1898-1912年
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「ローベルト・ヴァルザー」の記事における「1898-1912年」の解説
1898年、文芸批評家でありベルン日刊新聞『ブント紙(Der Bund)』の文芸欄編集者J. V.ヴィートマン(Joseph Victor Widmann)が、新聞日曜版にヴァルザーの詩6篇を掲載した。これに注目したフランツ・ブライ(Franz Blei) は1899年、文芸誌『インゼル (Die Insel)』周辺のユーゲントシュティール(Jugendstil)のグループにヴァルザーを引き入れ、ここでヴァルザーはヴェーデキント(Frank Wedekind)、ダウテンダイ(Max Dauthendey)、ビーアバウム(Otto Julius Bierbaum)等と知り合った。『インゼル』にはその後もヴァルザーの詩や小劇、散文小品が掲載された。 ヴァルザーは1905年まで主にチューリヒに居を定め、市内でたびたび転居したが、その間もトゥーン(Thun)、ソロトゥルン(Solothurn)、ヴィンタートゥア(Winterthur)、ミュンヘン(München)といった街や姉リーザのいるビール湖畔の村トイフェレン(Täuffelen)で暮らした。1903年に初年兵学校を卒業し、夏からチューリヒ近郊ヴェーデンスヴィル(Wädenswil)の技術者・発明家カール・ドゥプラー(Carl Dubler)のもとで「助手」として雇われたが、このエピソードは小説『助手(Ger Gehülfe)』(1908)の素材となった。1904年、『フリッツ・コハーの作文集(Fritz Kochers Aufsätze) 』がインゼル社から刊行され、これが初めての出版本となった。 1905年初夏、ヴァルザーはベルリンで召使養成コースを修了し、同年秋にはオーバーシュレージエン(Oberschlesien)のダムブラウ城(Schloss Dambrau)で従僕として数ヶ月間雇用された。この「従属」というテーマはその後、彼の作品全体を貫くことになるが、とくに小説『ヤーコプ・フォン・グンテン(Jakob von Gunten)』(1909)においてはっきりと現れている。1906年始め、ヴァルザーは再びベルリンへ赴いた。当時ベルリンでは兄カールが画家・エッチング画家・舞台美術家として活躍しており、ヴァルザーに作家や編集者、舞台関係者の集まりへの門戸を開いた。ヴァルザーは時折ベルリン分離派の秘書として働いたこともあり、この時期に編集者ザムエル・フィッシャー(Samuel Fischer)やブルーノ・カッシーラー(Bruno Cassirer)、企業家ヴァルター・ラーテナウ(Walther Rathenau)、俳優アレクサンダー・モイッシ(Alexander Moissi)と知り合ったことはとくに重要である。 ヴァルザーはベルリン滞在中、6週間で小説『タンナー兄弟姉妹(Geschwister Tanner)』を書き上げ、1907年に出版した。2作目の小説『助手』の刊行は1908年、『ヤーコプ・フォン・グンテン』の刊行が翌年に続いた。これらは全てブルーノ・カッシーラー出版から刊行されたが、当時の編集顧問はクリスティアン・モルゲンシュテルン(Christian Morgenstern)であった。 この時期ヴァルザーは小説と平行して散文作品も執筆し、言葉遊びをしながら、そしてきわめて個人的に、貧しいのらくら者の視点から、たとえば「アッシンガー(Aschinger)」や「ゲビルクスハレン(Gebirgshallen)」といった大衆居酒屋の様子をスケッチした。彼の小説や散文作品は『シャウビューネ誌(Schaubühne)』、『新ルントシャウ誌(Neue Rundschau)』、『ツークンフト誌(Zukunft)』、『ラインランデ誌(Rheinlande)』、『新チューリヒ新聞(Neue Zürcher Zeitung)』、『新メルキュール誌(Die neue Merkur)』 といった新聞や文芸誌に掲載され、きわめて好意的に受け入れられた。ヴァルザーはベルリンで文学活動の基盤を固めたのである。 彼の散文はとくにローベルト・ムージル(Robert Musil)やクルト・トゥホルスキー(Kurt Tucholsky)に称賛され、ヘルマン・ヘッセ(Hermann Hesse)やフランツ・カフカ(Franz Kafka)といった作家たちに愛読された。
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