高齢化と長期化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 01:21 UTC 版)
2010年代中盤まで、引きこもりは若者の問題であると考えられており、不登校問題と同一視されてきた経緯から、支援対象者は10歳代から20歳代を想定した場合がほとんどであった。内閣府は2016年9月、サンプル調査に基づき、15〜39歳の若年層の引きこもりが全国で約54.1万人(統合失調症の者も含めた場合、約56.3万人)に上るとの推計を公表した。その内、準引きこもり(ふだんは家にいるが、自分の趣味に関する用事のときだけ外出する)が約36.5万人、狭義のひきこもり(近所のコンビニなど近場以外に外出しない状態か殆ど家に出ない状態)が約17.6万人であった。内閣府調査で対象外だった40歳以上の引きこもりについて、KHJ全国ひきこもり家族会連合会は、16万人いると推計している。 近年では引きこもりの長期化や、社会に出た後に引きこもりになってしまうケースなどにより、20歳代や30歳代以上が増加している。KHJが2016年から2017年にかけて実施したアンケートでは、引きこもりの平均年齢は33.5歳、40歳代も25%が占めた。引きこもりの平均期間は10.8年間で、調査対象の16%は20年以上に及んでいた。支える家族の平均年齢は64.1歳と高齢化している。2割近いという調査結果もある。 山形県が2013年に引きこもりの実態を調査したところ、15歳以上の県民のうち、引きこもりは1,607人だった。そのうち40代以上が717人だった。これはほぼ半数が高齢の引きこもりであるということを示している。 就職氷河期世代の高齢化などにより、引きこもりが中高年になっても続く傾向は2010年以前から指摘されていた。この年齢層では支援の方法も限られてしまい、支援団体でも支援対象者に年齢制限を設けている場合がある。引きこもりの子を養っている親が老年期に入ると、経済的・体力的に行き詰まってしまう場合が多い。このためKHJのように、中高年に達した引きこもりの子を持つ親も参加できる支援団体もあるほか、親の退職・死亡後も子が引きこもりから抜け出せないことを前提に、生活資金の確保や物価が安い地域への引っ越しといった「サバイバルプラン」を助言するファイナンシャルプランナーもいる。高齢化がさらに進むことで、介護が必要な80代の親と50代の引きこもりとの親子関係における問題があるとする「8050問題」を掲げるメディアもあり、特に2019年に入ってからはワイドショーなどテレビ番組でもいわゆる40歳以上が該当する中高年の引きこもりや8050問題を積極的に追求・報道するなど社会問題に発展している。 政府の引きこもり支援は内閣府の「子ども・若者育成支援推進法」を法的根拠にし、当初は34歳まで、その後、39歳までに上限を引き上げて、支援対象者を年齢で線引きしてきた。また、内閣府は引きこもりの実態を把握するために、15歳から39歳までの主に若者を対象に調査してきたが、引きこもりが長期化する人が増えていることから、2018年12月、40歳から64歳を対象とする初めての調査を行い、40歳から64歳で引きこもりの人は、推計で61万3000人に上り、15歳から39歳を対象にした調査で推計した54万1000人より多くなっている。その内、準引きこもり(ふだんは家にいるが、自分の趣味に関する用事のときだけ外出する)が約24万8000人、狭義のひきこもり(近所のコンビニなど近場以外に外出しない状態か殆ど家に出ない状態)が約36万5000人であった。また、40〜44歳の層では、就職氷河期による影響の為、殆どの大学・短大・専門学校の新卒者が就職活動する時期に当たる20〜24歳の時期にひきこもりが始まった人が目立っていた。更に引きこもり期間については、中高年引きこもりの約21.2%が3〜5年が最も多かったと同時に、10年以上の者は約36.1%を占めていた。その内、30年以上引きこもっていた者は、10年以上引きこもりをしている中高年の約17.7%であった。2020年には引きこもりの親が続々と亡くなり始めており、政府の対応は遅く形式的な対応に留まるため、今後数年で引きこもりの子の孤独死や親の死体遺棄が急増することが指摘されている。
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