餌と天敵
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 04:12 UTC 版)
ヒヨケムシは俊敏に地表を徘徊する活動的な捕食者であり、他の節足動物(昆虫と他のクモガタ類)を主食とし、小型脊椎動物(ネズミ・トカゲ・ヘビ・鳥類など)を捕える場合もある。種類・雌雄・成長段階によりある程度の好みの違いが見られるが、原則として偏食性をもたず、制圧できる大きさの小動物であれば捕食するジェネラリストである。様々な獲物の中で、防御物質(毒など)をもつもの(アリ・アリバチ・ヤスデなど)が最も一般に拒否され、特にヤスデは捕食されても無毒な部分(頭部と前4胴節)だけ食られ、有毒な部分(胴部のほとんど)が捨てられる。一部の種類はアリを自発的に襲いかかる行動が観察されるが、食べずに殺しているため、アリ食とは別の目的による行動の可能性がある。代謝率は高いため、頻繫に餌を摂る必要があるとされるが、1ヶ月以上の絶食に耐える種類も知られている。水を嫌がるため、普段の獲物から充分な水分を摂取でたと考えられる。また、自然な状況ではないが、飼育下の観察で昆虫の遺骸や人工的に用意された餌(加水分解酵母・牛ひき肉など)を受動的に摂食するとことと、ロードキルされた爬虫類の遺骸を摂食することも観察される。 獲物を探す際には、周りを感知するように徘徊しながら触肢を振りまわして、触覚・視覚・振動に頼って獲物を発見していたと考えられる。触肢先端の吸盤を出して獲物を掴み、強力な鋏角でそれを補殺して咀嚼する。その過程で後体は伸縮し、鋏角はすり合わせるように左右相互にはさみを開閉しながら前後に動く。獲物の体液を鋏角直後の口で吸収しながら、口上板前端のブラシ状の剛毛で不要な物質を濾過したと考えられる。また、成体は自発的に徘徊しながら獲物を探すのに対して幼生は待ち伏せして獲物を捕るという、同一種類が成長段階の違いによって異なった捕食行動をとるものもある。 ヒヨケムシの主要な天敵は脊椎動物であり、同じ生息地の哺乳類・爬虫類・鳥類などの糞からその鋏角の残骸が多く見られ、主食ほど大きな割合(約40%)を占める例もある。他の節足動物捕食者としてクモ・サソリ・別種のヒヨケムシなどが知られるが、ヒヨケムシを主食にした、それとも単に偶発的なのかは判断しにくい。明らかにヒヨケムシを狙って捕食する例は、ナミビアに生息し、地面にトンネル状の巣穴を作るアシダカグモ類の一種が挙げられる。このクモは何らかのメカニズムでヒヨケムシ科の1種 Metasolpuga picta の雄を自らの巣穴に同種の雌が居ると勘違いさせて、巣穴まで誘惑して捕食することが知られている。 飼育下では配偶行動などがもたらす共食いが高頻度に観察されるが、自然環境では交接後の雄が無事に逃げ出すことができ、配偶行動以外でも同種が触れ合うと積極的にお互いを避けるため、実際の共食いの頻度は低かったと考えられる。
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