鯨細工
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 03:57 UTC 版)
鯨細工(クジラ工芸品)とは、鯨骨のみならずハクジラの歯も加工した工芸品とその技術を指す。 鯨骨刀剣 縄文時代から生活必需品として鯨骨の利用があったが、装飾品と見られる鯨骨製の刀剣が日本各地の遺跡から見つかっている。青森県青森市の三内丸山遺跡(約5,500- 約4,000年前〈紀元前3千年紀前後〉、縄文時代中期)では「クジラの骨刀」、長崎県壱岐市の原ノ辻遺跡(約2,200年前〈紀元前3世紀〉)から「鯨骨製骨剣」、延宝4年(1676年)建立された青森県上北郡七戸町見町の見町観音堂には「鯨骨製青竜刀形骨」などがあり、形状も時代もさまざまである。このような技術が継続的に伝承されたかは定かでないが、江戸時代からの組織捕鯨の産業化に伴い、鯨細工という工芸品が巷に流通し、産業となった。 日本の鯨細工の用途 装飾品、装身具・アクセサリー 印鑑 琴 根付 麻雀牌 世界各地の鯨細工 カナダやアメリカの先住民であり、北極圏に住むイヌイットは古くから捕鯨を生活の糧としてきた。鯨の骨も狩猟具として加工してきた歴史があり、近年においては海獣類や鯨の骨や歯を利用した工芸品を作成していて、その芸術性が高く評価されている。また、数少ない現金収入の手段ともなっているが、原材料の骨や歯は捕獲禁止がなされた種もあり、材料の入手が困難になっているものもある。 フランクス・カスケット ニュージーランドのマオリ族も伝承によれば、約500年前にはすでに座礁した鯨の利用がされており、日本などと同様に食料や油の利用から、鯨の骨を狩猟具として加工してきた歴史があり、現在も残滓としての骨や歯を工芸品として加工し、販売している。ただし、ニュージーランド政府は捕鯨反対の立場から座礁鯨の利用を認めておらず、イヌイット同様に材料の入手が困難になっている。 フランクス・カスケット(Franks Casket)は、「Auzon Runic Casket (オーゾンのルーンの小箱)」「Auzon Casket (オーゾンの小箱)」「Auzon Franks Casket (オーゾンのフランクの小箱)」「フランクの小さな棺」などといった雅称でも呼ばれる、ルーン文字の記されたドイツの北東部で発掘された7世紀の古代の遺物である。不明な部分の多いルーン文字の体系の研究資料であり、鯨の骨でできており、精巧な装飾も施されている。
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