風と気候
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/31 09:00 UTC 版)
風は気候に大きな影響を与えており、風系を基本としたフローンの気候区分という気候区分も存在する。ある地域で特定の期間にもっとも頻度の高い風向の風を卓越風という。 地球上の風系は南北半球ともに3つの区分に分かれ、大気大循環によって低緯度の熱を高緯度へと輸送する役割を持っている。 赤道から緯度30度付近にかけての循環はハドレー循環と呼ばれ、赤道付近の熱帯収束帯で空気が温められて上昇し、高緯度に向けて移動したのち、緯度20度から30度付近の亜熱帯高圧帯で冷却されて下降し赤道付近に向けて移動する。この地上近くでの風は常に東から吹く偏東風となっており、貿易風と呼ばれている。この循環によって、常に上昇気流が発生する赤道地方は一年中大量の降雨がある熱帯雨林気候となり、一方で常に下降気流の発生する亜熱帯高圧帯の地域は年間の降雨がほとんどない砂漠気候となっている。熱帯収束帯・亜熱帯高圧帯はともに太陽の移動に応じて南北に移動するため、上記の2地区の中間の地域に季節によって降雨をもたらし、この地域にサバナ気候およびステップ気候を形成する。 緯度30度から60度にかけての中緯度地方では、今度は亜熱帯高圧帯で下降した空気が北上し、北緯60度付近の亜寒帯低圧帯で上昇して低緯度へと向かう。この循環はフェレル循環と呼ばれ、地上付近で高緯度へ向かう風は常に西から吹くため偏西風と呼ばれる。中緯度地帯の対流圏上層には非常に速い偏西風の気流が存在し、これをジェット気流と呼ぶ。ジェット気流は北緯30度付近を中心に吹く亜熱帯ジェット気流と北緯40度付近に吹く寒帯ジェット気流の2本が存在し、それぞれ前者がハドレー循環とフェレル循環、後者がフェレル循環と極循環の境界に吹くが、特に寒帯ジェット気流は蛇行しやすく、冬の日本上空や北アメリカ大陸東部上空では両者が合流して吹くため、とりわけ強い気流となる。日本上空にはほとんど常に偏西風が吹いているため、気団もこの流れに乗って移動し、日本の天気はほぼ西から東へと変化することとなる。 緯度60度から極点にかけては、極点付近の極高圧帯で冷却され下降した空気が低緯度へ向かい、亜寒帯低圧帯で上昇して極点へと向かう。この循環は極循環と呼ばれ、地上では東からの極偏東風が吹く。南極においては南極大陸の巨大な氷床が存在するため寒気が強く、さらに南極海には北半球と違って巨大な陸地が存在しないため風が和らげられず、南極海北部は絶叫する60度と呼ばれるほどの猛烈な嵐に見舞われることが多い。なお、この寒気は南極海以北にも影響を与え、狂う50度や吠える40度と呼ばれる暴風圏を作り出す。 このほか、決まった季節になると吹く季節風(モンスーン)も気候に大きな影響を与える。大規模な季節風は熱しやすく冷めやすい大陸と、熱しにくく冷めにくい大洋との気圧差によって生じるため、夏は大洋から大陸に、冬は大陸から海洋に向けて吹き込む。世界で最も大規模なモンスーンはアジアモンスーンと呼ばれ、インド洋から日本にかけての広い範囲に影響を及ぼし、特に夏の酷暑と湿潤をもたらす。長期間一定方向に吹く風によって海面に海流が生じることもあり、これを吹送流と呼ぶ。インド洋北部海域においては季節風が非常に強いため、季節によって海流の流れが異なり、夏は南西から北東に、冬は北東から南西に風が吹くのにともなって、海流もその方向に流れる。このため、冬季には東から西に流れる北赤道海流が存在するのに対し、夏季にはその海流が消滅してしまう。そのかわり、夏季には南西から北東に季節風海流が流れる。 また、緯度5度から25度付近の海上においては強力な低気圧が発達することがあり、これを熱帯低気圧と呼ぶ。熱帯低気圧は発生地によって名称が異なっており、北太平洋で発生したものを台風、北大西洋やカリブ海周辺で発生したものをハリケーン、インド洋や南太平洋で発生したものをサイクロンと呼ぶ。熱帯低気圧は自ら動く力を持たず、周囲を吹く風に乗って移動するため、しばしば中緯度地帯にまでやってくることがある。日本周辺においては赤道付近の偏東風と太平洋高気圧の関係により、主に7月から9月にかけて到来し、強風と豪雨によって居住地域に大きな被害をもたらす。
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