ^ Order, p. 17 (412 F.Supp.2d 1120)
  29. ^ Order, pp. 17-19 (412 F.Supp.2d 1120-1121)
  30. ^ Order, p. 19 (412 F.Supp.2d 1121)
  31. ^ Order, p. 19 (412 F.Supp.2d at footnote 9.)
  32. ^ a b Order, pp. 19-20 (412 F.Supp.2d 1122)
  33. ^ 被告側鑑定人の供述書(Declaration, Decl.)及び証拠物件英語版(Exhibit, Ex.)によると、2004年の事件当時は http://www.google.com/remove.html に除去方法が掲示されていたことをこの部分の事実認定の根拠として挙げている(Brougher Decl. ¶¶ 18-22.(pp. 4-5) ; O'Callaghan Decl. Ex. 5(p. 1))。参考までに、2011年時点でのGoogleのヘルプによると、URL 削除ツールなる「今すぐ削除する必要のあるページ」の除去を目的としたツールが存在する。
  34. ^ Order, pp. 20-21 (412 F.Supp.2d 1122-1123)
  35. ^ Order, p. 21 (412 F.Supp.2d 1123)
  36. ^ Order, pp. 21-22 (412 F.Supp.2d 1123)
  37. ^ a b c 合衆国法典第17編(1976年著作権法)”. www.cric.or.jp. 2021年2月27日閲覧。
  38. ^ Order, p. 22 (412 F.Supp.2d 1123)
  39. ^ Order, pp. 22-23 (412 F.Supp.2d 1124)
  40. ^ a b Order, p. 23 (412 F.Supp.2d 1124)
  41. ^ Order, p. 24 (412 F.Supp.2d 1124-1125)
  1. ^ キャッシュは著作権侵害にあたらず--グーグルが裁判で勝訴”. CNET (2006年3月17日). 2011年12月15日閲覧。
  2. ^ How this document has been cited
  3. ^ 次は、訴訟提起時のコンテンツ・データである(インターネットアーカイブ提供によるスナップショット)。Welcome to blakeswritings.com


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