CMT Type 1 (CMT1)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/12 04:55 UTC 版)
「シャルコー・マリー・トゥース病」の記事における「CMT Type 1 (CMT1)」の解説
シャルコー・マリー・トゥース病の中で最も頻度が高いタイプである。常染色体優性遺伝。脱髄を伴い、神経伝導速度の顕著な低下が見られる。以下のサブタイプは皆同様な臨床症状を示す。 CMT type 1A - CMT1A (OMIM 118220)- CMT Type1のサブタイプの中では最も頻度が高い。PMP22遺伝子(17p11.2)の重複によって生じる。神経伝導速度は平均15-20m/s。 CMT type 1B - CMT1B (OMIM 118200) - プロテイン・ゼロ(protein zero(P0))をコードしているMPZ遺伝子(1q22)の変異により生じる。神経伝導速度は20m/s以下。 CMT type 1C - CMT1CはLITAF Gene(16p13.1-p12.3)が原因遺伝子である。神経伝導速度は平均15-20m/s。 CMT type 1D -CMT1DはEGR2 Gene(10q21.1-q22.1)が原因遺伝子である。神経伝導速度は平均15-20m/s。 CMT type 1E -CMT1EはPMP22遺伝子(17p11.2)の点突然変異によって生じる。 PMP22/CMT1A(PMP22 duplication) PMP22は主要なミエリン構成蛋白質のひとつでミエリン蛋白全体の20%を占めるものである。PMP22を含む1.4MBのゲノム重複により通常2コピーのPMP22遺伝子が3コピーになるためにFISH法で遺伝子診断ができる。PMP22をはさんで類似した配列をもつ領域が17番染色体にありこれが染色体の組み換えのときに誤った部位で組み換えが起こり欠失や重複が生じると考えられている。CMTの多くはこの異常で生じている。アスコルビン酸(ビタミンC)の大量投与でPMP22の発現を抑制できCMT1Aモデルマウスで有効という報告があったが臨床試験では効果は認められなかった。ニュートロピン3(NT-3)治験のパイロット試験で臨床効果が得られたという報告もある。予後不良な疾患ではないため遺伝子治療などは試みられていない。PMP22の過剰発現はPI3K-AKT-mTORのシグナル伝達を負に制御し、その結果Ras-Raf-MEK-ERK伝達系のへの抑制が低下する。この2つのシグナル伝達系のバランス異常がシュワン細胞分化障害を誘導する。ニューレグリン-1治療はPI3K-AKT-mTORとRas-Raf-MEK-ERK伝達系のバランス障害を是正する。C22などいくつかのモデルマウスが知られている。 P0蛋白(Myelin Protein Zere、MPZ)遺伝子異常/CMT1B P0蛋白は分子量28000の糖蛋白であり末梢ミエリンを構成する蛋白の約50%を占める。重層するミエリン膜を互いに固定するボトルのような役割を果たす。脱髄型であるCMT1Bの原因でもあり軸索型CMT2I/Jの原因でもある。脱髄型では早期発症であることが多い。軸索型は発症年齢が高く成人後に発症する。早発型と遅発型で遺伝子変異も異なる。 CMT1E CMT1EはPMP22遺伝子の点突然変異で引き起こされるCMT1の稀なタイプである。CMT1全体の1~5%を占めると考えられている。かつてはPMP22の点突然変異によっておこる脱髄性ニューロパチーはCMT1Aと分類されていたが、PMP22の重複と点突然変異で病態が異なることが明らかになり区別されるようになった。PMP22のミスセンス変異でおこり、常染色体優性遺伝の遺伝形式をとることが多い。臨床症状は遺伝性圧脆弱性ニューロパチーのような反復性の運動麻痺など非典型例もあるが多くはCMT1Aより重篤な進行性の筋力低下を示す。デジュリーヌ・ソッタス病のような臨床症状をしめすことがある。TremblerマウスやTrembler-JマウスがPMP22の変異をもつ本疾患のモデルマウスであり、同様の変異の例も報告されている。
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