食文化、伝統文化としての捕鯨
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 18:05 UTC 版)
「捕鯨問題」の記事における「食文化、伝統文化としての捕鯨」の解説
日本捕鯨協会によると、日本においてはクジラはただ単に食料としてではなく骨や皮まで全て廃棄することなく利用されていた。縄文時代には骨が土器の製造台として使われ、飛鳥時代に仏教が伝来して一般的に肉食が禁止されると、当時は魚と見なされていたクジラから貴重な動物性タンパク質が摂取された。江戸時代初期まではクジラは貴重な食材として扱われ、饗応品や献上品に利用された。江戸時代初期以降に組織的捕鯨が始まると供給量が一気に増大し、赤肉や皮類は塩漬けされて日本全国に供給され、江戸時代中期に庶民の一般的な食料となり、時節やハレの日に縁起物として広く食されるようになり、多種多様な鯨料理と鯨食文化が生まれた。一例として、毎年12月13日に塩蔵した鯨の皮の入った鯨汁を食べる「煤払い(すすはらい)」や、70種類の鯨料理を紹介した書物「鯨肉調味方」があげられる。食文化以外では「花おさ」に代表される縁起物としての工芸品でもある鯨細工は、クジラの歯・骨・鯨ひげを材料とし、鯨ひげは人形浄瑠璃の板バネやカラクリ人形のゼンマイにも使われてきた。 ノルウェーやアイスランドなどにも鯨食文化が残っている。また、鯨肉は美味であるだけでなく、高タンパク、低脂肪、低カロリー、でコレステロール含有量も少なく、脂肪酸には血栓を予防するエイコサペンタエン酸(EPA)や頭の働きをよくするドコサヘキサエン酸(DHA)、抗疲労効果のあるバレニン成分が豊富に含まれ、生活習慣病、アトピー等のアレルギー症状を軽減する。 ナンシー・シューメイカーは、かつて鯨肉食を普及させようと試みたが失敗した米国政府は捕鯨規制には鯨肉を食す国の視点を取り入れずに規制しようとしたため、商業か生業か、文明か野蛮かという二分法の枠組みで扱われた。石油開発によって鯨油は産業資源でなくなったため、アメリカはクジラの捕獲を禁止してもアメリカ人は失うものは何もなく、すなわち鯨肉はアメリカの文化的な好みに合致する味にはならなかったため、国際合意に負の影響を与えていると指摘している。 このような食文化その他の文化面における対立には、中国の一部、韓国やベトナムにおける犬食文化がある。
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