1000TCR
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/15 08:30 UTC 版)
「フィアット・600」の記事における「1000TCR」の解説
1968年から大幅な変更が許されるCSIグループ5(特殊ツーリングカー)規定にあわせて、アバルトは1000TCにさらなる改良を施す。「テスタ・ラディアーレ」と呼ばれる半球形の燃焼室を持つシリンダーヘッドを採用し、OHVながら燃焼効率をより高めたことから982 ccの排気量で114 PSを発揮するに至った。正式名称は「アバルト・1000ベルリーナコルサ」で以前と変わりないが、愛好家の間では「ラディアーレ」を意味するRを附して「1000TCR」と通称され、従来型の1000TCと区別されている。 こうして誕生した1000TCRは、1968年3月24日にモンツァ・サーキットで開催されたジョリー・クラブ4時間でデビュー。しかし、トラブルにより記録を残すことはなかった。 1970年1月、CSIの新規定に適応させてアップデートした1000TCRのグループ2仕様を発表。このモデルから太いタイヤを収めるため、新たにデザインされたフロント・リアフェンダーを備え、コーナリング性能を向上させた。また、サイド・リアウィンドウをアクリル製とするなど、さらに軽量化が突き進められ一段と戦闘力を高めた。エンジンは圧縮比を13:1まで高めると共に、テスタ・ラディアーレに2基のツインチョーク・ウェーバー40DCOE2を組み合わせることで最高出力は114 PSに達し、最高速は215 km/hをマークした。 エクステリアもよりアグレッシブになり、フロントに備わる巨大なラジエーターと大きく張り出したリアフェンダー、水平に開いたエンジンフード、大径エキゾーストパイプ、スカート下に覗くアルミ製の大型オイルサンプがそのパフォーマンスを誇示していた。 その後も1000TCRの改良は続けられたが、大きなところではリアサスペンションに新設計の鋼管製トレーリングアームを採用した点である。キャンバー変化を最小限に抑えながらサスペンションストロークを大きく取ることに成功し、コーナリング時の安定性が大きく改善されラップタイムの短縮に貢献した。また最終改良型では、600由来のロワーアームを兼ねる横置きリーフスプリング式のフロントサスペンションが廃され、「ペントラーレ」と呼ばれるクロスメンバーにAアームとコイルスプリングを用いる方式に変更し、細かなセッティングが可能となったことからコーナリング性能をより高めた。 こうしてツーリングカーレースで1,000 ccクラスの王者であり続けた1000TCRだが、1971年になるとヨーロッパツーリングカー選手権のディヴィジョン1が1,000 cc以下から1,300 cc以下に変更され、絶対的な排気量の差は如何ともし難く、アバルトは1000TCRのワークス参戦の中止を決定する。こうした中で1971年10月15日にアバルト社はフィアットに吸収され、フィアットのラリー部門と市販車のスポーツバージョンの開発を担当することになる。これによりアバルトのサーキットレースのプログラムはすべて中止されるが、その後もプライベーターによるレース参戦は続けられ、1972年のイタリアツーリングカー選手権で1,000 ccクラスのチャンピオンに輝いている。
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